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【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~  作者: ペロリネッタ
4.本家からの再出発

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200/202

200.セキュリティを突破


 最終のゲートと思われるところまで来た。


『お邪魔しま~す』

 慎重に扉を開ける。目の前にはセンター・コントロールが広がっていた。まず、館の見取り図とセキュリティ・ロックを掌握(しょうあく)しますか⋯⋯。



「⋯⋯分かった」

流石(さすが)キョウ様。それで、どちらへ?」

「あ、ちょっとその前に⋯⋯」

 急ぎ部屋に戻ってお護りを引っ掴む。携帯するのに不便だな〜。ヒモでも付けてやろうか?


「お待たせ。笹さん、預ける。そっち」

「え? は、はい! 周囲防御」

「「「了解」」」

 廊下に戻り笹さんにお護りを預けると、行き先を示す。笹さんが白鞘(しらさや)をおっかなびっくり受け取ると号令し、護衛たちが、ボクの四方を固める。


「無断で彷徨(うろつ)かないでくださいW(ワラ)

 まあムダでしょうけど、と侍女さんが勝ち(ほこ)る。


 館の中央に移動して裏口に通ずる廊下に入る。当然、行き止まりにはドアがある。


 ドアの前に行き着くと解錠(アン・ロック)、ノブを回して外に出る。


「はあ~?! ダメです! お戻りください!」

 鍵が掛かっているはずの扉を開けられ、余裕だった侍女さんが(あわ)てて叫ぶ。振り返りボクは(あご)を上げてドヤる。思い知ったか!


「後方防御」

「「「おう!」」」

 追い撃ちを掛けてくる侍女たちに素早く笹さんたちが対応する。


 芝生の敷かれた上で棒っきれを振っていた陛下が、こちらを見て呆気(あっけ)にとられている。


「陛下、この館から出られないって、どう言うことですか?」

「んあ、ああ⋯⋯そうだが、そなたは出て来ておるな?」

 どうやったと疑問を口にする。その問いに答えず、次に求める。


「では、帰宅の許可をください」

「それは、ならぬ。男子(おのこ)は奥にて骨を埋めるもの。仕来たりにて破ること、(まか)りならぬ」


「そんな⋯⋯⋯。あ、レニ様やヒセン様は、どうなのです? 昨夜、参られたではありませんか?」

「あれは、今、離宮に(こも)っておる(ゆえ)、いずれ奥に閉じ込める運命よ」


「でも、今は出入りできるのでしょう? 私が出て行っても構わないはずです」

「そなたは余の相手をせよ。()の胸を(いと)わぬ貴重な男子はそなたのみ。余の在位の間は奥で暮らすのだ」


「そんな⋯⋯。昨夜は朝に帰れば良いと(おっしゃ)ったのに、(だま)しましたね? 私には主人も家族もいます。レニ様やヒセン様ほどの覚悟もありません。下々の者と同じく働かねば暮らして行けません。私の世話を待っている義従姉妹(いとこ)たちもいます。学校も行かねばなりません」

 まあ、マキナにいずれ子供が生まれるのは、言わなくて良いよな。


「そうか。その世過(よす)ぎにいくら要る? そなたの連れ合い──マキナだったか? ここへ()べば良い」


「⋯⋯はい? いや、それは、ちょっと……。ご返事いたしかねます」

 口籠(くちごも)るボクに陛下が余裕の笑みを浮かべる。悔しい。


 絶対権力者は、絶対権力者たるってことか。小市民のボクの願望をねじ曲げてでも(かな)える力があるんだ。どうやっても太刀打ちできない。


 後ろを見ると護衛たちと侍女たちの争いも拮抗(きっこう)している。手詰まりだ。


「──喜多村に婿(むこ)入りしたのは、縁故(えんこ)か?」

「え? いえ。婚姻マッチング、です⋯⋯」

 唐突な問いに素で答えてしまう。流石(さすが)、嫌なところを()いてくる。


「ほう⋯⋯。では、そなたは買われたのだな?」

「⋯⋯はい。有り(てい)に言えば、そうです」

 言いにくいことを言わせて何考えてるの、この人は?


「そなたを買い取っても良いな~⋯⋯」

「それはダメです」


「なぜじゃ。喜多村よりも良い暮らしをさせてやれるぞ?」

 ちと、学校へ()るのは難儀じゃが、と(つぶや)く。


「マキナ──主人にはもう赤ちゃんが」

 もう少しの間、秘密にして置きたかったのに、言っちゃった⋯⋯。


「何? そなた、こちらに来て間もなかったのでは、あるまいか?」


「はい。一週間くらいでしたか?」

「⋯⋯⋯⋯」

 息を()んで黙り込む。まあ一般よりは早く子供が出来たと思う。そこは、ミヤビ様ほど困らなくて良かったけど。


「──マサキが最高傑作と自慢しておったのは、まさか⋯⋯」

 ブツブツと独り言を呟く。


「あの~、陛下?」

「昨晩、マゴとか言っておったな。それは、まさかハノリに赤子が、娘が(はら)んだと言うことか? ()に孫が出来ると?」


 ギクッ⋯⋯。


「さ、さあ? 何を(おっしゃ)っているのか分かりません」


 ボクを見つめて押し黙ったあと、陛下が歩きだす。

「体が冷えてきた。館に戻る」


 侍女さんが素早く駆け寄りタオルを渡す。それを受け取り体を拭いながら護衛と侍女の(いさか)いの間をものもとせず、陛下が館に戻って行く。


典医(てんい)を急がせよ。ハノリを診せるのだ」

「はい! 直ちに」


 ゴメン、ミヤビ様。妊娠バレを加速させてしまいました~。


 館に戻った陛下は、トイレ横の風呂場で汗を流すと、スーツをまとう。

 そう言えば、この騒動でお風呂入ってなかった。ボクもシャワー浴びたい。食事の前に浴びれば良かった。でも、替えの下着とか服とか無いんだよな⋯⋯。


「離宮に参るぞ」

 独り言のように陛下が(れい)する。

 それってボクたちも行って良い? ボクたちにも言ってるよね? まあ、奥殿(おくとの)に取り残されても解錠して出て行くけどね。


 陛下を先頭に侍女たちが続き、ボクたちも追従(ついじゅう)する。奥殿の正面から外に出て、左へ。太陽が顔を(のぞ)かせる東に続く小路を進む。

 いと(とおと)き御方が徒歩(かち)って良いの? ボクたちには好都合だけど。


「笹さん笹さん、ミヤビ様の妊娠が陛下に露見すると思う。そしたら⋯⋯」

「──ああ、まだご存知なかったのですか?」

 打木さんも加わり、顔を寄せ合って話す。


「そうそう。ボクの成り行きが怪しくなったら逃走するから、全力で」

「成り行き、ですか? それ如何(いかん)に関わらず、隙を見つけて脱出されては?」

 なし崩しで奥殿から出られたのですから、と付け加える。


「う~ん、そうだけど、もしかしたら円満帰宅できるかも知れないから⋯⋯」

「とても、そんな(みち)は見えませんが」

「そうかも知れないけど、強引に逃げるのは最終手段にしたいんだよね」


 サキちゃんからは、喜多村の悪いようにするな、って言われてる。仲違(なかたが)いや物別れになったらマキナにも申し訳ない。


「キョウ様、思われるままに」「了解しました」

 笹さん打木さんが了承。

 気更来(きさらぎ)さん羽衣はごろもさんは元気ないね。特に、羽衣さんが。


 低木の林から(つた)に覆われた館が垣間見える。あそこが東の離宮だな。


 西の通用口につながる道に進まず、表に回る道へ進む。

 正面入口から離宮に入り、ミヤビ様の居室へ向かう。


「殿下は、食事中でございまして⋯⋯」

「構わぬ」

 ミヤビ様の居室前、離宮付き侍女の断わりを陛下は一蹴(いっしゅう)する。


「あの、それが⋯⋯」

「どうしたと言うのだ?」

 朝の食事にミヤビ様がえずき、その対応で混乱しているとドア前で(はべ)る侍女が口憚(くちはばか)る。


「今、典医を向かわせているはずじゃ」

「はい、こちらも連絡を取っております」

 食事ひとつに右往左往しているな。これは良くない。


「調理場は?」

 側でおろおろする侍女さんに調理場の場所をを聴いて、護衛たちと向かう。


 護衛たちは外で待ってもらい、調理場へ入って手持ち無沙汰のメイドを捕まえ指示する。


「梅干し、あと、柚子(ユズ)かスダチなど柑橘(かんきつ)類の風味付けできるものを」

 お米はあるだろうから、お粥だ。食べ飽きてるかも知れないけど緊急避難的にやるしかない。


 小さいお鍋にお米に水、昆布の切れ端を入れて煮込む。土鍋が良かったけど仕方ない。

 火加減を見ながら、梅干しから種を取り除きスプーンで(つぶ)す。見かねてメイドさんがヘラで潰してくれる。出来た梅干しペーストを手塩皿に盛る。


 鍋からプツプツ、泡が()いてきたので昆布を取り出し、弱火で煮詰める。米粒がふやけて来たら火を落として放置。


 洗った柚子の皮を()き、内綿を取り除いたものを細切りして加減しながら鍋に加え、塩で味を調える。


「うん、柚子も主張し過ぎないし、いい塩梅」

 丸いお盆にお粥を盛ったお茶碗と梅干しの手塩皿、レンゲを載せてミヤビ様の居室へ急ぐ。


 部屋では、渋い顔をしたミヤビ様を、白髪交じりの白衣を着た(ひと)が聴診器で診察している。

 看護師は、青や黄色い採血管をまとめて保冷バッグに収めている。


 それを陛下やレニ様、ヒセン様、侍女たちが見守ると言う針の(むしろ)状態だ。


 部屋の入口で(たたず)み通せんぼでは邪魔だろうと、隅へ移動して護衛たちと診察が終わるのを待つ。


 ミヤビ様たちは、ボクたちを気にしている。特にボクの方、お盆の料理を気にしているみたい。

 柑橘系の匂いが届いたのだろう。他の人たちも見回してボク(の持っているお盆)を見、かけた黒メガネを(いぶか)しく見る。


「──それで、どうじゃ?」

「いえ、まだなんとも。血液検査の結果次第ですが、おそらく⋯⋯。いえ、まだ判断しかねます。しばらく安静になさってください」


「──まだるっこしいのぉ。速断できぬものか」

「無茶を(おっしゃ)らないでください」

「ぐぬぬ⋯⋯」


「もう良いか? キョウ」

 医師に可否を聴き、ミヤビ様が呼ぶ。


「はい」

「──此方へ。その香りが気になってのう」

 ミヤビ様は、ボクのサングラス姿を(いぶか)しみながらも待ちわびている。



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