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155/184

155.受け渡し(出荷とも言う)


『エ・ロータリア政府専用機に荷物を届けに来た』

『は、はい。エ・ロータリアの方ですか? パスポートを拝見(はいけん)します』

『言葉が通じるようでよかった』

『……ああ』


 どこだろう。出国カウンター……じゃないよな。

 新しい女性の声が係の人だろうか?


『はい、確認できました。外交官の方ですね。荷物をお預かりします』

『できれば直接、渡したいんだ』

『直接、ですか? 分かりました。係を呼びます』

『専用機に連絡とれないだろうか?』

『少々お待ちください……「──もしもし~?」』


 係の人が言葉を変えてしゃべりだす。


「ロータリア機の人に連絡取れない? 荷物を直接渡したいって面倒な()が来てんのよ──」


 おお、くぐもって聞こえにくいけど不双(ふそう)語だ。お姉さんは係で間違いない。荷物ってボクだよな。

 何とか知らせられないかな……無理だよな……。体が動かないし。


「──知らないわよ。とにかく、連絡取って誰か寄越して? 強面(こわもて)でにらみ続けられる身にもなって、なる早で頼むわ」

『手間取ってるか?』

『不測事態だからまごついてるだけだろう』


 なる早はやめて。ゆっくりで良いよ~。そのうち薬が切れ身体が動くようになるかも知れないし。

 でも、頭は働く矛盾(むじゅん)が理解不能。誰かがボクの恐怖感を(あお)ってる、とか?


 そんなことして何になるんだ。第一、誰かって誰だよ。いや待て、これが明晰(めいせき)()って可能性もあるな。


 ひとりファッションショー(羞恥(しゅうち)プレー)で疲弊(ひへい)した精神が悪夢を見せている、とか?


 いや、ないな。どれだけ被虐(ひぎゃく)性があるんだ。ボク、Mじゃない、はず。

 でも、一番イヤなことを夢で見るとも言うし、最悪に備えて正常性を保つとか?


「お待たせ、マーちゃん」

「マーちゃんはやめて。ありがとう」

『「案内、ありがとう」──受け取りに来た。ブツは無事か?』

『おそらく。追加(﹅﹅)()つ前は元気いっぱいで手を焼いた』

『そうか……ここで確認するわけにはいかないしな』

『では、あとは頼む』

『もちろんだ。預かろう』

『確かに渡した。それじゃ』

『それじゃあ』


 お姉さんはマーちゃんさんか。もう一人は別の女性を連れてきた?

 あ~出荷されちゃう……。あ、動きだした。


『「ありがとう」』

「いえ、どういたしまして。……はあ」

『おい……どこでブツを確認する?』

『まあ、機に戻る途中の物陰だな』


 ん? 今度のやつは荒っぽさがマシマシか? なま物は丁寧(ていねい)(あつか)え。


『ここらで良いか?』

『そうだな』

『開けるぞ』

『ああ……』


 相変わらず荒っぽい。どこかに転ばされた? カチッと鍵で開ける音。もう到着? なわけないよな~。


『……脈がない。おい、脈がないぞ?』

『そんな……呼吸もしていないようだ……』

『まずいぞ。どうする?……』


 えっ、どー言うこと? ボク生きてるよ? 待って、本当に走馬灯的な夢を見てるんじゃないよね?


『……いや、大丈夫のようだ。浅いが呼吸はしている。ゆっくりだが脈動もしてる』

『そ、そうか……ああ、確かに。驚かすなよ』

『顔は……アイマスクしていると分からん』

(ひとみ)の色も違いない、な』


 よかった生きてて……って、まぶしぃ! 無理にまぶたを開けられる。あ~確かに隣国(りんごく)の人だ。ここは……空港施設のどこか?


『気持ち悪。おい、眼球が動いてる』

『まあな、夢でも見てるんだろう』

『いや、麻酔(ますい)が効いていて夢って見るか?』

『さあ、知らんな。瞳の色が同じで瞳孔(どうこう)反射もある。もう確認は充分だろう』

『あ、ああ。そうなんだが……』


 また、アイマスクされちゃう。キャリーのフタも閉められる。


『よし、急ごう』

『そうだな。あの方が癇癪(かんしゃく)を起こさぬうちに』


 身体を起こされ移動し始める。ついに飛行機に乗せられる?

 早歩き移動が続くとドアを通る? そこからまた移動。ゴトゴト揺れる。屋内じゃなく外に出たのか。

 駐機場なの? もう終わりだ~。


 って思ったけど唐突(とうとつ)に止まる。


「少しお待ちいただけますか?『ちょっと待ってください』」

『何だ、退()け』


 何だ、またトラブル? 大歓迎だけど、揺らされると気分悪くなるので止めてくれる? 通じないだろうけど……。



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