表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

184/184

184.記念撮影


「ダブルピースして?」

「そうそう」

「じゃあ、ピース……っと」

 二人目の店員さんの(ひざ)に乗り、ボクの頭に店員さんが頭を乗せダブルピースして撮影(さつえい)。マキナの(ほほ)がぴくぴくしてる。


「こ、こう?」

「そうそう」

「じゃ、じゃあ、行きますよ! っと」

 三人目は、店員の胸に顔を(うず)めて撮影する。マキナの不機嫌に拍車(はくしゃ)がかかる。


「ほっぺに?」

「そうそう」

「じゃあ、()ります、よっと!」

 四人目には店員さんの頬に(くちびる)をよせキスする振りのポーズを取る。本当は、ほっぺにキスしてだったけど、最高潮のイラつきでマキナが爆発しそうで店員さんはトーンダウン、キスの振りになる。


「はいはい、皆さん仕事に戻って」

「「「は~い」」」

 名残(なごり)()しそうな店員さんを笹さんが追い払う。


「キョウ、あとで話がある」

「ウッ……、分かった」

「何で見ず知らずの店員にあそこまでサービスするんです」

「そうですよ。私たちだって、そこまで……」

 気更来(きさらぎ)歩鳥(ほとり)の二人が文句をつける。


「だってさ~、マキナがお世話になるんだから無碍(むげ)にはできないでしょう」

「さすがはキョウ様」

 打木さんが手放しで()めてくれる。若干(じゃっかん)マキナの機嫌が直った気がする。


「それは、そうかも知れませんが……」

 気更来(きさらぎ)さんはまだ納得できないみたい。


「お待たせしました! あなたたち、仕事に戻りなさい」

 いいところに責任者の人が返ってくる。


「は~い」

「分かってますって」

 まだ店員さん、残ってたんだ。


「さあさあ、こちらから選んでください」

 責任者の──牧村さんがパイプイスの上に買い物カゴを置く。


「うわ~、いっぱいあるね」

 中にはドロワーズとかがいっぱい()れてある。ありったけ持って来てくれてる。


「試着なさいますか?」

「いえ、試着はいいです」

「そう……ですか……」

 牧村さんが気落ちする。そんなに落胆(らくたん)しなくても。


「これはいい。これはダメ……短パンとブルマは顰蹙(ひんしゅく)を買うかな~……」

 選んだら半分もない。四、五着あれば使い回しできるしね。


「これで精算、お願いします」

「そう、ですか……。不用な商品はそのままで結構です」

 だから、何で落胆するの? 誰だって差し出されたものをすべて穿()くワケじゃないでしょう?


「一番近いレジを案内してください」

「こちらです」

「待て。私が買ってくる」

 牧村さんに付いて行こうとするのをマキナが止める。


「え~、悪いよ」

「気にするな」

 まあ、ボクが払っても財布は一緒なんだけど。売り場にボクが出ていくのはリスクが上がるからなんだろう。

 カゴを抱えてマキナが牧村さんのあとを付いていく。


「笹さん、メガネの使い方は慣れました?」

「まあ、ほどほどには」

「それより、私たちとも記念撮影しましょう」

「そうです。こんな機会なかなかないです」

「それって歩鳥(ほとり)さんと気更来(きさらぎ)さんが思ってるだけだよね?」

 同意を求めて笹・打木さんの二人を見たら何か悩んでる。


「笹さんたちも撮りたいの?」

 同意の言葉を発しも(うなず)きもしないけど二人で顔を見合わせている……。


「分かった。今は、羽衣さんも斎木(さいき)さんも居ないから家に帰ってからね?」

「本当ですか?」

「やった~!」

 そんなに写真撮りたいの? 確かにマキナとの写真はボクも撮りたいけど。


「買ってきたぞ」

「うん、ありがとう」

「あの~……それで」

「写真ですね。いいですよ」

 マキナが買って来てくれ牧村さんがおずおず聞いてくる。用事が完了するのを待ってたんですから了承する。


「それでは──」

 おとなしめのポーズを牧村さんは注文した。抱き合って顔をよせるもの。またマキナが少し不機嫌に……あれ?



 約束の撮影を終わらせるとバックヤードを移動して職員用エレベーターで一階に下りる。


「お前は、まったく」

「さ、さあ早く帰ろ?」

 なかなか機嫌が直らないマキナを(なだ)める。というより意識を()らす。


「笹さんもメガネの(あつか)いが上手くなったよね?」

「いや、まだまだだろう」

「そんなことないよね……気更来(きさらぎ)さん」

「えっ?……はあ、そうです、ね?」

「ほら~」

「は~~、まあ、そういうことにしておくか」


 職員区画を通り抜け守衛室で入館証を返す。


「──またの来訪をお待ちしております」

「はい、また今度」

「では、また」


 わざわざ部屋から出てきた守衛さんと別れ駐車場のワゴン車へ。


「上手くなったと言うなら笹に運転してもらうか?」

「え、いや、それは……。帰りは運転するってマキナは言ったよね」

「冗談だ」

「むう~」


 みんな乗り込み職員駐車場から道路に出ると(いえ)へ向け走りだす。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ