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152.キョウがいない……


 ◆


「いません……」

「こちらも同じく」

「見つかりません」

「やはり拉致(らち)されたと見るべきか……」

「マキナ様、いったいどうすれば……」


 護衛たちにバックヤードや店内、周囲を探索させるも手がかりは脱ぎ捨てられた黒服のみ。

「今は、お館様の返事を待とう……」

 大っぴらに動くには、上の指示を仰ぐしかない。


「車両で(さら)われたとすると周囲の監視カメラから拉致(らち)車両を割り出し……」

「その車両をNシステムで追跡するしかないか?……」


 護衛たちが言うが、それも万能ではない。後手ごてになるし、車両の乗り換えや、ナンバーを変えられると追跡が途絶える。


「せめて拉致犯の手がかりがあれば……」

「マキナ様、放置された黒服を調べれば何か分からないでしょうか?」

「遺留DNAで持ち主が分かっても(やと)われの可能性もあるしな……」

 何よりそんな時間的猶予(ゆうよ)はない。


「キョウは、もう帰ってこないの?……」

「イヤだ。キョウを見つけて?」

「今頃、ぐへへされてる……って場合じゃなかった」

「タマちゃん……()謹慎(きんしん)

「ゴメン……」


「マキナ様……」

「分かってる。分かってるが……」

 今は、指示を待つしか……。


『ワシじゃ。根回しは済んだ。フルアクセスを許可する』

「は、はい」

 笹たちが通信を受けたようだ。


『必ず、キョウを取り戻せ。もし……』

「もし?」

『もし、奪還(だっかん)(かな)わぬならば……抹殺(まっさつ)せよ……』

「そんな~」

「どうした?」

 悲愴(ひそう)(ただよ)う応答に、つい口を(はさ)んでしまう。


『マキナ様たちには、どう申し訳すれば?……』

『それは……ワシがあとで(なだ)める。忘れるな、キョウには……キョウは、表に出せぬ秘密の(かたまり)じゃ』

「了解、しました……。みんな、ワゴンと装甲車に」


 笹は、通信を終える。すぐに対応を聞きたいところだが、まずは指示に従う。


 護衛たちは、一台のワゴンに乗り込む。上はどう判断されたかに耳を傾け見守る。


「フルアクセスの許可が下りました。気更来(きさらぎ)、頼む。私では不慣れで役に立たん」

「分かった……」

「マキナ様たちは、装甲車で屋敷にお戻りください。ご学友は五条様、お願いします」

「ああ、かまわん。元よりその心算(つもり)だったしな」

 五条ツバサ先生が答える。


「いや、オレも行く。拐ったヤツに一矢(いっし)報いねば腹の虫が治まらん」

「しかし、直接対峙(たいじ)するとなると非常に危険です」

「承知の上だ」


 笹は、オレの同行をお館様に報告すると、仕方ないと了承を受け、オレの護衛を言い渡される。


「見つけた! 湖西に移動するワゴン車、乗り換えもナンバーも変えていない」

 気更来(きさらぎ)が見つけたと報告する。


「よし、行くぞ!」

「私も付いて行く。ケガしてたら医療関係者がいると便利だよ」

 アヤメまで付いてくると言い出す……。


「私は……何も役立てないかも知れないけど……連れていって」

 カエデもか。


「うちは……」

 ツバキは、苦々しく思っているが役立てないと考えているのか、その先の言葉を継げないでいる。


「ツバキ様以下は、お戻りください。必ず、キョウ様を取り返します! 五条様はご学友を。みんな、情報リンクしてくれ」

「「お願い」」

「──キョウちゃんをお願い」

「──頼みます」

「では、行ってきます」

 ツバキたちを残しワゴン車二台で出発する。



「ヤツラ、西へ行ってどうするんだ?」

「分からない」

「街中に隠れて目をくらませ、別の車にするとか?」

「待て。左折して連絡橋に入るぞ」

 追尾している気更来(きさらぎ)が知らせる。


「湖南に逃げるか」

「空港かも?」

「空港じゃあ、どうやって荷物検査を──」

「隣国か?!」

 (ひらめ)いたのか笹が叫ぶ。


「確かに、それならば、検査はされない」

 そうだ。キョウに執心(しゅうしん)するヤツがいたじゃないか。しかも襲撃(しゅうげき)証拠(しょうこ)が無く、手出しできず野放しのままだ。


羽衣(はごろも)、空港に隣国の航空機は駐機してるか調べて──」

「もう、やってる……見つけた。()まってる。四日前からだ。離陸させないよう申請する」

「──上出来。何とか当該(とうがい)車両に追いつけずとも遅らせられれば……」

 コンビを組んでいるだけあって気更来(きさらぎ)と羽衣は息が合ってる。


「──そうか、その手があった」

 羽衣は、妙案が浮かんだようだ。入場ゲートを通過させるのに遅延処理させるよう介入すると言う。


 危険物持ち込みの検査をゲート管理者に追加したと報告する。


 待ってろよ、必ずキョウを取り戻す。



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