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181.バイトのお誘い


「うぐっ……もう食べられない……」

「ほとんど食べてるじゃないか」

「まあそうだけど……。マキナも食べられて良かったね?」

「まあな」


 味が物足りないとか言ってスダチやレモンを追加、リゾットやお(かゆ)(しぼ)りかけてマキナは食べてた。ともかく食べられて良かったよ。


「あのえずき(﹅﹅﹅)ってアレだよな」

「おそらく、アレだな」

「なに? アレって」

 こそこそ話す歩鳥(ほとり)さんと気更来(きさらぎ)さんに()く。


「あ~、いや、まだ話されないので私からは何とも」

「アレって言えばアレです。伝説上の」

「お前たち、マキナ様が認めないものを軽々しく話すんじゃない」

 気更来(きさらぎ)歩鳥(ほとり)の話を笹さんが止めてしまう。


「何なのさ~、アレってマキナに関係してるの?」

「マキナ様が話す機会までお待ちください」

「羽衣や斎木(さいき)なんかキョウ様相手なら✕✕(チョメチョメ)できるって精漿(せいしょう)注射してたんですよ」

あの(﹅﹅)あとも✕✕(チョメチョメ)したって注射つづけてるんですよ。笑っちゃいますよ……ね」

 一気に話のトーンが落ちる。何だと思ったら(マキナ)から声なき圧力がかかってた。


「何かマキナの話みたいだけど……」

「気にするな。お前は買い物リストでも考えてろ」

「はい……」

 何かマキナこわ。アレとか✕✕(チョメチョメ)が何なのか聞けなくなったよ。



 コーヒーで食休みしているとスーツを着た年嵩(としかさ)の女性がウエイトレスを連れテーブルにやって来る。


「マキナ様ですね。店長を務めます井原(いはら)と申します」

「あ~これはどうも。わざわざ恐縮(きょうしゅく)です」

 マキナがテーブルから外れて立ち上がり店長さんを迎える。ボクも(あわ)ててマキナに(なら)いブースから出てマキナに並ぶ。


「モール勤めになられるとか」

「はい。近日、正式な場でご挨拶(あいさつ)できるかと思います」

「それで……」店長さんはボクに視線を向ける。


「ん? あ~。これは夫のキョウです」

「はじめまして、キョウと申します。マキナがお世話になります」

「キョウ様、はじめまして。キョウ様もこちらでお勤めになるとか……。是非ともレストランをよろしくお願いいたします」


「いや、まだ正式に決まってませんが」

「キョウちゃ──キョウ様、一緒にウエイトレスやりましょ」

「キョウちゃ──様が来てくれたら楽しいです」

「いつから来れますか?」

「そんなこと言われても」

「お前たち、止さないか」って群がるウエイトレスたちを店長さんが止める。


「まだ、決定していませんので、何とも……。二、三日中に契約してからです」

「あ~そうそう」

 契約とかがまだだったよ。


「そう、ですか……」

「じゃ、じゃあ写真、一緒に()りましょう」

「それいい! 撮りましょ撮りましょ」

「は、はあ~」

「おい、お前たち失礼だぞ」

 一応、店長の井原さんは止めてくれるけど。

 写っていいのかマキナを(うかが)う。しぶしぶマキナが(うなず)く。「それじゃあ」と了承する。


「やった~」

「「こっちこっち」」

「え、えっ? ちょっとぉ~」

 ウエイトレスのお姉さんたちに引っ張られて奥へ進む。スタッフルームのドアをくぐると休憩(きゅうけい)室と更衣室がある。

 その更衣室に連れ込まれる。いいのかな~?


「Mかな~Sかな~?」

「あの~一体なにを?」

 空きロッカーからラップされた衣装を取り出し見比べている。


「ウエイターの制服。あ~Mかな?」

 ウエイターの制服とやらの(みごろ)を体に当てて吟味(ぎんみ)してる。


「あの、もしかしてソレに着替えろ、と?」

「そうそう。Sは……ちょ~っと小さい、か?」

 もう一人も別の制服を当ててくる。制服ってさ~エプロンドレスっていうか、メイド服なんですけど~?

 そんな恰好じゃお給仕(きゅうじ)しかできない……ああ、お給仕で合ってるのか。


「ん~~むしろLを着てもらう?」

「面倒だから全部着てもらう?」

「「それいい!」」

 いや、よくないよ。


「じゃあ、まず無難なMで」

 ってMサイズだという制服(メイド服)を渡される。


「あの~出ていってもらえます?」

「一人で着替えられる?」

「着替えられますよ。それくらい」

「そう。じゃあ外にいるから手伝いが要るなら言って? 一人じゃ着られないんだけど……」

「何か聞捨てならない言葉が聴こえましたけど?」

「気にしない気にしない」

 気にするよ。


「さて……」

 パッケージから出して(なが)めてみる。広げて前(みごろ)、後(みごろ)を見て絶句。背中がぱっくり開いてるじゃん。それに前はエプロンで隠れるけど後ろはお尻が見えるくらい超~ミニじゃん。


 こんなの誰も着ないよ? なに考えてんのさ。

 (だま)された……こんなの着るなら時給一万でも安いわ!

 苦悶(くもん)してる間にドアからノックがする。


「どう? 着られそう?」

「着れません。ちょっとマキナを呼んできてもらえます?」

「え~~、ここはスタッフオンリーだから部外者は呼べません」

 何だ、その()理屈(りくつ)は。


「あの、マキナも社員になるんですけど?」

「残念。まだ正式に辞令(じれい)も出てないから社員じゃありませ~ん」

「そう言われるとボクもバイトじゃないんですけど?」

「バイトは準社員だし、今は採用試験みたいなものだから」

(こい)はおとなしく俎板(まないた)()ればいいんですよ」

「…………」

 ぐぬぬぬぬ~、(だま)されたばかりか()められていたとは。(はな)から着せられる運命だったのね。



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