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ええ?! またぁ?

 エロにゃんはいつしかまっすぐに輝夫の目を見つめていた。そして、輝夫も彼女の目を見つめる……。


「ああ、あなた」


「淑子」

 

 輝夫はこの世の者ではない。下半身が薄くぼやけているようにも見える。


……お願い。神さま、仏さま、閻魔さま。彼を消さないで……


 すると、どうしたことだろう。彼の下半身はだんだんと輪郭を取り戻してきた。


……ええ? ……


 輝夫の下半身にはっきりと『東京スカイツリー』が浮かび上がってきた。


……そこだけかよ……


 エロにゃんは輝夫のほうに一歩二歩と歩を進める。彼もずずずずと彼女のほうに近づき二人の距離はお互いに手が届くほどとなった。


 その時である。輝夫の背後に見覚えのある顔が重なるように見えてきた。


「ケメ子さん……愛してる。私のケメ子……」


……まっ、まずい。柴田先生だ。あなたさっきエイリアンに消されなかったっけ! ……


 輝夫は振り返った。そこには彼の見たことのない男の姿があった。よく見ると男の下半身も薄ぼやけているが、何故かそこにはエンパイヤステートビルがそびえたっていた。しかもその先端にはキングコングのような奴がいて、何かフィギュアのような女性を握っている。


「おい! ケメ子とは何だ。おまえ、人の女房に向かって愛するとか、私のケメ子とか、ふざけたことを抜かすな!」


……まっ、またあ?! もうやめて! 輝夫まで。こんなにヤキモチ焼きだったかぁ? しかも今度は両方とも人間じゃないし……


 エロにゃんは急に身の危険を感じ、男の目線からお互いに火花が飛び交っている間に、二人に背を向け脱兎の如く逃げ出した。

 病院の入口を出た時、いきなり背後で大きな爆発音がしたかと思うと、激しい地鳴りと振動が伝わってきた。


 びびびび、ぐわぁっしゅ、ちゅちゅちゅちゅ、ちゅどーーん!


 振り返ると、病院の屋根の真ん中あたりからつむじ風が舞って、火柱が空高くごうごうと上がっている。

 熱風が肌に当って、お化粧が台無し。髪もパサパサ。


……ちょっとう。やめてほしいなあ……


 どこかで聞いたことのあるフレーズであるが、この際そんなことはどうでも良い。エロにゃんは入口近くに停めてあった自転車にまたがり、再び河童平駅に向かってペダルを漕ぎだしだ。


……私って、もう少し普通の人間に縁がないかなあ……


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