第二十七話「殺戮」
そこへノアが走ってきた。軽く乱れる息を吐きながら、言う。
「ハルカ・・・まさかこんな・・・うそでしょ?」
数人の兵に守られソニアがその場に現れた。
「なんてこと・・・」
皇之介は慌てて言った。
「女王さん!ここは危ない!避難を・・・」
女王は凛として言う。
「皇之介さん。私は、エルフの血が流れています」
髪をかきあげその長細い耳を見せる。
「いや、今はそんな話してる場合じゃ・・・」
「エルフって、不思議な力を持ってるの。
だから、あなたと初めて会った時から全て『見える、読める、感じる』ことができたわ。
あとはわかるわね?ハルカを救えるのはあなたしかいない」
皇之介は全てを見透かされていたことに少々驚いたが、「やっぱりな」と呟いた。
女王の今までの言動は、何かを把握していると考えるとしっくりくるものがあったのだ。
「これはあなたの物でしょう。お持ちなさい」
ソニアは皇之介の愛刀を差し出し、皇之介はガッシリと握り受け取った。
「助かるぜ。ありがとう女王さん」
「ハルカのことを、どうかよろしくお願いします。
リックハート、ノア。あなたたちは、皇之介さんの援護を!」
ノアはハッキリと。リックハートは静かに返事をした。
「わかったよ!」
「・・・了解」
そこにいた大勢の兵たちは、全滅していた。
花壇に頭を突っ込み腹から血を流す者。
首がなく倒れている者、壁に上半身をもたれ喉から血を流す者。
絶命していることは一瞬ですぐ把握できた。
ハルカは「次はどこ行こうかな~~」と言いながら、まるで子供のように死体を避けてぴょんぴょん跳ねて遊んでいた。
そんなハルカを見つめ、意を決し
「なぁ・・・ハルカ」
皇之介は、静かに声をかけた。
「落ち着いて、俺の話を聞いてくれないか」
リックハートとノアはぎょっとした。
「ちょっと・・・」
「お前・・・何話す気だ・・・」
念の為、二人は武器を構える。
ハルカがきょとんとして、皇之介たちの方を見る。
皇之介は、ハルカの目を見てハッキリと言った。
「お前、元の名は峰子だろ。神風峰子だよな?俺を覚えているか?天道皇之介だ」
ノアは怪訝な顔で皇之介を見た。
「・・・?みねこ?」
皇之介が気にかけてきた『神風峰子』という女性。
人間の姿を取り戻したハルカを見て疑惑は確信へ変わった。
ハルカの正体は、大和村に過去住んでいた神風峰子だった。
ハルカの目つきが変わる。
皇之介は軽く息を吐くと、続けて言った。
「お前が村を出てから5年ほどか?俺はお前を忘れてないぞ」
ハルカは真顔で話を聞いている。
「ずっといじめられてて・・・助けてやれなくて、ごめん。ずっと、つらかったんだよな?お前の家、村八分にあって孤立してた。母親が・・・うん。誰も、お前を助けようとしなかった」
峰子の母は、ブラッディマリーを崇拝する部落の出身だった。
峰子の父と出会い、愛し合い夫婦となり、村で暮らし峰子が生まれた。
しかし村民は獅子神を崇拝し、殺戮神ブラッディマリーと獅子神は敵同士だったという神話に振り回され、神風家は村から孤立し、程なくして父親も失踪した。
リックハートが呟く。
「ハルカの、過去・・・?」
皇之介は続けた。
「村を出る時、俺にだけ挨拶に来てくれたっけ。
ラヴァゴートで修行して巫女になりたいって言ってた。
親父さんが行方不明になって、おふくろさんが流行り病で亡くなって。
埋葬するときも誰も手伝おうとしなかったな・・・。
峰子が人の目を忍んで、森の奥、穴を掘って埋葬してた。夜中にたった一人でさ」
皆が沈黙する中、皇之介は語り続ける。




