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【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~  作者: ペロリネッタ
3.喜多村本家に居候

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47.お屋敷の昼食


 紺色のメイド服に身を包んだ女性が案内してくれる。来た廊下を戻って着いたところはでっかいホールだった。


 食堂じゃなく宴会場やダンスホールと言われた方がしっくりくる。


 長テーブルが三列並んだその一つに、ぽつんと料理が用意されている。


「えっと、他の皆さん、喜多村家の皆さんとかは?」


 屋敷の人どころか護衛の二人、歩鳥(ほとり)さんや斎木(さいき)さんの姿もない。


 給仕してくれる? メイドさんが三人いる他に誰もいない。


 広い場所でボクだけって、どんな拷問(ごうもん)だよ。


「皆様は各自のお部屋で()し上がっています」


 それを早く言ってよ。


「ボクも部屋が良かったな……」と小さく(つぶや)く。


「申し訳ございません。お声をかけようか(まよ)いましたがお休みでしたので……」


 起こしてくれて良かったよ。ただのうたた寝ですから。


「護衛の二人は?」


「お部屋で召し上がっております」


 まあここなら護衛は必要ないしね。


 案内される前に彼女たちの部屋に顔を出してさえいれば()(とど)まれたのに。


 喜多村家の皆さんと会食じゃないなら折角、着込んだ着物が台無しだよ。


 とは言え、今さら部屋で食べたいとも言えない。


 (いさぎよ)くホールで(ひと)りの昼食をとる。


 椅子(イス)に座って(ひざ)にナプキンを掛ける。メイドの人が前掛(まえか)けをしてくれる。


 グラスに()がれた炭酸水で(のど)(うるお)す。


 まず野菜と生ハムのサラダとスープが給仕(サーブ)される。スープはコンソメかな?


 シャクシャクとサラダを食べる。胡椒こしょう味のドレッシングがかかっている。


 スープは()んだ琥珀(こはく)色が美しい。お味もちろん美味(おい)しゅうございます。


 クローシュ(料理のふた)が取られ現れたのは(とり)の丸焼き、ローストチキン。


 サラダボウルやスープ皿が下げられると、目の前で切り分けてくれる。皮を切る時の音がパリっとして食欲をそそる。


 切り分けられたローストチキンの皿がサーブされる。これはフォークだけでいける。


 少し大きめをそのままフォークで口に運ぶ。


 香ばしい(にお)いがして、()むと皮の歯応(はごた)えと、ほろほろ()けるささ身との相乗効果で歯が(よろこ)ぶ。


 味も素晴らしい。野性味あふれる味わいだ。(キジ)とかの味に近いのかな?


 噛むほどに(うま)味が口にあふれる。薄くかかっているもので香ばしいさが増している。


 これは黒馬油(マーユ)みたいなものかな?


「こちらも、どうぞ」


 ロールパンの(カゴ)が出される。


「ありがとうございます」


 一つ取って千切(ちぎ)り口に運ぶ。あっさりした味が(とり)の脂を(ぬぐ)い去ってくれ、舌をリセットしてくれる。


 (チキン)とパンを交互にぱくぱく食べた。は~、お腹いっぱい。


 次に出されたのは、深めの皿にジャガバターとフレンチフライ。いも()くしか。


 食べてみると……んまい! 新ジャガを使ったジャガバターだ。


 皮が(うす)くぬるっと()がれる。その皮も美味しい。バターがあっさりしていて(いく)らでも食べられる。


 フレンチフライも美味しい。外はしっかりしているのにふわっと噛める。


 ()えられたケチャップが自然な甘さだ。完熟(かんじゅく)トマトから作ったのかな?


 マスタードも今作ったようにピリッと主張する。


 食べ過ぎた、もう食べられない。と言うところにブルーベリーソースのかかったチーズケーキが出される。


「ま、ケーキくらいなら、入るかな?」


 んまぁい~! 濃厚(のうこう)なチーズの味、ブルーベリーソースも甘過ぎず()っぱ過ぎず、()ったミントの葉も瑞々(みずみず)しい。


「ご馳走(ちそう)様でした……」合掌(がっしょう)


 (ふく)れ上がったお腹を帯が()めつける。苦しい……。


 食後のコーヒーを(いただ)きながら食休みする。



「あの奥はどこに(つか)がってますか?」


「喜多村家の皆様のお屋敷でございます」


 部屋までメイドさんに送ってもらって、廊下のその(おく)について()く。


 ここは喜多村家の迎賓(げいひん)館みたいなものか。


「お夕食まで、お(くつろ)ぎください」


「ありがとうございます」


 そう言ってメイドさんが戻って行く。することがなくて夕方まで間が持たないな。


 部屋に入らず向かいの部屋へ、歩鳥さんと斎木さんの様子を見にいく。


「皆、何してるの?」


 二人は、ベッドに横になったりソファーで寛いでいた。


(ひま)だから遊んで?」


「キョウ様も喜多村の人間になってきましたね?」


「ど~ゆう意味?」


 そのままの意味ですと返され(いかどお)る。


 仕方ないので自分に()てられた部屋に戻ろうとすると、奥からトテトテと足音がする。


 そちらを(うかが)うと子供たちが襲来(しゅうらい)してきていた。


「皆、遊びに来てくれたの?」


「そう、遊ぼ!」


「部屋を案内する」


「お風呂に入って洗いっこする」


 どうもお風呂に執着(しゅうちゃく)する子がいるね。ボクは苦笑い。


「そう、ちょっと待っててね」


 護衛たちが遊んでくれないので、子供たちの相手をしよう。


 部屋に戻り窮屈(きゅうくつ)な着物を()ぎましょう。


 夜までなんて着てられない。部屋にまとめられた荷物から買ったばかりの服を取り出す。


 ベッドに並べて吟味(ぎんみ)するけど……。


「まあ、このワンピースで良いか」


 初めてこちらで買った(うす)緑のやつ。帯を()いて着物をベッドに打ち()てる。


 肌着になってワンピースを着ていたら、子供たちまでワンピースを脱いでいた。


 一番、(おさな)子は上手く脱げなくて多々羅(たたら)()んでいる。


「ちょっと、みんなは脱がなくていいから~」


 別に脱ぎ合いっこじゃないから。


 ワンピースをすぐ着て脱ぎかけの子を、もう一度着させる。


 服を着直した子は、ボクの荷物が気になって(あさ)り始めている。


「わあ、ピンクの服~」


 ピンクのパジャマを見つけて引き()りだしてきた。


「それは、やめて……」


 幼い子も参戦してパジャマ争奪(そうだつ)戦が勃発(ぼっぱつ)してしまう。


「お願い、これはダメ。返して?」


 (なだ)めて他の子は(あきら)めてくれたけれど、幼子だけは(にぎ)()めて放さない。


「他のことして遊ぼ?」とやっと(なだ)めて返してもらう。


「それで、何して遊ぶ? どこに連れていってくれる?」


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