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【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~  作者: ペロリネッタ
2.5 『古都』へ

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44.モール内の這い寄る危機*


 思うまま、かき集めた肌着をレジにかけ精算(せいさん)する。


 マキナから(あず)かった端末機は正常に決済(けっさい)してくれている。


 周りには、まさにグールが獲物(えもの)を求めて彷徨(さまよ)うごとく女性がじわりじわりとこちらに集まってきているのが見て取れる。


 そんな人たちを迂回(うかい)して肌着コーナーを離れ、服飾(ふくしょく)エリアを移動する。


 先導(せんどう)は、気更来(きさらぎ)さんと羽衣(はごろも)さん。


 後方はマキナが付けてくれた護衛の歩鳥(ほとり)さん、斎木(さいき)さんに(まも)られている。



 普段着の陳列(ちんれつ)場所まで行くと試着コーナーをみつけて、飛び込む。着ていたすべてを()いで穿()き替える。


「キョウ様、脱いだ肌着を寄越(よこ)してください」


(よご)れものなんか、どうするんです?」


 カーテン越しに気更来さんが求めてくる。そんなものをどうすると言うんだろう?


(えさ)──()()にして暴女(グール)を遠ざけます」


「えっ! そんなのイヤですよ。誰かの手に渡るんじゃないですか?」


「ま~、それはそうですけど……。今はそんな些末(さまつ)な事を気にしてはいけません。さあ、早く」


 些末って、結構メンタルを(けず)られるんですけど?


「納得できないけど……どうぞ」


 一先(ひとま)ず男性警護に(たずさ)わった専門家に(ゆだ)ねるしかないか?


 まったく納得できないけど、仕方なくまとめた汚れものをポリ(ぶくろ)()めて、カーテンの(すき)間から気更来さんに渡す。


「おい、ポチ」


「誰がポチじゃ……。それで何?」


 気更来(きさらぎ)さんは周囲を警戒していた羽衣さんを呼びよせ、顔を突き合わせて話している。


「いいか? できるだけヤツらを遠くへ誘導(ゆうどう)しろ」


「なんで私が?」


「袋を()けて、()いでみろ」


「……ふぉ~! 濃厚(のうこう)女男(オナン)子の(かほ)りがぁはあああ~! ふぉ~……ふぉ~……」


 きゅっと()めた袋を(ゆる)めて()け、羽衣さんは鼻先を突っ込み()いでいる。


 ちょっと~何やってんのよ~?


 みるみる、羽衣さんの表情が恍惚(こうこつ)としたものになってる。


 ボクの(にお)いはヤヴァい薬物ですか~!


「逃げきったら、それはお前の物だ」


本当(ほんと)か?」


「本当だ。キョウ様が認めてくれた」


 いや、あんたが認めさせたよね。ボクは、知らない。用途(ようと)を知ってたら渡さない。


 そんな事されると知ってたなら焼却(しょうきゃく)してやったよ。


勢子(せこ)犬ウイ、Go(いけ)!」


「バウ!!」


 羽衣さんがボトムスを頭にかぶり、キャミソールを(えり)巻きのようにして()け出していく。


 うぐぅ~、誰か許可したボクを殺して……。



 かくもハレンチな? (おとり)作戦は決行された。


 肌着を装着したボクは、歩鳥さんのジャケットを着直し肩を落として試着コーナーを出た。


 しかし、まだ服確保作戦は続行中だ。


 次は、普段着や部屋着の確保に回る。取りあえず、一着そろえて着込もう。


「ん~、これで良いか?」


 うす緑のワンピースを取ってレジを()ませる。


「ありがとう、ございました」


 試着コーナーに取って返し、ワンピースを着ると用済みになったジャケットを歩鳥さんに返した。


「ありがとう」

「どういたしまして」


 歩鳥さんの礼を受けて、本格的に服を買い物カゴに集めていく。


 遠くで喧騒(けんそう)()こえてくる。羽衣さんの陽動が上手くいってるのか、別の意味で上手くいってるのか、こちらには人が寄ってきていない。


「こんなものか?」


 五着セットほど確保してレジを通す。次は、訪問に()ずかしくないものを買わないと。


「気更来さん、訪問に似つかわしい服はどこにあります?」


「こちらです」


 気更来さんに案内され専門店エリアに移動していく。


「あ! ちょっと」


「なんでしょう?」


「ここ、和服じゃないですか?」


「そうですが?」


「いきなり行ってもダメでしょう? ドレスでもダメでしょうけど」


「ご心配なく──」


 気更来さんの説明では、ボクの情報が伝わって近似の服が用意できると確認されていたらしい。


 (いた)れり()くせりだけど。なんか情報、だだ()れな気がする。


 でも、今回は助かった。


「いらっしゃいませ……」


「すみません。蒼屋(あおや)キョウと申します。訪問着を見繕(みつくろ)って欲しいんですけど」


「蒼屋様、お話、(うかが)っております。少々おまちください」


 気更来さんが案内した店に入って、名前を告げると店員さんは三着、見繕い持って来て見せてくれた。


「ここで、着付けていただけますか?」


 ボクは即決して、三着とも購入を決め、一着の着付けを頼んだ。


 選んだのは、青から水色にグラデーションした生地(きじ)にアヤメが二輪、()いているデザインだ。


「はい、もちろん」


 店員さんに案内され、奥に入ってワンピースを無造作(むぞうさ)に脱ぐ。


 また、()れ物に()れるよう着付けてくれる。


「これで如何(いかが)でしょう?」


「うん。バッチリです」


 応接の場所に移り姿見に映った自分の姿に満足した。着付けてくれた店員さんたちに礼を言って店をあとにする。


 余った着物は護衛に預けてくれた。


「ドレスも行けそうかな?」


「少々おまちください……」


 気更来さんは、そう言って黒メガネに触れて何かしてる。そのメガネって特殊機能があったの?


 あって不思議じゃないんだけど、夜となし昼となし装着してるからね。


 本当に『ウィメン・イン・ブラック』だ。


「──もう少しなら大丈夫です。羽衣が引き付けています」


 まだ、いや、ずっと羽衣さんは逃げ回ってたんだな。あとで(ねぎら)ってあげよう。


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