表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

144/184

144.満員風呂


「ちょ、マキナ見えてる見えてる」

「脱いだら見えてあたり前だ」

「それはそうだけど、少しは(かく)そうよ」

 バスタオルでマキナの裸体を(あわ)てて隠す。タマちゃんたちは……なぜだ、興味なさそう。


 アヤメさんたちは、見せつけるよう仁王立ちしてるし、タンポポちゃんたちまで真似してる。


 いや、四女ツバキちゃんは恥ずかしがってる。よく見ると三女カエデさんは若干(じゃっかん)照れがあるね。


 自分でやったんだから自己責任だよ。ボクは隠してあげないからね?


 もしかしなくても、みんな入るんだ。う~、もう仕方ない。


 着物を脱いで脱衣カゴに()れていく。シュルシュルと帯を解く(きぬ)ずれの音が脱衣場に(ひび)く。てか、シンとしてそれしか聴こえない。


 手を止めて回りを見ると、みんながボクに注目してる。


「もう、あっち向いててよ。タマちゃん、携帯をこっちに向けない」

「そんな~」

「〝そんな~〟じゃないよ。ボクなんか録って何が楽しいのさ」

(たの)しいしかありません」

「そんな、きっぱり言われても……。楽しいのはタマちゃんだけ。どこで腐っちゃったの?」

「腐ってなんかないよ。発酵(はっこう)しただけ」

「…………」

 そこに違いはあるの? まあ、今さらになってるけど。


「キターーー(゜∀゜)ーーー!」

 上衣を脱いで肌襦袢(じゅばん)まで脱いでいくとタマちゃんが奇声を上げる。


「タマちゃん、放り出すからね?」

「お口、チャック」

 脱ぐのを止めてタマちゃんをにらむ。まったく、調子がいい。


「ふぉ~ふぅ~」

 肌襦袢を脱ぎきると、(はげ)しい鼻息がしてくる。もう無視してマキナの手を()き共に浴場に入る。


 洗い場で前後に並び、後ろに座ってマキナの背中を洗う。


「やっぱり少しふと──ふっくらしたね」

「そ、そうか?」

 素肌の横っ腹を(さす)るとぷにぷに感がよく分かる。


「ただいま、マキナさんの背中を洗っております」

「ちょっと、そこ、実況しない。浴場に服着て入らない」

「じゃあ脱いでくる」

「いや、そうじゃなくて。出て行って、ってこと」

 もう理屈が通じない。二人っきりなら密着して洗えたのに。


 何なんだ。他のみんなは裸になっていても体を洗わないで、こちらを注目してるって。


「交代しようか。洗ってやる」

「う、うん」

「うひょ~」

 マキナと席を替わって前に座る。もう、ガヤがうるさくてしょうがない。


「少し()せたか?」

「そ、そうかな~。そうでもないと思うけど」

 マキナが背中に密着して洗ってくる。ちょっと話題提供(サービス)しすぎだよ。


「こちらの生活はどうだった?」

「まあまあだったよ。……そうだ、農場の露天風呂に入ったよ」

「そうか……」


 外野からは「何話してるか分からん……」って聞こえてくる。


「こ、今夜も、いっぱい、する、よね?」

「そうだな……どうしようか……疲れてるし……」

「そうだね、疲れてるね、明日からで、いいよね?」

「うそだよ……。今夜もいいけど……妹たちがいるからな~」

「そうだね。アヤメさんたちが居るからね~。彼女たちが帰ってからにする?」

「帰ってからか~。そう上手く行くかな?」

「えっ? それって、どう言う……って、タマちゃん、何してんの?」

 タマちゃんが、すぐ近くまで来て聞き耳を立てている。


「こそこそ話すと聴こえない……」

「聞かせる話じゃないから、こそこそしてるの!」

「キョウちゃんの話題はみんなが知りたいんだよ?」

「知りたいのはタマちゃんだけだよ。退()いてシャワー浴びるから」

 まったくもう。マキナもどん引きだよ。


「(キョウちゃんの)エッチい話は全国一〇〇万人の読者が求めてるのに~」

 そんなことは知らん。タマちゃんには一〇〇万人の読者がいるの? そんなところで人の醜聞(しゅうぶん)流布(るふ)するな。


「次は私の番ですね?」

「は?」

 シャワーで泡を流すとマキナは浴槽(よくそう)に逃げた。ボクも入ろうとするとアヤメさんが押し戻し、洗い場で背中を向けボクの前に座る。


「やれやれ……」

 アヤメさんを洗い終わるとカエデさんが座る。何かデジャブーを見てる。いつかやった流れだね~。


「ボク、湯冷めすると思う」

「いいからいいから」

「…………」

 いいからいいからじゃないよ。


「ふぉ~……はひぃ~……」

「変な声出すなら洗いませんよ?」

「そんな~、このために生きてきたのに~」

「それってどんな人生ですか? ボクは人の背中を洗うのが人生ですか?」

「そうだよ~。結婚しても男に洗ってもらえない人が大多数だよ~」


「そんなこと、ないでしょ。結婚してるんだし」

「結婚してても混浴は嫌うのが普通だよ~。キョウちゃんが変なんだよ~。お(かげ)で女の夢が(かな)ったよ~」

「それほどですか?」


「キョウちゃんって、やっぱり自覚なさすぎ。どこかネジが(ゆる)んで──ネジが外れて壊れてる」

 タマちゃん、ボクを(はずか)しめすぎ。ボクってそれほど?


「てか、また近いよ、タマちゃん。シャワーかけるよ?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ