02 死闘、っちゃシトウ
“シヴァ、そこのフタ貸せ、フタ!”
リーダーも声が上ずっている。シヴァ、急いでナベブタを彼に手渡した。
“何か長いナイフとか、何でもいいから貸せ” ちょうど手元にあったお玉も渡す。
中世の騎士もかくや、といった雄々しき姿で、リーダーは左手にフタを盾のごとく構え、右手に高々とお玉を
「何だよこれ」何を持たされたか気づいたリーダーが叫んだ。
「バカっ、こんなのでどうするんだよ!」
迫るロブスター、追いつめられるリーダー、危機一髪。
リーダーは、がっ、とフタで上からヤツを押さえにかかった。そしてお玉を投げ出し、素手でそいつの首根っこをしっかと押さえつける。
「やったぞ」でかいアメリカザリガニ、といった感じ。しかしモンスターは暴れまくっている。「早く、ナベ、ナベ出せ、pan だよそれかpot!!」
「はい」持ってきた鍋を見てリーダーは大激怒。「どこに入れるんだこれの!」
さし渡し15センチにも満たない片手鍋だった。その間にも、ヤツはハサミを振り回して怒り狂っている。
「これが一番大きいナベなのです」シヴァ、急に丁寧な日本語になった。
リーダーは急に気づいて風呂場にダッシュ。そいつをフロオケに放り込んだ。
ぜいぜいと荒い息をついて、彼らは風呂桶のふちから捕虜を覗き込んだ。ロブスターは、投げられたショックか動こうとせず、ハサミを前に投げ出している。
「シヴァ」
任務でもこんなに真剣な声を出したことがない、リーダーは硬い声で彼に命じた。
“ヤカンに湯を沸かして、持ってこい”
「!」シヴァもシリアスに反応している。
“もしかして……”
“止むを得ない”
「非道い!」漫画ならば集中線と額に縦線だろう。シヴァが叫ぶ。
“リーダー、それはひどすぎる!” 動物愛護精神かと思ったら
“バスタブが傷むじゃないか”
「知るかそんなコト」はいはい、早く湯を沸かしてこい、とシヴァをキッチンのコーナーに追いやった。
ようやく、一匹目をどうにか斃した。




