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149.蒼湖の学校事情


壁内(へきない)学園ってどんなところ?」

 店まで行く道すがらマキナに()く。


「ああ、喜多村で預かっている男子が通う、と言うより寄宿学校だな」

「はあ~、だから(かこ)ってるって非難されてるの?」

「まあ、そんなところだ。元来は危害防止に預かっていたんだが、壁外(そと)に出るものが居なくてな、見合いを勧めるも、中々成婚に(いた)らない。ゆえに喜多村(うち)が囲って外に出さないんだと何事につけ槍玉に上がる」


「それじゃあ、追い出すワケにもいかないんだね……」

婚姻(こんいん)すれば保護を受けられるが、身一つでは生活もままならない」


 すぐに貴金属店に着いて話をやめる。店に来たのはアヤメさんの指環(ゆびわ)にチェーンをつけてネックレスにするため。


「あのさ~」

 店内の商談スペースにあるソファーでカエデさんが()いてくる。タンポポちゃんたちは、ショーケースの宝石を(なが)めてる。


「何ですか?」

「話だと転校しちゃうんだね?」

「そうみたいです」

「私もキョウちゃんの学校に転校、しようかな~って」


「もう卒業でしょ? 誠臨(せいりん)でいいじゃないですか?」

「卒業まで待てないよ」

「それに仕事はどうするんです?」

「仕事は、どこか喜多村関連に配置代えしてもらえば何とかなる」


「そこまで覚悟があるなら……。でも、たった三ヶ月ですよ?」

「構わない」


 カエデさんは意志が(かた)いようだ。卒業間近で転校しなくてもいいと思うんだけど。


「キョウちゃん、私も何とか親を説得してくるよ」

「うん。親なんてチョロい」

 タマちゃんたちも話に乗って転校に意欲を示す。


「はあ~……だったら説得してから、こっちに来ればよかったじゃん。そうすれば、問題にならなかったでしょうに」

「う″っ……夜だったから」

「思い立ったが吉日って言うから、つい」


「そう言う時は、時間を置いて考え直そう? タマちゃんは、何かにつけて突っ走りすぎる傾向があるよ?」

「そんな、こと、ないよ?」

「あ~、私もだけどそう言われるとタマちゃん、思い入れが過ぎるかも?」

「う″っ……水無(ミナ)ちゃんまで言う?」


「でしょ? 次はちゃんと許可もらってから来て。それからボクに連絡してから、ね?」


 指環のネックレス化はチェーンを決めるとすぐに加工してくれた。ついでに婚約指環もお願いすると簡単に引き受けてくれる。


 これで薬指にずらずら~っと指環が並ばずにすむ。


「このあと、どうする? ボク、下着とか普段着を買いたいんだよね~?」

「それでいいよ」

「写真、()っていいなら」

「それはやめて?」

 いやな予感がしちゃったじゃないか……。


「お待ちしておりました~」

 果たして下着売り場にサガラが待ち構えていた。


「さあ、皆さんのオナペット・少年Kがネタを提供しに来ましたよ~!」


 しまった。その(わな)は考えてなかった。サキちゃんだな? そうに違いない。


「オナペット? 何だそれは?」

「キョウちゃん、ど~言うこと?」

「さ、さあ? ボクにもさっぱり」


 マキナたちは、あれを知らないんだ……。


「みんなは知らないの? 蒼湖(おうみ)ニュース・バラエティーのネット配信」

「あれは永久保存版」

「ちょっと、水無(ミナ)ちゃんタマちゃん」

 マキナたちが頭をひねってると言うのに、タマちゃんたちが答えてしまう。余計なことを!


「ネット? 配信?」


 あ~~ほら、みんな携帯、いじり出したじゃないか。


「いや、見ないで。そこのサガラにハメられたんだよ?」

「ハメられた……いつの間に」

「キョウちゃん、わたし知らない。詳細」

「いや、言葉の(あや)だから」


 誤解のないよう、着たらタダになると言う甘言(かんげん)に乗せられ、やらかしたと説明する。


 そして、また今回も性懲(しょうこ)りもなくサガラが手ぐすね引いて待っていたんだと付け加える。


「──分かるよね?」

 企図(きと)している人が居るんだと暗に示唆(しさ)する。


「ん~、イメージ戦略かも知れないな……」

「そんな大したものじゃないと思うけど?」

「分かった。乗せられてこい」

「えっ? いいの? てっきり断わるとばかり」

「そうだな~、見られて減るもんじゃなし」


 いや、そこは止めてよ。



「いいよ~、いいよ~」

 またしても、片っ端から欲しい肌着を着けてはカメラや携帯の前に現れる。


「もっとエロっぽいの着て」

「それは間に合ってるから。タマちゃん、それ以上、言うと、分かってるよね?」

「……何のことやら?」

「これよ、これ──」

 人さし指と親指で丸を作って見せる。

「──即刻、体で返してもらうから」


 よく分からなかったようだけど、おもむろに顔色を青くしていく。


「分かった……キョウちゃんが望むなら……」

「いや、そうじゃなくて」

 タマちゃんが服のボタンに手をかける。まったく……でも待てよ。


「もう一人、モデルがいますよ?」

 サガラに声をかけタマちゃんを指さす。


 サガラは、タマちゃんを見て何やらカメラマンと相談し始める。


「こちらの(かた)は喜多村家縁者(えんじゃ)ですか?」

「いえ、違いますけど」

「では、ダメです。需要はあると思いますが、喜多村の方でないと……」


 やはり、喜多村のイメージ向上のためなのだろう、このファッションショーは。



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