第二十五話「絶望」
大きな水槽・・・『メインカプセル』
それは主に生命維持装置の役割を持つ。
生物の力を最小限に抑え、細胞の劣化を遅らせる成分の液体が入っている。
その横にある小さい水槽・・・『サブカプセル』
素材を微粒子に分解し、生命維持装置に送り込む役割を持つ。
微粒化に必要な物質を含めた液体が入っている。
サブカプセルの蓋が開く。
眠る春子を液体の中に入れ、ウィィン・・・と小さい音をたて、閉まった。
「・・・始めるか・・・」
リックハートは、数人の研究者たちに指示を始めた。
________________________
皇之助は夢を見ていた。
うっすらぼやけているが、目の前に痩せこけた女性がいる。
自信が無さそうで、いつも目を合わせず下を向いて
(・・・懐かしいな・・・)
ぼーっとその夢に身をゆだねていたが
(・・・峰子)
「!!!」
皇之介は飛び起きた。
急いで周りを見回す。
そこはひんやりとした空気とジメジメと臭気が漂う地下牢。
愛刀は奪われたようだ。
「こんな牢屋に俺が黙って入っていると思うな!!」
皇之介は鉄格子に近づき、ふぅ、と一度息をついてから、
「せええええい!!!」
鉄格子を一発殴った。
鉄格子は大きな衝撃とともにいとも簡単に崩れる。
この城の地下牢がもろかったわけではない。
皇之介はこの程度朝飯前の怪力の持ち主なのだ。
地下牢を脱出し研究室へ走る。
周りから悲鳴や怒号が聞こえ、何人もの兵を殴り倒し・・・。
「また眠らされてたまるか!今ならアイツは研究室から離れられないはず!!」
__________________________
春子は目を覚まし、身動きがとれないことを察した。
何かの液体の中に沈められているが、不思議と息は出来る。
目の前はガラスの壁。
白衣を纏った研究員が数人、バインダーを見ながら機械を操作している。
声は聞こえない。
(父ちゃん・・・)
中心にいるのは、あの赤い恰好をした術士。
(あのひとが、むらにこなければ・・・)
一筋涙がこぼれ、続いてぽろぽろと、大粒の涙を流し続けた。
その時。
ドアが勢いよく吹き飛び、父親が部屋の中に飛び込んできた。
(父ちゃん!!!)
声は出なかった。ごぼごぼっと、口から大きな泡が出る。
目の前にあるガラスの壁に両手を当て、父に気づいてもらおうと必死にあがいた。
「春子を返してもらうぞ!!!」
邪魔な研究員を殴り倒し、皇之介は叫んだ。
リックハートは慌てることなくゆっくり振り返り・・・
「もう遅い」
春子が入っているカプセルを見つけ、飛びつく。
ガラス越しに娘と父の手のひらが重なり、目が合う。
その瞬間
____父ちゃんたすけて
春子が光り砕け散り、粒子になった。
春子の細胞は瞬時に管を通り、メインカプセルの中のハルカに移植された。
「やったぞ・・・!」
ヘドロの体内にたくさんの小さな光が輝いている。
リックハートはその光を浴びながら 期待の眼差しでハルカを見つめた。
「なんで・・・なんで・・・」
皇之介はへたりこんで
「なんでだよおおおっ!!!」
春子が入っていたカプセルを殴り、割った。
カプセルの破片が飛び、中の液体が床に溢れる。
「見つけたぞ!」
兵士がぞろぞろと現れ、皇之介を拘束しようとしたが。
「そんな奴は放っておけ。今はそれどころじゃないんだ・・・」
メインカプセルのヘドロに異変が起こる。
キラキラと輝く光りは一層大きくなり・・・。
「春子・・・」
皇之介は茫然と光を見ていた。
メインカプセルの扉が開く。
そこには・・・




