第二十話「醜態」
頭の中で声がする。
私は不出来だから 私は不出来だから 私は不出来だから 魔法の言葉
なんで みんないじわるするの?
私は思うがままにしようなんて思わない
自分の求める答えが欲しいわけじゃない
ただ少しでいいから優しくされたかっただけ 大丈夫だよって言われたかった
蛙だけが お友達 蛙だけが 私の
「支配された嘆きの声・・・本当にそうなのか・・・?」
皇之介は今度は宙を見て、また呟く。
シン・・・と部屋が静まる。
脳内で響く声も一瞬止まった。
「まあ、さておきとりあえず感謝はしてるよ。クローンを純粋な精神の持ち主に育ててありがとう。あの素材を使えば計画も成功し、ハルカを救える気がする」
皇之助はリックハートの発言に、怒りで声を震わせながら言った。
「素材・・・だと?」
その次の瞬間、リックハートに飛びつき胸ぐらを掴んだ。
「お前、お前、俺がどんな思いで・・・!!!」
今にも噛みつきそうな皇之介。しかしビクともしないリックハート。
鼻先と鼻先がぶつかりそうなほどの至近距離だが、表情ひとつ変えずリックハートは言った。
「どんな思いで育てたかって?だからありがとうって言っただろ」
リックハートは皇之介の怒りなどどこ吹く風。お構いなしに語り続ける。
「・・・実は、クローンは5体作ったんだ。そして各クローンの監視役に凄腕の兵を1人ずつ着かせた。
1体目は、クローンはまだ赤ん坊であるにも関わらず、監視役がハルカへの恐怖で頭が狂ってクローンを殺した。
2体目は、すでにブラッディマリーの影響が出ていて、監視役を殺した。
赤ん坊なのにだぞ?その後自身の力の強さに耐えられなく、クローンの体も暴発した。
3体目は、監視役がまた恐れを生して逃げ、クローンは衰弱死した。
4体目は、監視役が何者かに襲われた・・・野生の動物か、はたまた・・・」
皇之助は、胸ぐらを掴む手を離した。
「お前、狂ってるよ・・・・」
リックハートは胸元の崩れを直しながら言った。
「そう言われても否定は出来ないな。しかし俺は絶対に、ハルカを救いたい。その一心だ。なあ?5体目の監視役」
皇之助はゆっくり振り返った。
乃亜は俯いて、ごめん、と
消えそうなか細い声で言った。
皇之介はかすれ声で言った。
「お前・・・俺を・・・騙して・・・」
乃亜は声を荒げた。
「違う!!ウチだってハルカを救いたいんだよ!!」
ソニアはただ黙って目の前の争いを見ていた。
リックハートは言う。
「話を聞け。ハルカは強いぞ。ただの巫女であった時は、特殊な才能あれど巫女としての術は大して扱えなかった。
しかし、邪神を身に宿してから幻術をも使いこなす。俺は・・・」
彼は目を伏せた。
「アンモニカを行う前のハルカが、助けを求めこちらに手を伸ばしてくる幻術を見た。
俺は、その手を取りハルカを助けようとした。だが・・・」
あなたを あいしてた
だから あなたから あいを えたかった
あい を しりたい あい を しりたい
だけど あい わからない あい を しりたい
俯いたまま、乃亜が言った。
「・・・皆、取り込まれるところだった。ウチは、ハルカの心臓を貫いたんだよ・・・」
続いてリックハートが言う
「俺は幻術に騙されて、邪神の一部となるところだった。情にほだされると、全くロクなことが無い。
ハルカはまだ生きている。皮肉にもブラッディマリーを宿した体だから、そう簡単には死なないんだ。てことは、まだ救える可能性はある」
皇之介は何もない空間をただ見つめていた。




