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【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~  作者: ペロリネッタ
3.喜多村本家に居候

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90.館入り、だって*


 メイド長・岩居(いわい)サザレさんに話を()いたあと迎賓(げいひん)館に戻り荷物をまとめる。


 護衛たちにそれを運んでもらい使用人館を伝って本館に入る。


 母家(おもや)に部屋をもらうのは本来一大儀式(ぎしき)で、行列を作って玄関口から入るらしいんだけどパス──というか省略。


 元々、婚姻(こんいん)挨拶(あいさつ)に来ただけなのに何の因果(いんが)で本家の部屋をもらうのか分からないんだから。


「なんで五階なの? もう、二階でも三階でもいいのに」


 館の西側の階段をえっちら、ボクたちは登っている。荷物は護衛たちが持ってるから、ほぼ手ぶらなんだけど非力(ひりき)なボクにはキツい。


「ミヤビ様の寝所(しんじょ)は最上級にしないといけないでしょう? 今回だけです。次からはエレベーター使えばいいですから」

「ちょっと~~。エレベーター使っていいならそっち使おうよ?」

「なんでも輿(こし)入れ──輿(こし)を降りてから(やかた)入りは自分の足で入る決まりらしいです。門から大分(だいぶ)あるので昔は大変だったらしいですよ?」

「ちょっと待って? 門て山裾(やますそ)の門?──」


 その昔、敷地(しきち)の境界である門の前で輿(こし)を降り館まで歩いていったらしい。


「──ムダな儀礼(ぎれい)だよね? すぐ廃止(はいし)

「そうしてください」



「またか~」


 (ひざ)をぷるぷるさせてボクの部屋だと言うところに着いてみると、迎賓(げいひん)館の部屋より大きい。


 入った応接間の(となり)居間(リビング)。そこから寝室につながる……。


「ま、まあ五階だけあって(なが)めは良いかな?」


「やっと来た──来ちゃったわね~?」

「あ、ユキ様。いらっしゃいませ」

「こちらこそ、いらっしゃい、キョウちゃん」


 義曽祖父のユキ様が、お茶を用意するから休憩(きゅうけい)なさいと(ねぎら)ってくれる。


 護衛たちは荷物を降ろし、近習(きんじゅう)──いわゆる護衛や侍女(じじょ)(ひか)える待機部屋に下がっている。


「とうとう、ここまで来ちゃったわね~」

「ここまで? とは……」


 お茶で一息ついたところでユキ様が口を開く。


「ここは当主や当主に順ずるものの住まうところよ」と教えてくれる。


「ショウちゃんもヒロちゃんも、受け入れているから大丈夫よ」

「は、はあ~?」


 どこらへんが大丈夫なのかが分からないんですけど?


「あら、分かってないようね? ショウちゃんヒロちゃんを追い越して次期当主格に昇り詰めたのよ?」

「え~~っ。そんなのはご遠慮(えんりょ)したいです」

「まあ、少し早くなっただけで、いずれ()く立場だから大丈夫よ?」


 まったく大丈夫に感じない。いったい何年先だったんだか……。



「ユキ、こんなところに()ったのか? 大変じゃぞ。山級(やましな)鬼君(おにぎみ)が来る──来られるぞ!」


 お茶してたら、なんか、サキちゃんがドタドタ部屋に飛びこんでくる。


「まあ! ど、どうしてそんなことに?」


 ユキ様まで(あわ)ててる?


「どうかされました?」

「どうもこうも……そなたは知らぬな──」


 姻戚(いんせき)煌家(こうけ)の権力を(うら)から握る山級(やましな)家の〝鬼君〟と呼ばれる(ひと)が喜多村を訪れる、らしい。


「へ~。そんな(ひと)が来るなら光栄じゃん」

「〝へ~〟ではない。まったく、そなたは……。『初床』をご(らん)になる、らしいぞ?」

「ええ~~っ! そんな人に見せるものじゃないと思うけど?」

「その通りじゃ。まったく、どうしてこんな(こと)に……」


 ──あれ? これって、もしかしてボクのせい?


「──あの~、その人ってミヤビ様の?」

「ミヤビ様の正室(せいしつ)、じゃな」


 身からでた(さび)、だった……。


「そ、その人って普通は奥に引き(こも)ってたりしない、の?」


 ──奥様だし。


「そうじゃ。なにゆえ、初床を見るなどと申されるのか、心緒(しんしょ)(はか)りかねる」

「まったく、そうね~?」


 ()や汗がにじんできた……。ストレス反射(はんしゃ)ってヤツ、だね?


「あの~、ボクのせい、かも?」と、おずおず、口にする。


「どう言うことじゃ? 話してみよ」とサキちゃんが(ほう)けつつ(いぶか)しげに聴いてくる。


「ミヤビ様に、初床におよぶ不調法(ぶちょうほう)を奥方様に直接会って()びるって、言っ・ちゃっ・た~」

「✕✕✕✕✕✕✕~!」


 言葉にならない声を発してサキちゃんが天を(あお)ぐ。


「ユキよ、わしは気分が悪い。熱も出てきた。病気じゃ。……出迎えやら何やら、あとは(まか)せる」

「まあ! 逃げるのですか、情けない」


 それでも(をなご)ですか? とユキ様がなじる。


(をなご)の出る(まく)は少なかろう。キョウを(たの)む」


 なんか、スミマセン。


 なんとかユキ様が取りなして、逃げ出すサキちゃんを(なだ)める。


「どこぞに作法(さほう)指南(しなん)するものは()らぬかの~」

実家(うち)煌家(こうけ)に出したものは居りませぬ。儀礼(ぎれい)典範(てんぱん)(さと)いものも居ないでしょう、ね~?」


(はじ)(しの)んで他家に聴く、か~?」って、ため息交じりでサキちゃんがぼやく。


「ま、まあ、サザレさんがいいって言った通りやってみる」

「おおっ! サザレが()った。岩居(いわい)家のものならば」

「そ、そうですね?」


 なんか納得してるよ。ボクに分かるよう説明してよ? まあ、だいたい想像つくけど……。


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