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職人ギルド

 職人ギルド(または手工業ギルド)は、商人ギルドの持つ特権に不満を持った職人たちが作りました。これの出現により、商人ギルドは衰退していくこととなります。今回はこの職人ギルドについて考えていきたいと思います。


 前回通り、なろう的な職人ギルドと実際の職人ギルドを比較してみましょう。


「なろう的職人ギルド」


 ・職人は、作った製品をギルドに買い取ってもらい、ギルドがそれを直接売ったり、商人ギルドに売ったりする。


 ・材料についても、ギルドが仕入れて所属している職人に売る。職人は材料選びに時間をかけることが少なくなる。


 ・私も職人になりたいけどどうすればいいか分かりません。そんな方には、ギルドが技能を教えてくれたり、親方となってくれる人を紹介してくれる。大体は後者でしょうが。


 ・冒険者が特注でなんか作って欲しいと依頼されたときにも、該当する職人を紹介してくれる。



「実際の職人ギルド」


 ・ギルドに所属出来るのは、親方のみ。普通の職人や弟子は、親方の指示で働く。


 ・商人ギルドのように王から特権をもらい、独占していたのでギルドに所属するものは共存していた。


 ・作る製品は、ギルド内で決められた種類・規格・品質の物だけ。同じものをいろんな親方がたくさん生産する。値段もほとんど同じ。


 ・教会と深いかかわりがある。


 


 なろう的なほうは、作品ごとに違うので明言出来ませんが、これらが基本的だと考えています。違和感を感じた方はすいません。


 さて、二つ比べると大きく違うところがあるのがわかるでしょう。それはやはり師弟関係。中世には厳しい身分制度があり、弟子は親方のもとで技能を盗むため日夜努力します。親方から一人前と認められると店を持つことが認められ、弟子を取ることも出来たらしいです。簡単に一人前と認めたら、世の中親方だらけになってしまって商売あがったりなので、そう簡単に一人前にはなれなかったようですが。どうも異世界に飛ばされてから職人になるのはかなり難しそうです。

 これも実際には中世ヨーロッパのことなので、設定次第ではどうにでもなるでしょう。


 誰かに習うことなく技能を身につけるのは、とても人間一人の人生ではどうやっても時間が足らないので、結局は弟子入りするか、チート能力に助けてもらうかの二択でしょう。

 

 さて、このギルドのシステムの中でもう一つ目立つのは、「商品の種類・規格・品質・価格を厳重に管理している」というところでしょう。つまり、武器屋などには大量生産された物ばかりが売っていることになります。RPGのように決まったものだけで一品モノは売らないのです。


 これは、所属している親方が皆平等に利益を得るための重要なシステムです。どこかの品だけ優秀だったり安かったりしたら、みんなそっちを買ってしまうので、他の親方が迷惑を被るわけです。これは職人がギルドを作るなら絶対に避けられないことで、何らかの理由でこれを撤廃するのは難しいでしょう。というか無理でしょう。

 

 ちゃっかり、市場の安定にもつながっていることだし、これはこれで良しとしたいところですが、転生主人公が店で売られている量産品を使うのではイマイチ盛り上がりに欠けます。強力なモンスターの素材から作ったり、岩に刺さっているKATANAを引き抜いたりとかしたいです。



 小説でこれはかなり苦しい展開。とりあえず、店で一品モノの装備を買えないかどうか考えてみましょう。


「一品モノを手に入れるには」


 職人と言うくらいなので、直接オーダーメイドで作ってもらうのがいいでしょう。職人ギルドの構造上、優秀な戦士などの依頼を受けて、装備を作ることはありえそうです。


 しかし、特別技能の高い職人に依頼が集まると、他の職人はおもしろくない。だから、何らかのルールを設けておくべきです。依頼人が直接職人に仕事を頼むのは、前述のとおり駄目でしょうが、ギルドを通せばいいのではないでしょうか。


 1、依頼人はまず職人ギルドで、仕事を依頼する。

     ↓

 2、ギルドは、その依頼を十分に達成できると判断した職人に仕事を回す。その際、紹介料として割高な値段を要求するだろう。

     ↓

 3、依頼されたものを制作する。


 よしよし。これで不平等は少し軽減された。ギルドの中でも、技術の差で地位が多少変わるのは仕方がないですが。この方法でも、あまりたくさん依頼を受けたら、さすがに反発があるだろうから、ギルドが認めた身分や実力の者にしか依頼は出来ないようなシステムになると思います。


 これなら転生したあとも。


 強いモンスターを倒して有名になる。

    ↓

 ギルドに認めてもらえる。


 

 これで主人公が使うようなオリジナル装備を作るときには、既に有名になっている可能性が高い。おかげで、量産品しか使うことが出来ないという事態は回避できた。よかったよかった。



「商人ギルドと職人ギルド」


 なんとかオリジナル装備を手に入れられるようになったところで、もう一つ疑問があります。中世ヨーロッパに商人ギルドがありますが、それが滅ぼされる形で職人ギルドが発達したということです。商人ギルドと職人ギルドは同時に存在するという設定の小説もよくありますが、それは可能なのでしょうか。考えてみます。



 商人ギルドが市場を独占したり、政治に参加することに反発する形で職人ギルドは生まれました。だから職人ギルドも、親方が集まることで実質的にその産業を独占する形になります。

 だから職人ギルドも、寄り合いであると同時に商人のような仕事もしています。



 ……こんな二つのギルドが両立できるのでしょうか。商人ギルドは、利益を上げるために職人を利用したい。職人ギルドは、商売を邪魔する商人ギルドを潰したい。実際に潰されていますし。


 これでは無理です。なんとか両立させていくにはどうすればいいだでしょう。協力し合って仕事を効率よく進めてみましょうか……。いや、それでは同業組合(ギルド)ではなくなってしまう。それ以前にこのやりかたでは、商人ギルドの仕入れた材料を職人ギルドが加工。それをまた商人ギルドが売るという形になるでしょう。これでは、職人ギルドが下請け業者みたいです。これでは何も変わりません。



 商人ギルドと職人ギルドがまともにやりあったら、職人ギルドが勝つことは歴史から見ても明らか。


 ……? では商人ギルドがなくなったら、商人は一体どうするのか。一応商売はしないと生きていけなません。だが、職人ギルドが独占しているので手工業による製品での利益は望めない。食品なども、それを扱う専門のギルドがあるはずです。原材料ならなんとかならないこともなさそうですが、あまり利益は望めそうにありません。


 中世で他に儲けられそうな商売は何があるだろう。製品を仕入れるのでは利益は望めない。職人ギルドから買った物を売るには、職人ギルドが売っている値段より高くしなければならない。そんなもの買うくらいなら職人ギルドのものを買うでしょう。


 

 ……そうだ、あれだ。貿易だ。街の中での商売が駄目なら貿易をすればいいのだ。現に、中世ヨーロッパの商人は貿易で利益をあげている。海を渡って香辛料などを持ってくれば利益はとんでもないことになる。これなら職人ギルドと直接対決する心配はない。これはいいぞ!


 ファンタジー世界なら、モンスターの分布も変わるだろう。遠方のモンスターの素材を持ってきて職人ギルドに売りつけることも出来る。うーん、もっとオリジナティあふれる考察になると思っていたが、実際のやり方とほとんど変わらないではないか。やはり歴史は偉大である。



「職人ギルドまとめ」


『メリット』


 ・商人ギルドと同じく、流通の安定に貢献している。


 ・転生勇者様も、努力次第でオリジナル装備を入手できる。


 ・出回る商品の質が一定に保たれる。


『デメリット』


 ・これまた商人ギルドと同じく、商品の値段が高騰する。


 ・商人ギルドは、貿易などを専門に行う可能性が高い。


 ・ある程度の知名度や権利を持つ人々でなければオーダーメイドを依頼することは出来ないと思われる。


 ・職人になるにはかなりの歳月を費やさなければならない。



 

 ギルドと言うと、職人ギルドを指すことも多いです。商人ギルドが力を持つ時代か、職人ギルドが力を持つ時代かで異世界ライフも変わりそうです。 


 いよいよ次回はみんな大好き冒険者ギルド。こちらは、実際に行われた形跡がないので結構想像がメインになりそうです。違和感を感じた方も、他愛もない一意見として楽しんでいただけたら幸いです。

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