33.寝込みの襲撃?*
クイーンズサイズに三人はムリと思ってだけど、いつしかうつらうつらして疲れて眠ってたみたい。
んがぁ~、寝てらんない……。
しかし、一度目が覚めると眠れなくなる……。
両脇の二人もいつしか眠ってたみたい。二人に挟まれて蒸したのか、汗をかいて喉が渇いている。
「結構、かわいい寝顔じゃん」
横のメイの寝顔を見て思う。
さて、乗っかかった二人の拘束を解いて……っと。
起こさないようベッドから脱け出す。洗面所へ行って水を飲もう。
いや、待て。水差しの水とか、備付けの冷蔵庫なんかに飲み物は無いかな?
かけ布団から出るとヒヤッとする。
二人に揉まれて掻いた汗で濡らした肌着が冷えてくる。
常夜灯の薄暗い中、部屋の中を探る。夜中に上がった月が、カーテン越しに部屋の中を照らしている。
何かヒヤッとする……。
それは、肌着の湿りではなく……。気のせいかと思い、目を凝らすと据えられたテーブルに備付けの水差しがあった。
お盆に載ったコップに水を注ぐ。
「生き返る……」
コップの水を飲み干し、プハァア~っと息をつく。
「冷蔵庫もあるかな……あった。どれどれ?」
ビルトインで備わった冷蔵庫を開けて中を確認。うん、ジュースとかスポーツドリンクとか……炭酸飲料まであるね。
でも、水やお茶が良いな。ミネラルウォーターまで入ってるけど、今は冷えてるものより、温かいものが良くなってきた。
冷蔵庫も確認してベッドへ戻ろうとする途中、また悪寒が……。
薄暗い病室を窺うが……特に変でもない。
気持ち悪くなって、窓の方へ歩いていく。
カーテンを捲って、格子が嵌まり転落防止処置された窓から夜景を見る。
夜空に少し太った半月が浮かんでいる。
「なんか、寂しい」
もう、寝よう、か? でも、目が冴えてしまったな。
二度寝できるかなと、思ったら廊下から物音が聴こえた……。
それに耳を澄ませて聴いてみる。確かに聴こえる。
でも、かなり遠くだ。静かに歩いてドアに近づき耳を澄ませる。
う~ん、確かに遠くから争うような音が聴こえるな?
「なんだろう……」
好奇心に負け、ドアを開けて外、廊下に出て様子を窺う。
それは、言い争うような声まで聴こえる
少し怖くなってドアを閉めマキナの元へ。
「マキナ、マキナ……」
マキナは、変わらず眠っていた。
「……ん?……何」と寝ているのを起こされ不機嫌に答える。
「下の方で物音が……。下で争ってるみたい」
「また、入院患者が守衛とでも揉めてるんじゃないか?」
「そう……かな」
「もう、寝ろ」
釈然としないまま、ベッドに戻ろうとすると、にわかにヒタヒタと足音が近づいてくる。
「マキナ、誰かくるよ」
「巡回だろ? もう寝ろよ」
「でも……」
違うんだ。足音は一つじゃない。ボクは、身動ぎせず、その音に耳を澄ませる。
ヒタヒタと、確実にこちらに向かって来ていた。しかし、それは迷いながら進んでいる。
まるで、何かを探すように。複数、二つ以上の音がする。
また、ドアに近づいて扉に耳を当てて聴いてみる。
息を殺して足音の行方を探る。
それは、迷ったあげくドアの前に止まった。
「失礼します」
ドアに当てた耳ごと扉の動きに引き摺られボクは倒れた。
「や、申し訳ありません。マキナ様は?」
マキナ? マキナの知り合い、なの?
その人は真っ黒な服で……まあ端的に言えばくノ一だ。後ろにももう一人、控えている。
何でくノ一が、って考える前に。
「貴女は? マキナは寝ています。御用は何ですか」
「至急、起こしてください。賊です。ここから避難します」
意味がわかんないけど、まあマキナを起こそう。
「マキナ、危険がヤバいって、じゃなくて。賊が来てるって」
「はあ? 何の冗談だ」
「冗談じゃない、っぽいよ?」
「あの人が……」
名前が分からないので、彼女の方を見てマキナを促す。
「申し訳ありません。名前は、明かせません。草とでも影とでも、お呼びください」
「じゃあ、影さん。マキナに説明を」
怪しさマックスだけど、彼女はドアの側から部屋の中には入って来ない。
敵ではないようだし、まだ信用できないけど、直ちに危害を加えられない程度には信じられそうだ。
「喜多村の暗部か……」
「その通りです。私たちは、キョウ様をお護りしていました」
「ほう?」
「少しお耳を……」
諦めて、マキナはベッドから脱け出し彼女の本へ。
なんだ、マキナも汗かいて肌着が濡れてるじゃん。
よく我慢してたな。
「…………」
「……アンナ……うむ……か」
あれ、アンナって言った? 気のせい?
まあ、深刻な話の割りに肌着姿のマキナと黒装束のくノ一で、なんか笑える。
「緊急事態だそうだ。キョウ、逃げるぞ」
「逃げるって、どこに?」
「……来ました」
後ろのくノ一が囁く。来たって、賊?
「避難はしごでは、安全確保ができません。窓から脱出しましょう」
「うぬ……仕方ないか……」
ちょっとちょっと、不穏な言葉が出ましたけど?
「窓? って、あの窓? 鉄格子の、あの?」
ボクは、月明かりが映ったカーテンの方を指さした。
「まあ、そうだな……」
「お早く。ドアにベッドでバリケードをします」
言ってる間に部屋へ入って来た黒ずくめの二人がベッドに取り付いた。
急に来るから、身構えてしまったよ。
「あ!……」そこにはメイが、まだ寝てる。
そんな事はお構い無しに、移動のローラーのロックを外すとベッドをドアにぶち当てる。
当然、寝ていたメイは振り落とされ、したたか床に体を打った。
「な、何⁈ 地震?」
「違う! メイ、出番だよ。服着て、戦闘態勢!」
「お? おう!」
寝ぼけ眼のメイは、即座にジャック・ジュリアに変身した!
さあ、ジャクジュリ(仮)、活躍を望むぞ?




