表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

145/184

145.すべての女の夢


「そうだね~。キョウちゃんには女の夢が詰まってるよね~」

「そうなんです。周りに色目向けるし、(しな)を作って誘惑するし、まったく女(たら)し」

「ちょっと待って? 女の人に()びたことなんて一度もないよ?」

「……キョウちゃん、女子を拒絶どころか拒否したこと無いよね?」

「それくらい……ある……よ?……」

 胡乱(うろん)な目でタマちゃんが見てくる。


「そうだね~、キョウちゃんに頼むとすべて(かな)えてくれそう。そんな気がする……」


 そんなバカな……。いや、でも頼まれたら拒まないかも……。女の人の言うことを聞けって教えられたし……。

「あ″~~っ?」

 思い返すと言い当てられてる気がしてきた……


「ホント、周りに悪い(ヤツ)が居なくて良かったよ。みんなキョウちゃんを護るためなら何でもしたと思う」

「何となく分かる」

「そう言う相乗効果で、がばがばなキョウちゃんが出来ました」

「見たように言わないで?」

「見てないけど聞いてるから……」

「……あ~、ユウちゃんか~」

「そうそう」

 ユウちゃんは、いろいろボクを気にかけてくれた幼馴染みで引っ越しちゃった子。タマちゃんはその知り合いでボクのことを聞いていたんだった。


 つい話に夢中で洗う手が止まっていたので急いで洗う。本当に風邪引いちゃうよ。


「ツバキちゃんも洗うのね?」

 カエデさんを洗い終わったのでツバキちゃんに聴いてみる。


「え、うん……」

「でもあとにして? タンポポちゃんたちを超特急で洗うから」

「……分かった」


 タンポポちゃんたちを並べて文字通り並列で洗う。お陰で体がいくらか温まる。もちろん、足の指の間や耳たぶの後ろとかちゃんと洗えたか、みんなを確認する。


「お待たせ。ツバキちゃん、どうぞ」

「う、うん」

 ツバキちゃんを前に座らせて背中を洗っていく。


「ふ~……ふ~……」

 刺激が強かったかツバキちゃんは背中まで真っ赤にしてる。お湯に浸からずして茹だってる。


「はい、終わり」

「あ、ありがとう」

「それじゃ、お湯に……浸かれないよ」

 お湯に浸かろうと浴槽を見るとすし詰め状態になってる。


「あ~、私は上がるから入るといい」

「え~、そんな~」

 マキナがお風呂を上がるって言う。一緒に入る目的だったのに何でこんなことに。


 お湯から上がったマキナに付いて脱衣場に行き体を拭く。替えの下着がないので素肌にローブを羽織らせる。


「マキナさんを拭うとローブを着せます。妻の(かがみ)ですね~」

「タマちゃん、いい加減にしてよ」

「キョウ、お湯に浸かっておいで。部屋で(くつろ)いでいるから」

「……はい」

「おっと、キョウちゃんは湯船に戻るようです。浴槽は女子しか居ません。凌辱(りょうじょく)待ったなし」

「……怒るよ。凌辱なんか起こりません」

 立ち止まりタマちゃんをにらんで言い放つ。


「タマちゃん、帰ろ。キョウちゃん、激怒一歩手前だよ」

「うん。キョウちゃん、ごめん……」

「…………」

 う~、ここは(ゆる)しちゃいけない。ぐっと我慢だ。


「──明日、お別れだから……つい」

「タマちゃん、部屋に戻ろ?」

「うん……」

「……はあ~……騒いじゃダメ、だからね?」

 そう言葉を残して浴場に戻る。甘いなあ~、ボク。


「それって……」

 タマちゃんの独白を聞かない振りで浴場に戻る。


 そのあと、浴槽に浸かってイモ洗い状態を楽しんだのは言うまでもない。もちろん、静かになったクラスメイト二人の観衆もいた。


 お風呂から上がりタマ水無(ミナ)の二人、タンポポちゃんたちと別れ、三階の部屋に戻ると奥、リビングから話声が聞こえる。


「お風呂上がり、ました? ミヤビ様?」

 リビングにはマキナとミヤビ様がソファーに座って話し込んでいる。


「お帰り」

「わらわは戻る。マキナ、考えておいてくれ」

「…………」

 沈痛なマキナを残してミヤビ様が帰っていく。


「ミヤビ様と何かあった?」

「……何でもない。ここへ座って」

 マキナがとなりの席を勧める。


「何?」

「遅くなったね?──」

 懐から紫色のビロード地の小箱を取り出す。それって……もしかして。


「──左手を出して」

 箱のフタを開けると指環が二つ()さっていて、一つを取ると左手薬指に()めてくれる。


「さあ、もう一つを私に」

 感無量のボクにマキナが言う。

 言われる通り残りの指環を取るとマキナの左手薬指に嵌める。その左手にボクの左手を並べてにんまりする。


「アヤメ姉、指環用意してる?」

 カエデさんが小声で聴いている。


「まあ、一応」

「私、用意してないよ?」

「じゃあ、今度買ってくれば? キョウちゃん、受け取って?」

 アヤメさんも小箱の中の二つの内の一つを取るとボクの前に(ひざまず)いて左(てのひら)を差し出してくる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ