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東京スカイツリーなその男

 その男は終始無表情であったが、股間はまさに東京スカイツリー状態であった。


「僕は君に決めた。明日から僕は君の家に住む」


「ちょっとう。それって変じゃない? 普通は『明日から僕の家に来なさい』でしょ?」


「金ならいくらでもある。無いのは住む所だけだ」


「ぶーーっ! それって全然説得力無いんですけど」


「いや。君に見せたいものがあるんだ」


 男は店の入り口で預けた、まるで岩を入れたように重たいボストンバックを持って来させて、ファスナーを空けた。中には一万円札の束がざくざくと無造作に突っ込まれていた。エロにゃんには札束を数えた経験は全く無かったが、ざっと見ても数十束、いや、百束以上は有りそうだ。


……一束百万円で、百束以上。いっ、一億円?! ……


「ちょっと見せてよ」


 薄暗い店内で懐中電灯を使って見る限り、きちんと光を反射するものや透かしが入っていて本物のように見える。札束の二枚目以降もちゃんとしたお札のようだ。


「ヨコハマというところに船があり、十個のコンテナにはこれがぴったりと詰まっている。あと一個のコンテナには君たちの好きなダイヤモンドがびっしりと詰まっているんだ」


 どうも言い回しがおかしい。『ヨコハマというところ』という言い方。どう見ても日本人男性にしか見えないし、日本語が流暢だが、横浜を知らない日本人はまずいない。


「あんた何者? 何してる人?」


「何もしていないよ。金持ちなだけだ」


 エロにゃんは考えた。変な男ではあるが、怖い人ではなさそうだ。しかも言葉には優しさが感じられ頼り甲斐も有りそうな感じだ。


……インチキ男かも分からないけど、革靴の中敷きをめくって臭い一万円札を大事そうに出してくる男に付いて行くよりは夢が持てそう……


「分かったわ。あなた私のところへその鞄持って来なさい。明日じゃなくていいわよ。今からでも」


「そうだね。君はアンザン型のようなので、まずは君の家で生殖活動を連続して行うことにしよう」


「……安産型? ですか? 私が。生殖活動って……。ああそう言うことね」


……やっぱり、単なるど助平かい! ……


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