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イタズラの記憶

作者: 沢木 翔

簡単な身辺整理をしていると中高時代の日記が出てきた。


この頃の日記は記載も飛び飛びで、備忘録的な素っ気ない内容のものばかりなので、読み返してみてもあまり面白くない。


ところが、1970年の7月後半にはちょっと面白い出来事が書かれていた。


当時私は中3。中高一貫の男子校に通っていたので高校受験がなく、この年の夏休みはのんびり過ごしていた。

夏休みに入ったばかりのある日、家のポストに切手の貼ってない私宛の封書が入っていた。

それには差出人の名前も書いてなかった。


開封すると、明らかに女性の字によるラブレターだった。

手紙には私の小学校の同級生の女子に家の場所を聞いてポストに直接投函したと書いてあった。

そして、会いたいから3日後にちょっと離れた公園の噴水の近くで待っている。更には当時開催されていた大阪万博に一緒に行きたい。とまで書いてあった。


ラブレターをもらったのは初めてだったし、すごく積極的だなとは思ったが、もちろん悪い気はしない。

どんな子なのかなと期待が膨らむ。


当日はやや緊張して、待ち合わせ時間ピッタリに噴水の前に到着した。

しかし、一向に誰も姿を現さない。

キョロキョロしながら30分待ってから諦めて帰ろうとしたら、中学の同級生3人が出てきて笑い転げている。

そう、イタズラにひっかかったのだ。

贋のラブレターは首謀者のお姉さんに書いてもらったとのこと。



この首謀者の同級生には後日仕返しをしてやった。


その半年後くらいに、彼の持つ学生カバン(昭和のレトロな革製の黒い手提げカバン)に皆で細工をした。

奴は下校時に乗るバスや・電車では座りたがるという性質があった。

座るとカバンを膝の上に置く。

カバンの底は持ち主には盲点になるが、立っている他の乗客には丸見えになる。

その底に「僕のお気に入り」と赤マジックで落書きしてあるヌード写真を下校直前のタイミングで貼ってやったうえで、一緒にバスに乗ったのである。


彼が利用する通学バスには途中から女子校の学生が大勢乗って来るので、なかなかの騒ぎになってリベンジは大成功した。




社会人になって30代前半のときには、私は広報部に所属していた。

仕事柄、マスコミ関連をはじめとして、不特定多数の人からの電話が入る。


ある日、私は外回りを終えて夕方になったので、このまま帰宅するつもりで会社に電話をした。

当時は携帯が無かったので、「電話ボックス」に入ってダイアルを回していた時、ふとイタズラ心が湧いて来た。


電話をとってくれた女性部員に声色を使ってまず「こちら、警視庁捜査一課の者ですが、○○さん(後輩の男子部員)いらっしゃいますか?」と畳みかける。


電話に出た後輩には「先週の日曜日に貴方はどちらにいらっしゃいましたか?」と早口で質問する。

彼は全く気が付かずに「その日は友達と川でバーベキューをしていました。」等とマヌケな事を大マジメに答えた。


「警視庁捜査一課って殺人などの凶悪犯担当だろ。いい加減、気付け!」と思いながら、「それでは、これから警視庁まで任意で出頭していただけますか?」と訊くと

「ハイわかりました。」と素直に応じる始末。


「コイツ、なにか身に覚えでもあるのか?」と思いながらも

「オレだよオレ!」と種明かしをしたら、一瞬絶句してから、電話をとった女子社員に「警視庁じゃなくてXXさんじゃないか!」と八つ当たりする声がした後、部員の爆笑する声が聞こえてきた。


その後は部内では「フライデーですが」とか「大日本皇国連合会(架空の団体)だぁ!」とか多少手口を換えたイタズラがしばらく横行した。


こういうイタズラは今の世の中では、多分問題になりそうなことばかり。

昭和の時代だから許されたイタズラ話です。

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