表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/184

153.絶賛、拉致られ中?


「ン?……ンン?……」

 あれ?……真っ暗だ……ど~なってんの?

 体の自由も()かない……(しば)られてる?

 この! この! 回りを()ったり頭を振って周囲にぶつけて探ってみたり……。


 痛くないけど頑丈(がんじょう)で破れそうにない。何かの()れ物の中だな~。


『おい、もう目を覚ましたぞ』

『量を間違ったんじゃないか?』

『成人女性が半日は眠ってる量にしたはずだ』

『チッ……追加で()っとくか?』


『そうだな……いや、待て。裁可を仰ごう。過剰摂取(オーバードーズ)廃人(はいじん)にしてしまっては俺たちの首が飛ぶ』

『そ、それもそうだな……』


 う~ん? 話し声は隣国(りんごく)の言葉か? イヤなこと、思い出した……。また、アイツらが暗躍(あんやく)してんの?


 てことは……アンナさん、まだ(あきら)めてないの?……。国外追放とかされてないのかよ~。


 車で移動してるようだけど、眠ってる間にどれだけモールから離れたろう……。

 どうすればいい? 縛られてちゃ逃げられない……。

 拘束を解かれるまでは、おとなしくしてるしかないか……


 くそ~、ボクを捕まえて何が楽しいんだ?



『ダメだ。必要以上に薬は使うな、だとよ』

『こっちの気も知らずに。人前でキャリーバッグがゴトゴトいったら怪しまれるってのに』

『まあ、コンコースを通りすぎる間くらいなら誤魔化(ごまか)せるだろう』



『やっと空港が見えてきたな。ひと息つける』

『おいおい、渋滞(じゅうたい)してる……それほど入場に並ぶのか?』

『……さあ、分からん。様子を見るしかあるまい』

『遅れると大目玉を食らうぞ』


 動きが(ゆる)くなった……渋滞? チャンスかも……。

 この! この! 壁を、げしげし(﹅﹅﹅﹅)蹴る。


『野郎、また蹴り始めた。静かにしろ!』

『……そのうち疲れるさ』

『そう言うがな~。やかましくて仕方ないぞ』

『狭いところで動き回れば酸欠になって静かになる』


『それって……死んだり、しないよな?』

『そこまでは、私たちも感知できんさ』

『…………』

『気にするな。運べと命令されただけだ』


 はあはあ、くっそー。近くに誰か、人はいないのか。

 機密(きみつ)性の高い車か? 何にしても動きすぎて息苦しい。


 ……酸欠で死なない、よね? いや、どれくらい閉じ込められてるか分からないんだけど……人を閉じ込めるんだから呼吸できるだけのすき間はあるんだろう。


 みんな、心配してるだろうな~。愛の巣を壊され、思い出の品を奪われ、遠い地に避難(ひなん)して、転校する羽目に()って、おまけに拉致(らち)されるなんて。


 何で、こんな目に……。


 アンナ、(ゆる)すまじ!


『やっと、静かになったな……』

『そうだな……』

『『…………』』


『おいおいおい! 前で検問、やってないか?』

『えっ?! ちょ、ちょっと見てくる』


 車のドアが開きバフッと閉まる音と振動がする。

 目的地に着いたのか? しかし、しばらくしてドアの開閉を音と振動で感じる。


『まずい。車内検査してるぞ』

『何! う~~、上の指示を仰いでくれ』

『分かった』

『ああ、それから薬を使うとも。検査時に物音を立てられたんじゃ(かな)わない』

『そうだな』


 ん~? 着いたんじゃないのか? 降りる素振りもないようだし……。もしかして、トラブル? チャンスかも。

 また、壁を蹴る、蹴る、蹴る。縁起でもないけど最後の力を振り絞り。


『ま~た、始めやがって……』

『許可が下りた。きつ~いの()ってやるわw』

『おいおい、ほどほどに、なw?』


 んん? 足音が近づいてくる……。開けてみろ。渾身(こんしん)の一撃をくれてやる!


『ひゃっひゃっひゃあ~。お注射(ちゅうしゃ)の時間だよ~w』

『くっくっくっ……。笑わせるなよ』


 カチャっといってフタ? が開いたらしい。女の声が明瞭(めいりょう)に聴こえる。でも、どちらに居るか分からない……クソ!


 仕方ない。暴れるだけ暴れてやる!


『おいおい、おとなしくしろ』


 この! この! 肩を(つか)まれた。体はどこにある? この! この!


(って)~。蹴られた~! このぉ!』


 うぐっ! 横っ腹を(なぐ)られた? ヤツは上か~? 脚を引きつけて~~のっ!


『おごっ! こいつ、頭きたっ!』


 あ~、またチクッとした……注射されちゃった……。せっかく、蹴りがクリーンヒットした……のに……。



 ……あれ? 


 あれ? あれ? 眠くならない……。いや、ぼお~っとはしてるんだけど意識はある。


 あ~、でも体は動かないな~。ん~~何でだ??


『大丈夫か?』

『なんともない。一日寝てるように倍量、射ってやったぜ』

『おいおい、大丈夫か?』

『さあ、知らん。ともかく、検問をやり過ごせば終わりだ』

『ああ……』



「すみません。検問です。車内、見せてもらっていいですか~?」

『何て言った?』

『さあ、よく分からんが「はい、はい」「どうぞ」って言ってりゃ大丈夫だ』

「外人さんか~。分かります? 車、見せて?」

「ハイ、ドウゾ」


 何だよ~、検問の渋滞だったのか~! 検査の時まで、おとなしくしてりゃ良かった~、くそっ!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ