第二十八話「醜悪」
「おふくろさんの亡骸を台車に投げ入れるように乗せ、村民は森の奥まで運んだ。
だけど、暗い森の奥で峰子とおふくろさんを置き去りにして帰ってったな・・・」
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皇之介は台車を押す村民と峰子の後を、こっそりと追った。
頭巾を深く被り口元を福面で隠した、人相書の盗賊の姿で。
村民の亡骸の扱いはひどく雑で、「こんな汚ぇ女乗せたモンは、もう使えねぇや」そう言って台車ごと横倒しにし、振り返ることなく彼らは下山した。
台車から転がり落ちる峰子の母。
その有様全てを、皇之介は木の陰から見ていた。
こんな夜更けに女が森の奥に一人、心配しないわけがない。
峰子は一人、穴を掘り始めた。
皇之介は(なんというひどい輩どもだ・・・)憤りそして悲しみながら、一生懸命穴を掘る彼女の姿を見守る。
小柄な母親を埋葬する穴は小一時間で出来上がり、峰子はゆっくりその穴に母を埋めた。
無論、棺桶などもない。
彼女は小さな花を添え、線香をあげ両手を合わせ冥福を祈った。
(無事終わったか)
皇之介が胸をなでおろしたその時
彼女は振り返り、皇之介に話しかけた。
「皇之介さん・・・?さっきからそこで、何を?」
峰子からすれば、皇之介が最初から尾行していたことも、影から見守っていたことも全部お見通しだった。
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「本当に、すげぇよ。峰子、いや、ハルカ。
お前は出来損ないなんかじゃない。
人相書の姿の俺を見ても、誰も変装した天道皇之介だって気づかなかったんだぜ?
しかも俺は隠れて気配を消していたのに、お前には簡単に何もかも見破られた」
数秒の沈黙の後
「ずっとずっと、俺らの頭の中に訴えてた声は、邪神に支配された嘆きではなく・・・
お前自身の悲しみなんだろ?
お前は、誰にも劣らない。立派な人間だ。もう人殺しなんて・・・」
やめろ、と言おうとした時
真顔だったハルカは、急に不機嫌な顔をして答えた。
「・・・なんのことー?峰子は、もう死んだの。いないの。
私はハルカ。
ずっとずっと前から、私はハルカだよ」
そして、あっ、と何かに気づき
「仲間のみんな、きっとあそこにいるよね!」
また楽しそうに話し始めた。
皇之介の話は、全く耳に入っていなかったのか
それとも、もう捨てた過去なのか・・・。
「みんなに強くなったこと知ってもらって、今度こそ仲良くしてもらおうっと!きっと受け入れてくれるよね、だって、仲間だもんね?」
ハルカは黒い霧となって消えた。
「消えた・・・!?どこへ!?」
「仲間、と言っていたな。きっと礼拝堂だ。そこに他の巫女たちが避難している。礼拝堂の位置は・・・俺が先導する」
三人は礼拝堂に向かい走った。
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「ここが礼拝堂だ。扉を開けるぞ」
皇之介とノアは武器を構え、リックハートが扉を開いた。
礼拝堂は、驚くほど綺麗なままだった。
血の一滴も落ちていない。
両側には何列も長椅子が並び、教壇に続く中央に出来た道には、青く細長い絨毯が敷かれていた。
窓の差し込む光、ステンドグラスが床に描く模様が美しかった。
室内の中心に、ハルカが扉側を背に立っている。
皇之介たち三人が入ってきたことに気づき、ハルカはゆっくりと振り返った。
その顔面は返り血にまみれ、ベトついている。
奥には神話に出てくる最高神の像があり、その前で巫女たちは怯え、身をよせあって震えていた。
巫女というからには、神社にいる赤い袴の巫女を想像したが、彼女らはどちらかというと修道女に近い。
彼女らのすすり泣く声が静かに響く。
だいぶ胸糞な話になってきてますね。
気分を害したら本当に申し訳ないです。




