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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

命は平等に軽い

作者: 青緑 灰

現実はクソだ。


何のためにいい子にしていたのか。何のために大人の言うことに従っていたのか。


助けてくれるからと勘違いしていた。いつも味方でいてくれると思い違いをしていた。

神は人の味方と、仏は見守ってくれていると信じていた。

勝手に信じて、裏切られた。


本当に誰も助けてくれない時がある。誰に縋ろうと助からない。救われない。


遠くにあると思い込んでいた、死が目の前に。





悲鳴が聞こえる。


子供だけでも助けてくれと懇願する親の声。


目の前の悲惨な現実を受け入れられず、膝をつきその場から動けないカップルの片割れ。


死の恐怖に怯え、ただただ泣き叫び、あったはずの手足を必死にに動かし逃げようとするスーツ姿の男性。


死がこちらへ、じわじわと、ゆっくり近づいてくる感覚に吐き気を覚えて、呼吸が浅くなる。


恐怖に喉を締め付けられ上手く呼吸ができない。手足の感覚が薄くなり、すぐにこの場から逃げなければいけないという本能の悲鳴が聞こえる。


今この瞬間は、言葉も法律も、道徳や倫理も意味がない。

暴力がこの場を支配する。


今まで学校で学んできたモノや、テレビや大人たちの言葉、人間社会を何の意味もないと嘲笑うかのようなそれは、この世界の本来のルールだと言わんばかりに全てを薙ぎ払う。


圧倒的で巨大すぎる暴力は、大人も子供も等しく蹂躙される。


やっと気付いた自分の本音。生きづらさの正体。人はどこまでいっても弱い。




俺は、この世界が、キライだ。



それと同時に、心がすごく軽くなる。

その気付きは、果たして彼にとっていいモノになるかは、まだ分からない。


だがこの場で生き残るには必要なモノだった。


自分の見てきた物、聞いてきた物、蓄積してきた知識やこの世界の見え方がガラッと変わり、今自分がいる場所の足場がなくなりどこまでも落ちていきそうな感覚に強いストレスを覚える。


恐怖と虚無感で手足が震え、静かでドス黒い、怒りが込み上げてくる。とても自分の中で消化できそうもない、狂気じみたモノに変わっていってしまう。



全部壊してやる。


この世界で生きるには強さが必要。


今この瞬間は優しさが自分の首を絞めることになる。


たとえこの考えが間違いだったとしても、迷っていたら死んでしまう。


優しい人になりたかった。いい人になりたかった。でも、もういい。


わがままに、傲慢に、強欲に。


死にたくないから。



「ふひっ」





こんな世界に、いたくない。

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