殺し屋の過去
「久しぶりだね。随分遅いんでナイフ投げをしていたところだよ。」
確かに壁にある的にはすべて真ん中に三本ほどナイフが突き刺さっている。
「なめんじゃねえぞ……」
輝夜がバカと呼んでいる妖怪が、突然殺気を放つ。それにあわせるかのように輝夜の方からも殺気が放たれる。
「えっと……僕巻き込まれたくないんで失礼します。」
逃げるように忍び影が退室する。
「お前らも出とけ。」
さすがにバカと言うのは抵抗があるので蛙妖怪とする。……蛙妖怪がいい放ち、他の三人もやれやれ、と首を振りながら出ていった。
こうして隠し部屋には二人だけになった。ちなみに外のモニターには隠し部屋の様子は映らない。
「殺し屋をやめろ。そういったはずだよな?」
「バカは相手の心の中まで見通すことはできない。だから私は君をバカと呼ぶんだわかってるのかい?」
そう。蛙妖怪はいままで輝夜に殺し屋をやめるように話してきた。それをすべて拒否し続けた結果、このような喧嘩状態になったのだ。
「君はなぜ私に殺し屋をやめるように言うんだ?もう無駄だってわかっているだろう?」
「いままで幼なじみだったやつが行方不明になって探しあてたら殺し屋になってるんだったらやめるように言うだろ普通。質問で返して悪いが何でお前は殺し屋になった?あのとき何があった?」
それを聞いて輝夜は1つスイッチを入れた。これは隠し部屋の中で話していることを外まで流すスイッチだ。そして話の続きを始める。
「聞かないほうがいいと思うよ、特に君は。聞けば、私のようになるだろうからね。こんな思いをするのは私1人でいい。」
いたって真面目に話す輝夜。いつものふざけた口調ではなく、相手に意思を曲げさせようとしているのが、感じ取れる。
「余計気になるだろ。」
警察たちも騒ぐのをやめている。それはそうだ。いままで日本中を騒がせた殺し屋の殺し屋になった理由が語られるかもしれないからだ。
「……わかったよ。話そう。あのとき私は、人身売買の連中に捕まったんだよ。」
「なっ……」
「まわりには、年寄りも大人も子供もいたよ。みんな必死で逃げ出そうとしていたけど、結局牢屋のそばにおかれていたナイフで脅されて隅っこでみんなして固まって震えていた。そんな中で私は、逃げ出したい。逃げ出したい。ずっとそう思っていた。その時目についたのが、牢屋のそばにおかれていたナイフ。幸いそれは大人なら手に取れる場所にあった。それを大人にとってもらったんだよ。その時は君に教えてもらった錠前の開け方が役に立ったね。ナイフを使ってそこから脱け出したんだ。まあ当然監視はいたし、弱りきっていたみんなは当然戦えなかった。だから……みんなを逃がして私が殺ったんだよ。それで危ないって時に私を助けてくれたのが師匠だった。全員殺ったあと、そこを出た。床には全面血が飛び散っていてね。それを見て、まだ子供だった私の記憶にしっかりと焼き付いた。それに気を使って師匠は私を弟子として、家族として引き取ってくれた。だから私は師匠のあとを継いで殺し屋になったんだ。これで何か文句あるかい?ないなら出てけ。」
さっさと話をまとめると、ナイフを放り投げて片手でキャッチし始めた。それを数回やったところで……ギラリと蛙妖怪を睨んだ。
「だから悪いやつらばかり殺してやっただろう?いいやつを殺す仕事はすべて断ったよ。それにさっき言っただろう?出てけと。」
そう言った輝夜はナイフを飛ばして蛙妖怪を壁に縫い付けた。ナイフは服だけを貫通して壁に突き刺さっている。蛙妖怪を壁から引き離してドアを開けると、外に放り投げ、バタンとドアを閉めた。
「いってぇな……」
「大丈夫か?」
蛇妖怪の手を借りて起き上がると潔く出口に向かった四人を見届けて忍び影とスナイパーは隠し部屋に入った。
「お疲れ。おにぎり作っといたから食べなよ。」
「もー。輝夜さんちょっと勝手過ぎますよー。」
「こいつが勝手なのはいつものことだろう。」
わいわい会話をしながらいままであったことを忘れたかのようにおにぎりをみんなで食べ始めた。
今日は時間があるので死神の方にも投稿しときますね。




