一喜一憂
「そういえば私、1度も言われたことない」
隣で雑誌に目を落としていた彼女が、不意にそう呟いた。
「え、何が?」
僕は読んでいた雑誌から彼女に視線を移し、訊いた。けれど返事はない。
彼女の膝の上に置かれている雑誌を見ると、特集の文字。
「……これ。彼が改めて好きだって言ってくれた時が、物を貰った以上に嬉しかったって」
「へー」
「へーって。私、1度も言って貰ったことないよ? いつも言うのは私だけ。告白だって私からだった」
雑誌を閉じ、僕の方に向き直る。
「……時々、不安になる。本当に私のこと好きなのかなって」
確かに彼女の言う通り、僕はそれを口にしたことがない。でもそれは気持ちがない訳じゃなく、ただ恥ずかしいだけなんだ。
「そんなことないよ」
「ウソ」
そう言うと、僕に背中を向けてしまう。
僕がそんな君の姿に弱いって、知ってるの?
仕方ない。
拗ねて背中を向けている君に、とっておきの魔法をかけよう。
「ごめん、愛してる」
ほら、君が顔を紅くしながら僕の方へ振り向いた。
『言葉にしなくても、いつも想っているから』