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第五話「成長」

・・・しかし、仕事はどうしたものか。

皇之助が盗賊であることは、仲の良い(主従関係という説もあるが)乃亜でも知らないことだ。

子育てと盗みを両立する盗賊など聞いたことがない。


「でも・・・」


蓄えは十分にある。

盗みをしなくても、当分は食っていけるだろう。


無論、皇之助は子育ての経験など無い。

家庭を持つことすらも興味の無かった男だ。


だがこれも乗り掛かった船。やってやるさ!と気合を入れたのは良いものの。

育児の知識など皆無だった皇之介にとっては、到底生ぬるい物では無かった。


盗賊の仕事の難しさとは、全く別物。

「世の中のおふくろさんたちは、本当にスゲェんだなァ・・・」

洗った布おむつを干しながら、呟いた。


_______________


近所の子持ち主婦に子育ての極意を教えてもらい(叱咤も多くあったが)悪戦苦闘の日々。

失敗だらけな毎日を送ったが、知恵を学び技を知り、なんとか育児に慣れていった。


どんなに疲れてもどんなに寝不足でも、何より子供の笑顔は最高の癒しであることを知り・・・


少しずつではあるが皇之助には「父親」という自覚が芽生えていった。


_______________


日々が慌ただしく過ぎていく中、毎日のように乃亜は春子の様子を見に来てくれた。


「邪魔するよ~!春子ちゃーん!」


春子は乃亜の声に目を輝かせ、手にしていたお人形を置き、引き戸を見て返事をした。

「あい!のあちゃ!あーい!」


ここ数日で、春子は簡単な言葉が喋れるようになった。


乃亜は春子の顔をじーっと見た後、笑顔で頭を撫でて言った。

「春子ちゃん、ウチの名前覚えてくれたの?うれしいな~。」

春子の頬をぷにぷにとつつく。


「やーん、ほっぺやわらか~~い!かわいい~~!って、え・・・?」


乃亜は急に絶句した。


「どうした?」

食器洗いをしていた皇之介が様子を見ると・・・


「・・・もうつかまり立ちできるんだね」

乃亜は、困惑ゆえか真顔で言った。


寝返りやはいはいしか出来なかった春子が、

台にしがみついて立っている。

それはもう、たいそう驚いた皇之助と乃亜であった。


_______________


うぐいすが鳴き、梅の木が大きなつぼみをつけ 春子を拾ってきてからもうすぐ三ヶ月。

あの時は真冬であったのに、もう外は春の訪れを告げていた。


三ヶ月前は赤子だった春子は、今や見た目はだいたい五歳。

日本人形のような、艶やかな黒髪の可愛らしい女子だ。


だが

子供というものはこんなに成長が早いものだろうか?

さすがの鈍感な皇之介でも、不思議に思った。

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