第十九話「邪神」
何かをごまかそうと話をそらす皇之介に、女王は一瞬目つきを鋭くしたが
「・・・その声についても後で説明するわ。話を続けます。
ブラッディマリーに支配されたハルカは正気を失い、破壊と殺戮を繰り返しました。
それを止めるべく、我が国の最強の兵たちが何度もハルカに立ち向かい・・・」
良心のある人間は 『ハルカから邪神を引きはがす方法』 に賛成したが、一方 『ハルカを殺せ』 と言う人間も半数以上いたらしい。
屈強な兵たちの力でもハルカを抑えることは出来ず、多数の犠牲者を出したが。
その後リックハートがハルカを拘束する事に成功し、今ハルカはこの城のある部屋に封じられている。
学者は神を神薙から離す方法について調べた。
1、神薙が病気や事故で死んだ場合。
2、神薙の体が衰え、神の力を宿す器として耐えられなくなった場合。
3、神が神薙の元を離れると決断した場合。
4、神自身が滅びた場合。
この四つのうち一つでも当てはまれば神は離れる。
「私たちは話し合った結果 『神が神薙の元を離れる』 という方法を選びました。
ハルカ自身に、邪神を説得して離れてもらう・・・」
次の瞬間、突然耳をつんざくような大声が脳内に響いた。
「!?」
不出来な出来損ない出来損ない
出来損ない出来損ない ごめんなさい
役立たず役立たず役立たず 私私私私私 私 役にお役に立てなくて実力が伴わなくて
ごめんなさい 次から次からもっともっともっとがんばるから
ソニアは呟いた。
「始まったわね・・・」
脳内を駆け巡る不気味な声。
「な、なんなんだこの声は!さっきからずっと・・・」
最初は小さかった声が、まるで女王の声を遮るように大きくなった。
「邪神に支配されたハルカの嘆きだ」
見ると柱に寄りかかり腕を組み、件の赤い妖怪・・・いや春子をさらった男、リックハートが立っていた。
「あとは俺が説明する。」
リックハートは一瞬口を閉じ、意を決したように話し始めた。
「あいつは、ハルカはもう助かる可能性は少ない。
ソニアの説明で言うと、もうすぐ 『神薙の体が衰え、神の力を宿す器として耐えられなくなった場合』 が訪れるだろう。
でも 『神自身が神薙の元を離れると決断した場合』 この条件に当てはめる方法が無いわけではないさ、俺の手にかかればな。
ハルカの力を最小限に抑え、動きを止める事は成功した。
その後の計画はこうだ。ハルカの細胞を採取し、クローンを作る。クローンとは、遺伝的に同一である細胞の個体、複製された存在という意味だ。」
皇之助はゴクリと唾を飲み、上ずった声で呟いた。
「まさか・・・・・」
私は、アアア、殺される、アアア、私を疎ましく思う者に
リックハートは言った。
「お前のような奴にしては察しがいいな。その通り、その複製された存在がお前の拾った娘だ。
完成したクローンはブラッディマリーの影響が及ばないほどテレポーターで遠くへ飛ばし、ある程度育つのを待った」
テレポーターというのは、先程皇之助もくぐった渦のようだ。
先ほどの話だと渦をくぐっただけで、彼らは5000キロの距離を一瞬で移動出来たことになる。
「クローンがブラッディマリーの影響無く育つことに成功したら、クローンを回収し微粒子化してハルカに植え付ける。
そしてハルカに自我を取り戻させ、体内からブラッディマリーを追い出してもらう」
一気に明かされ続ける真実にめまいがする。
だが・・・間近で見てきて、どこかでわかっていた。
皇之助は、そこから目を背け育ててきたんだ。
春子は
普通の人間ではない。




