188.怪しい検査
羞恥プレイで玩ばれた後、お尻にチクっとしてから数瞬、意識が途絶える。
いつもの慣れた感覚。目が覚めると終わってる……はずなんだけど……。
「……御館様も厄介なことを…………」
何やら独り言が聞こえる。……アヤメさんかな?
それにしても何も見えない。手足も拘束されていて動かせない。
どうなってる?
「アヤれしゃん?……」
「ん……んんん?! あちゃー、起きちゃった?」
「あの~、うこかしぇ、ないんらけろ?」
「あああ、もうちょっと眠っててね? プシュッとな──」
え……ええ?……。また注射された……。作業が長いんじゃないの?
「──薬の耐性が上がっちゃってる? 全く余計なこと、してくれたもんだ……」
次はスッキリと目覚める。それにつれ速やかにアヤメさんが拘束を解いてくれる。
「あの~、途中で目覚めたようなんですけど?」
「ゴメンゴメン。ちょっと調整に手間取って」
「調整?って何です? 搾精ですよね?」
「あ~、うん。搾精のついでにナノマッスィーンの調整を、少し」
その巻き舌は、もういいから。搾精台から体を起こしてワンピースを着る。
「それで調整って何?」
「筋肉パラメータを上げて運動能力を向上、寛容度と能天気度も少し上げて~──」
「寛容度は良いとして能天気度、って何さ?」
「聴いちゃう? それ聴いちゃう?」
なんかイラッとする。寛容さは上がってないよ、たぶん。
拉致ののちに聴こうとして聴けなかったんだけどボクの体、どうなってるの?
「これから色々と女を経験してキョウちゃんが壊れないように。あと、また不測の事態が起こっても対応できるように」
「色々、経験って言ってもマキナ姉妹だけだよね~?」
「そうかな~? ミヤビ様とか警護の皆とか……やっちゃったよね」
「うっ。それは……」
もうあんな事、起こらないと思う……んだけど……。あの時、ウイさんを慰めるためにゲームって聞いて安易に受け、気づいたら警護のみんなと……。
直接的な行為は自覚がないけど結果は淫らなパーティー、乱ナントカをやらかしてたんだな……。今さらだけど。
まあ、それは置いといて、どうして警護の件までアヤメさんは知ってるんだ。
「妊娠してお腹が大きくなるとマキナ姉の他、みんな相手してくれなくてもて余すよ、性欲」
「……そんなことは」
「精子・精漿を増産するようバッチリ繁殖パラメータも、上がってるから~」
「なんて事してくれてるのさ!」
「だって、御館様の命令なんだもん」
「なんだもん、じゃないよ。元凶はサキちゃんか! 文句、言ってやる!」
「言っても無駄だよ? きっと。野に放ったらキョウちゃん、襲われまくって気が触れるかもしれないのを防ぐ対策もあるんだから」
「そうならないための警護でしょう?」
「そうかな~? 警護に世話になればなるほど、そちらの面倒もみないといけないよ、ね?」
「うっ……」
「うちのメイドたちや下働きが薄給で仕えてくれてるのは何故だと思う?」
「それは……」
「喜多村家に広めよう、竿しま──ムグッ」
「それは言っちゃダメ」
慌ててアヤメさんの口を塞ぐ。下品だよ?
でも、そうか~。身の回りに女の人ばっかりなんだから許容しないといけないか……。
「まあ、我慢は良くないよ。下半身が爆発する前に誰かに相談して」
「爆発?……そんな……冗談、だよね?」
「喜多村のナノマッスィーンは優秀だから。…………」
「巻き舌はいいから。いつから、その碌でもないモノにボクは侵されてたの?」
そう聴いた途端、アヤメさんはそっぽを向く。
「さあ、館に帰ろうかな~?」
「ちょっと、聴いてるんだけど?」
「急いで?何かやるんじゃなかったの?」
「そうだった~!」
くそ、誤魔化された。ナノマシーンの投与は、キタムラGHに避難した時が怪しい。
でも健康状態は、それより前と変わらなかったと思う。
もっと前から……マキナとの婚約以前にヤられてたと見るべき。いつからだろう……。思い至らない。
疑心暗鬼を抱えながら母屋に戻る。
急いで三階の部屋に戻ると応接室に仁王立ちのレニ様が待ち構えてた。手拭いで頬冠し座敷ほうきを逆さに持っている。
持ってるのが薙刀じゃなくて良かったよ。それにしても時代掛かり過ぎじゃない?
その後ろのソファーには、マキナと共に非難とも同情とも取れない複雑な顔の幼女~ズが座って迎えてくれている。
あちゃー、一番避けたかった状況になっちゃってる。どうしてくれるのアヤメさん。
当の本人はボクを送った後、病院にとって返しちゃったんだよね……。アヤメさんの所為に出来ないじゃないか。
「レニ様……本日は御日柄も良く──」
「良くありませぬ、義兄上。相変わらずミヤビ様の具合が芳しくないと言うに本日は何をしておいでか?」
抑揚を抑え淡々とした物言いで背後に般若を幻視しそうです。
レニ様の陰で「そうだ~」っと言い出し兼ねない気勢で幼女~ズが拳を突き挙げている。
「えっと、あの……その……顔を見せんとして居りましたが、些事に追われ難渋し、参ること叶わず、何とも申し訳のほども御座いません」
「そうですか……。何やら街に出て居られたとか」
「は、はい……義姉妹を見送りに行っておりました」
「それにしては時間が掛かりすぎでは、ありませぬか?」
「そ、それは……そう、遠路ゆえ行き帰り道が混んでおり帰還が遅れ──」
「レストランとやらで馳走を食したとか? えらく遠回りしたものであります、ね~?」
ぐっ……バレてる~。レニ様の後ろでマキナが手を合わせて謝ってる。
「ちょっと……マキナさんの職場訪問も兼ねて、ですね、どんな所か見て置いたほうが良い、かな~、なんて……」
「それでどうしてアルバイトなどと言うことに?」
そこまで話しちゃったの~? どうするの収拾……。




