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【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~  作者: ペロリネッタ
4.本家からの再出発

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198/202

198.ベッドでマッサージ


「えっ? ちょっと、えっ?!」

 そしてまた、侍女に抱えられベッドの脇に移動する。


「それでは、ごゆるりと……」

「は、はあ?……」


 若い侍女が懐刀(ふところがたな)(ささ)げ持って渡してくる。目まぐるしい移り変わりに疑問もなく受け取る。

 渡し終えた侍女は、扉の前で横一列に並んだ他の侍女たちの列に加わり、会釈(えしゃく)して部屋を出て行ってしまった。

 きっちり、脱いだ着物一式にカツラも回収する徹底ぶりに言葉も無い。


 ベッドには陛下がうつ伏せに寝転んで待機している。ローブを脱ぎ、両肩しか分からなかった薄衣(うすぎぬ)(あらわ)になっている。


「キョウ、腰を頼む」

 スリップ姿の陛下が声を発する。


「は、はい。でも……」

「どうした?」


 上半身を起こし、こちらを一瞥(いちべつ)する。ボクは持った懐刀の扱いに困っていた。


「おお、懐剣(かいけん)か。枕元にでもサイドテーブルでも置けば良い」

「はあ……。では、失礼して……」


 サイドテーブルに懐刀を置き、ベッドに上がる。いや、いいんですか、それで?

 陛下のお体までにじり寄り、その前で正座して、ため息を()く。

 どうして……唯々(いい)諾々(だくだく)と従っているのか。


 気合いを入れるのと、それに反してそっと太腿(ふともも)(また)ぎ、腰に両手を突く。


「思いっきり、やって良いぞ」

「は、はい」

 そう言われたからって、思いっきりは出来ないよ。特に腰は。


「……ふんぬっ!」

「痛かったですか?」

「いや、(いた)気持ちいい。続けよ」


「はい……」

「ふおっ……くっ……」

「だ、大丈夫ですか?」

「問題ない……」


 そんなに反応されると怖くって揉めないよ。

 撫でるように、やんわりやんわり……。


「んくっ……んぬっ……のぁ……」

「…………」

「そ、そなたは……()い……()の子……よのぅ」


「そうです……か?……」

「そう、じゃ……()の……連れ合いなぞ……触れる……どころか……見ても……くれぬ……」

「それは……お(さび)しい……です……ね~?……」

「そう……なのじゃ……」


「…………」

 笹さんの言った噂は、ほぼ正解だったらしい。慰めに言う言葉がない。


大分(だいぶ)、良くなった。前もやって(もら)えるかのぅ」


「えっ? 前と申されますと?……」

「この!忌々(いまいま)しい重しじゃ」


 陛下が転がると、上半身を上に向け両手で胸を持ち上げる。同情していたのに台無しです。


「──単なる脂肪の(かたまり)じゃ。そなたなら容易(たやす)かろう」


「いえ、わたくしには禁忌(きんき)のところゆえ、致しかねます」

「そうであるか? 揺れる胸に目を奪われて居らなかったか?」

「いえ、全く……」


 ギクッ。バレてた? ボクの回りでは御目にかかれない大きさだったので……。いや、ちゃんと見ないようにしたはず……たぶん。


「余は憎い。(みにく)いこの塊が()げてしまえばと何度思ったことか……」

 醜いとまでは思われていませんよ、きっと。って、それはボクだからの印象か……。


「穏やかではありませんね。陛下の魅力は胸とは何ら関わりないと思います」

「そうか? そう思うか? ならば、その懐剣で()いでくれぬか? この肉塊(にくかい)を」


「…………」

 言葉が出ない。思い詰めても、どうしてそんな猟奇(りょうき)(てき)になるのかな~? なんか()めて来た……。


「ほれ、ほれ? ……そなた冷静じゃのぉ?」

 体を起こし見せつけるように胸を揺らしていたが、ボクが冷めているのを感じて陛下も戸惑う。


「──そなた、薬が効き難い体質か? 媚薬(びやく)に耐性があったりするか?」


「……何の話です?…………。まさか、このお香が?」

 不意に発した(いぶか)しさマックスの言葉で頭がすっきりする。()かれていたのはリラックスするため、じゃなかったんだ。


(まず)い……」

 マズいって何ですか!


(はか)りましたね、陛下? マッサージに(かこ)つけて胸を揉ませようとするなど、君主にあるまじき所業。じきに孫を持とうかと言う方が為さることですか?」

「……済まぬ。ちょっとした児戯(じぎ)じゃ。独り寝が(さび)しかったのじゃ。そなたならば添い寝くらいは出来ると思うて、な?…………。マゴとは何のことじゃ?」


「…………えっ?」

「えっ?」


 し、しまった~~!! ど、ど、どうしよう……。


「──ま」

「ま?」

馬子(まご)にも衣装とは、陛下のそのスリップ姿を言うのです! では、そう言うことで……」

「これ、どこへ()く? キョウよ」


 すたこらとドアに駆け寄りノブを回す、が扉が開かない。ど~なってんの、これ?


「──何を焦っておる。ここは添い寝をせぬと出られぬ部屋ぞ?」


「どんな部屋ですか、それ?」

「連れ合いが逃げ出すもので致し方なく、な」

「出してください」


(あきら)めよ。余も流石に休まねばならぬ頃合いよ。何もせぬ(ゆえ)、そなたも休むが()い」

 隣を叩いて陛下が誘う。


「今さら信じられません」

 この状況で言われても虚言(きょげん)にしか思えません。


()もありなん。じゃが余は眠る。眠るぞ?」

「…………」

 マジで布団を被り、陛下は寝る体勢になりはしている。


 何か方策はないものか…………。

 あっ! 携帯で連絡して……って、着物ごと侍女さんが持って行っちゃってるよ。どうして懐刀が良くて携帯端末は没収なんだよ。


 小一時間、打開策を考える、までもなく十分も経たずに諦め、ベッドに上がり隅っこで眠る。


 いろいろ在りすぎて疲れ、(まぶた)が重くなっちゃったんだから仕方ない……。


 ◆


「キョウ、眠ったか?」


 にじり寄ってキョウの鼻っ柱を摘まむ。反応はない。

 こんな端に眠らずとも、何もせぬと言うに。


「まだまだ、子供よのぅ」


 両(わき)に手を入れ、その体を引摺(ひきず)りベッドの中ほどに移す。

 体を冷やさぬよう横に並んで布団を被る。


「マゴ…………」


 ──孫? まさかな……。


 ◇


 息苦しいな? どこだ、ここ。暗くて何も見えない。


「ぷはあ~」


 何だ、このウォータークッション?から顔を引き抜く。その上、左脚が挟まって……。


「よっと!」

「うふん!……」


 ──抜けた。何だ、このクッション、喋った。

 …………こいつ、じゃなくって陛下?


 な、なんでこんなことに? いや、確か離れて眠ったはず。油断も隙もない。


「そんなことより……」


 オシッコしたい、切実に!

 そお~っと布団から脱け出して……。


 ドアに寄ってノブを回す。やっぱり、ドアは開かない。

 あと、残る扉はクローゼット。外には出られない。

 困った。()れる。良い年して粗相(そそう)なんて洒落にならない。

 くう~~~っ、げ、限界が~~!


「トイレか?」

「ぎゃ~~!」


 股間を押さえて、くねくねダンスしていたら声を掛けられた。


(おど)かさないでください。危うく漏れ──何でもないです」

「余も催した」


「では、早くドアを開けてください」

「部屋を出る必要はない」


「部屋を出ないでどうするんですか?」

「これじゃ!」

 そう言ってベッドの下から、細長い容器を取り出して見せる。


尿瓶(しびん)じゃないですか!」

「そうじゃ。そなたに先を譲ろう。有り難く思え」


 小刻みに足踏み、いや地団駄を踏む……、もう限界。


「──はあ~、仕方ないのぉ」

 そう言い、陛下はドアに近寄り外へ話しかける。


「──不浄じゃ。錠を開けよ」


 カチャリと錠が外れる音がして、ゆっくりドアが開く。

 ボクは、開けようとしていた侍女を強引に押し退()けて外に出る。


「──そなた、トイレがどこか知っておるのか?」

 そ、そうだった!


「どこですか?」

「廊下に出て正面じゃ」


 小走りで隣のリビング?のドアを開けて廊下に出る。

 取りあえず正面のドアを開け飛び込む。


「え~~?」

 小部屋の奥にぽつんと便座があった。

 いや、個室にはなってるけど空間の無駄遣いでしょ?

 広すぎて居心地悪いわ!


 便座に駆け寄り、スウェットの紐を解いて座りひと息つく……。助かった。


 大人の尊厳は保たれた、辛うじて。


「済んだか?」

「ひえっ?!」

 人心地ついたタイミングで声を掛けられ正面を見る。

 トイレのドアの前に陛下がいた。


「どうして使用中のトイレに入ってくるんですか? 出ていってください」

「鍵は掛かっていなかったのでな」


「それは……、それどころじゃなかったので忘れたんです~」

「まあ、ここは鍵が掛からぬのだがな」


「はあ? 個人の尊厳は?」

「余にそんなものは無い。不慮の事故が起こると回りが困るであろう」


 言ってる意味が分かりません。それじゃ寝室はどうなんですか~? って、アレは営みを強制するためか。


「それに……」

「──それに?」

「一人でトイレは困るであろう?」


 ──はい? また意味が分かりません。



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