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151/184

151.一人ファッションショー、ふたたび


 サガラの言うとおり3番のワンピースを持ってコーナーに隠れる。


「さあ、次は何を着てもらいましょう?」

 外ではもう、サガラが次の着替え候補を(つの)ってる。


「8番のエプロンドレス」

「1番の白いワンピース」

 なんか続々と着替えが決まっていってる。どれだけ着せるつもりだよ。


「おや? 着替え終わりましたか? キョウくん、皆さんの前へ、どうぞ!」

 カーテンのすき間からステージの方を(うかが)うとサガラが手招(てまね)きする。まあ、着替えたから出ては行けるんだけど。


「さあさあ、こちらへ。……素晴らしい。ヒマワリ畑に現れた天使のようです」

 くっ、歯の浮くせりふを……。悪い気はしない。しないけど、ハデな服は気恥ずかしい。


「くるりと一回転しましょうか?」

「一回転?」

「そうそう」


 言われるとおり、くるりと一回転する。でも、緊張で(ひざ)が笑っていて上手く回れない。ふらふらと倒れそうな独楽(コマ)みたいになる。


「「「うおおおおっ!」」」

「ひっ!」

 アクションすると一々、大歓声が上がり、ますます下半身が強張る。


「次は、こちら、8番に着替えてください」

 8番だと言うエプロンドレスを渡される。


「ちょっと、いくつ着替えさせるのさ?」

 どれくらい着せられるんだか知っておきたいんだけど。


「そうですね。四十着くらい用意されてるようですので、半分はやっていただかないと──」

 スポンサーが納得しない、なんて言う。


 う~ん、モールの社長、レンカ義叔母(おば)様も()んでる、って言うか主体なのか?

 先日、損害を与えた負い目もあるし頑張るか……。損害は直接、ボクのせいじゃないんだけど。


「後ろ姿も可愛いですね~♡」

「くっ……」

 ドレスで後ろをカバーしてコーナーへ逃げる。


 生地が濃い青だけど、ふんだんに白いフリルで飾られた白ゴスのドレスだった。

 高校生にはちょっと(はず)いフォルムだ。

 メイドさんが着ている簡素なものなら普段使いにできるのに……。


「やや! どこぞのお坊ちゃん、淑男(しゅくなん)の登場ですよ~!」

「「「うおおおおっ!」」」

 いや~、やめて~。


「素晴らしい! さあ、こちらの日傘をどうぞ?」

 ステージ中央に進み出るとサガラが白い日傘を渡してくれる。着替えたのは、オフショルダーの純白のワンピースだからね。確かに、これから日射しが強くなると日傘が欲しくなる。


「こちらはラフな感じが良い!」

「「「う~~ん?」」」

 オフショルダーのブラウスにデニムの短パンに着替えてステージに出る。サガラは()すが、オーディエンスに(ひび)かなかった。


 いつからかマキナ姉妹やタンポポちゃんたち、護衛たちまで観衆に交じってリクエストしていた。

 何やかんや、二十着は着替えたと思うんだけど……。着替えの衣装は、少なくなるとどんどん補充されて、いくつ着替えたか分からなくなった。

 時間も一時間はゆうに超えてるんじゃないかな? 一人でこなすには無理がある。そろそろ、終わりにして欲しい。


「それでは、最後です。こちらに着替えてください」

 ラッピングされた衣装を手渡される。

 こんなのリクエストにあったかな? 着替えコーナーに入って包装を解くとスラックスの制服だった。

 これって、もしかして通う高校の制服?


「「「えっ?」」」

「皆さんご存じの某|高校の制服です」

「──まさか……」

「──うそ……」

「──おいおい」

 カーテンからステージに出ると観衆の困惑とサガラの紹介が交差する。


「我々は独自情報をつかみました。近々、キョウくんは蒼湖(おうみ)の高校に編入されるそうですよ? こちらの高校になるかは分かりませんが」

「「「ウオオオオオオオッ!!」」」

「「「やったー!」」」

 ボクが高校に編入すると聞くや、会場中が歓声に包まれる。サガラの後半、どこの高校になるのか分からないと言う説明はかき消される。


 歓声に圧倒される中、サガラがファッションショーの終わりを告げ会釈(えしゃく)する。もうフロアの人間には聞こえていない。ボクもサガラに合わせてお辞儀(じぎ)し、後ろの出入口から退場する。終わった~!


「こちらへ、どうぞ」

「あ、はい」

 見知らぬ黒服に導かれ仕切りの通路を抜けていく。後ろにも黒服のガードが付いてくる。バックヤードに戻るや否や、右肩に何かが刺さったようにチクッと感じる。


 何だろうと肩を見ると、後ろの黒服が射薬(しゃやく)(じゅう)を当てていた。


「何?」と問う間に気を失った。



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