表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~  作者: ペロリネッタ
4.本家からの再出発

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

195/202

195.聖殿へ向かって……


「思ったより御壮健のようで安堵(あんど)いたしました」

 車内の仄昏(ほのぐら)い明かりの中、ヒセン様がミヤビ様に言う。

 人の配置は進行方向に向くミヤビ様とヒセン様。進行方向に背を向けるレニ様とボク。



「そうでもありませぬぞ、ヒセン殿。(くら)い中では顔色が分からぬではありませぬか? 今宵だけでも静かに休まれれば回復されたものを」


「何をおっしゃる。木っ端(こっぱ)貴族の屋敷などに長居されることこそ体調を崩すと言うもの。ねえ、ハノリ殿下」

 ボクも同席してるってのに険のある言い分だね。


「…………」

 ミヤビ様は無言。違うと言ってもらえれば少しは風当たりが緩くならないかな。


「喜多村では充分、歓待されました。木っ端などと(さげす)むのはお門違いですぞ。ねえ、義兄上(あにうえ)

「…………」

 レニ様、こっちに振らないでください。喜多村を擁護(ようご)したいけど答えられません、そんなこと。


 分かりにくいけどヒセン様は、表情が険しくなったように感じる。


「何ですか、レイニ殿? 兄上とは?」


「キョウ殿に心服して義兄(あに)と呼んでいるまでのこと」

 なんで心服されたのかボクも不思議です。


「むむむっ……。キョウとやら、レイニ殿をどう籠絡(ろうらく)したのかは知らぬが、我は容易(たやす)くゆくとは思わぬようにな?」


「籠絡などと、滅相(めっそう)もありません。なぜかレニ様に懐かれまして──」

 答えているとレニ様がしなだれかかって来て左腕に絡みつく。


「な……」


「な?」

 ヒセン様の言葉にオウム返ししてしまう。それと離れてください、レニ様。左肩に乗ったカツラが重いです。


「な、なんとハレンチな! それにレニなどと呼んで! 身を(わきま)えよ!」

 ハレンチって。どこか倫理に(もと)るとこ、あった?


(おっしゃ)る意味が分かりません。レイニ様がレニと呼べと申されたので、そうしているのです」

「レイニ殿、離れませ! 我ら、ハノリ殿下に仕えるもの。()の子と不必要に触れ合うものではありませぬ。ふしだらですぞ」


「ええっ? 仲好(なかよ)しなら、これくらいは普通では?」

 え~、今度はふしだらですか? ふしだらとまでは言い過ぎです。

 レニ様とは、一方的に仲好くされてるだけですが。


「そうですぞ。(しとね)の上では、そなたとも肌を合わせたのでは、ありませぬか」


「それは……、必要に迫られ及んだだけのこと。ハノリ殿下にお子を授けんがため」

「なるほど、ヒセン殿とは肌が合わぬのは自明であったのだな」


「は?……それは、一体、どう言う……」

義兄上(あにうえ)とは合一(ユニゾン)を果たせましたぞ」


「なっ?!」

 また、「な」の一言を発したのを境にヒセン様が固まってしまった。


「レニ様、ヒセン様がフリーズしちゃってますけど」

「しばらくすれば正気に戻るであろう」


 良いんですかね~。まあ、険のある物言いばかり聞かされるよりは良いんだけど、正気に戻った時が怖い気がする~。


 今、考えても仕方ないけど、未来のボクに期待しとこう。


 車内は重苦しく話も弾まず、わずかに道の継目を越えるロードノイズだけの時間が過ぎる。


「ミヤビ様の母上・陛下の元と言うと聖殿になるのでしょうか?」

「うむ、そうであろうな」


「では、到着次第、謁見(えっけん)となるのでしょうか?」

「この深夜である。母上は夜更かしはせぬ。朝が早いからな。謁見とは行かず朝までは繰延べであろう」


 それってフラグってヤツでは? 呼び付けておいて朝まで延期とかしない気がします……。


「ミヤビ様は、可能な限り体調不良っぽくしてくださいね」

「むぅ? なぜだ」


「勿論、憐憫(れんびん)を誘いお(とが)めを緩めてもらうのです」

「そなた、策士だな」

「流石です、義兄上(あにうえ)


「あと、そうですね~、雲行きが(かんば)しくない時は、ここぞって所で──」

 お腹を(さす)って見せる。

「──体調不良の原因を曝露(ばくろ)するか、でしょうね~」

「う、うむ」

 ミヤビ様に合わせてレニ様も(うなづ)く。


「レニ様もミヤビ様に合わせてミヤビ様を(いたわ)ると効果抜群ですよ」

 ……たぶん、だけど。


「うむ、分かった」


「お二人で、やる際の目配せやサインなどを打ち合わせて置いてくださいね?」


「何を(はか)っておいでなのです?」

 おっと! 復活したヒセン様が、発言する。


「わっ! ビックリした。これ以上、ミヤビ様の体調が悪くならないためですよ。お母上のみならず、皆さんの得になること無いでしょう?」

「それは、そうじゃが……」

 ヒセン様の表情が曇る。


「本来ならば、ミヤビ──ハノリ殿下は、もうひと月は心安らかに過ごされるべきだったのです。それを無理やり車などで移動されて大事(おおごと)になれば誰が責任を取るのでしょうか?」

「そうは、ならぬであろう。今は殿下も平気のようではないか」


「ハノリ殿下、いえ、ミヤビ様、ヒセン様にぶっちゃけましょう」

「…………キョウ、そなたに委せる」

 重々しくミヤビ様が許してくれる。


「ヒセン様──」

「な、何じゃ?」

「──殿下はご懐妊(かいにん)あそばしました」

 ヒセン様に向き直り目力を込めて言う。


「な、何じゃと?!」


「──殿下の体調不良は、いわゆるツワリでございます」

「そんなバカな……」


「そう、お認め難いことが起こったのです! 殿下には安静が必要なのです! もし大事が、流産などと言う事態が起これば! 誰が責任を取れると言うのでしょう!?」

 目線を離さず、ゆっくりとヒセン様に迫り語威(ごい)を強めながら言う。


「わ、我は…………」


幾星霜(いくせいそう)、待ちに待ったお子が流れるなどとなれば! 殿下のみならず陛下の御心痛は、いかばかりか……。殿下をお預かりした木っ端(﹅﹅﹅)貴族たる喜多村は一族郎党!…………。嫡子(ちゃくし)・喜多村マキナの愚夫(ぐふ)たるわたくしは、言わずもがな!……、覚悟が出来ております!」

 懐刀を握り締め、帯から抜く素振りをする。

 哀れ、ヒセン様は白眼を()いて座席に倒れてしまった。


「そなた、エグいのぉ」

「ヒセン殿をやり込めるとは。さす義兄(あに)


「これもミヤビ様、()いては、お子のためです」

「キョウ……」

義兄上(あにうえ)……」

 お二人は感極まった様子だけど……。

 まあ、とばっちりで喜多村に類が及ばなければ良い。こっちには、マキナとお腹の子が居るんだもん。

 ミヤビ様のお子もそうだけどマキナの子も護らなきゃ! 絶対。

 はったりだろうが何だろうが、何でもするよ。


 車はするすると進んで行く。真っ直ぐ進むのが右へ左へと転回するのを感じていると少し上り坂に入り、門を(くぐ)ると車寄せに停まる。


「着きましたか?」

「うむ。奥殿(おくとの)か……さもありなん」


 ドアが開けられると外から手を差し出される。その手を取って車から降りる。

 ドアを開けてくれたドライバーが控え、介助してくれたのはフットマンらしき(ひと)が手を貸してくれていた。


「ヒセン殿、ヒセン殿。着きましたぞ」

「う~ん、う~ん……」


「レイニ、(わらわ)が起こす。先に降りるが良い」

「承知いたしました」

 次いでレニ様がフットマンの手を借り車から降りる。


「ヒセン、ヒセン! 起きぬか」

「はう…………、殿下。はあ~~。嫌な夢を見ていまし、た……」

 寝ぼけ眼で周囲を見回し、車外から見つめるボクを見てヒセン様は身を強張らせる。


「奥に着いた。降りよ」

「は、はい」


 やっと車を降りられたヒセン様がおかしい。ボクを避けて離れている。いやまあ、彼の距離感はそうなのかも知れないけど。


「では参ろうか。ヒセン、母上は居室であろう」

「……はい。おそらく」

「はい。陛下は居室でお待ちでございます」

 ヒセン様に続きフットマンの方が答える。いや、姿からすると執事とかかな。


 その(ひと)の先導で屋敷に入る。次いで、レニ様に脇を支えられたミヤビ様、反対にはヒセン様、護衛の人々。遅れてボクとその護衛が付いて行く。

 玄関フロアには少なからずメイドたちも集まり(こうべ)を垂れ迎えてくれている。


「護衛の皆様は、こちらでお待ちください」

 玄関から廊下に入った所の部屋のドアを開け執事さんが笹さんたちに言う。

 その中を(のぞ)くと、ソファーセットとサイドテーブル程度の殺風景で待機するためだけに設えられた部屋だ。


「我らは、キョウ様と分かれる訳には行きません」

 笹さんが決然と言い打木さんたちも、それに(なら)う。


「そう言われましても」

「矢内、(わらわ)が保証する。その者たちは、悪さはせぬ。このキョウが心配なだけだ。母上の私室の前までは通してもらえぬか?」


「そこまで殿下が仰るなら……」

 ミヤビ様の取り成しに執事・矢内さんが折れ、ミヤビ様たちの護衛・戸隠さんたちに目配せする。

 まあ、うちの護衛を警戒しろよ、って指示でしょうね?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ