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142.今さらな自己紹介


「キョウちゃん、そろそろ紹介してよ」

「うんうん」

「え? 今さら?」

 喜多村の皆さんとの顔合わせも一巡(いちじゅん)し、潮が引くように行列が途絶えると、タマちゃん水無(ミナ)ちゃんが言ってくる。


「ボクの旦那(だんな)様の喜多村マキナ、です。こちらクラスメイトの水無月(みなつき)ユウナくんと真城(しんじょう)タマキくん」

顔を合わす(﹅﹅﹅﹅﹅)のは初めてだね? 喜多村マキナです」

 何ですか、その、イヤミたっぷりな言い種は?


「はじめまして、水無月ユウナです」

「はじめまして、真城タマキです。キョウちゃんとの馴初(なれそ)めは? お風呂はいつも一緒に入る派? 夜はどんな恰好(かっこう)させてます?──」

「ちょっと、タマちゃん?」

 となりのマキナからピキッて音がしたよ? タマちゃん、あまり不躾(ぶしつけ)すぎるのはやめて?


「キョウ、あとで話がある……」

 マキナを(のぞ)き見たら……こっわ~、穏やか表情だけど額に青すじが立ってるよ?


「キョウとは婚活サイトで出会いました。競合が居なくて良かったですよ? お風呂はいつも一緒です。ナイティーは厳選したものを使わせています」

「じゃ、じゃあ、結婚生活は順調なんですね?」

「キョウちゃんを学園に送った時に行ってらっしゃいチ、チッスをしてましたが……いつも、してる、とか?」

 タマちゃん……ぷるぷるしながら訊くくらいなら訊かなきゃいいのに……。


「……そりゃあ、もう……しまくりですよ?」

 マキナも顔を赤くして言うくらいなら言わなきゃいいのに……。


 あ、タマちゃん水無(ミナ)ちゃん、鼻血が垂れてきた……。


「そ、それじゃあ……おはようのチッスとか、お休みのチッスとか──」

「もちろん、やりまくり、です」

 何なの? 互いに()でダコみたいになりながら何、対抗してるの?


「さ、さあ、マキナさんも疲れてるから部屋に引きあげようか?」

「まだまだ夜は長いよ? もっと赤裸々(せきらら)な告白が聞きたい……夜の、ベッドの上での過ごし(かた)とか」

「タマちゃん……出血死するよ、鼻血で」

「だ、大丈夫。作家は死んでも作品は(のこ)る」

「どんだけ~。だいたい運営様に片っ端から削除されてるんでしょ?」

「う″……。もう失敗は繰り返さない。これからは伏字と隠語でカムフラージュする」

「…………」

 伏字も隠語も運営神様には通じません。タマちゃんの探求心には言葉もない。


「サキちゃん、マキナが疲れてるので部屋に下がっていいよね?」

 らちが明かないのでサキちゃんに助けを求める。


「そうじゃな。……他のものには言うておく」

「ありがとう」って言いマキナの(もと)に戻る。


「マキナ、サキちゃんが下がっていいって。タマちゃん水無(ミナ)ちゃんも部屋に戻りなよ」

「そうだね。部屋でゆっくり……」

「それじゃ」

 タマちゃんも納得したようなので、マキナの腕を()いて部屋を横切る。


「わらわも部屋に下がる」

「そうですね、下がりましょう」

「ハノリ殿下、レイニ様。ご退出~」

 会場にミヤビ様、レニ様の退出のアナウンスがされる。会場の皆さんは上座に注目して、座るものは立ち上がり背すじを伸ばす。


 まあ、お二人が退出されるのが先か、と思いボクたちも立ち止まり背すじを伸ばして見送る。


「先を行くがよい」

「えっ?……それじゃあ……」

 マキナと顔を見合せると、うなずくのでお先に失礼する。


「なんか院長回診みたいになってるんだけど……」

 後ろには、ミヤビ様レニ様のみならず、タマ・水無(ミナ)の二人、アヤメ・カエデ・ツバキ姉妹、幼女ーズ……が付いてくる。偶然だと思いたい。


 レニ様は表から車に乗って行けばいいのに。見るからに歩きにくそうにしてるし。


「レニ様、お車を使われたらどうですか?」

義兄上(あにうえ)は歩いて行かれるのでしょう。()も歩きます」

「「「兄上?」」」

「あ、いや、その……これは、ね?……」

 アヤメ姉妹から一斉(いっせい)に突っ込まれて答えに(きゅう)する。今まで、そう呼ばれなかったのに。


「レイニ様とは、義兄弟の(ちぎ)りをしたみたい」

「そうそう」

「そのようだ」

 水無(ミナ)ちゃんが的確に答え、タマちゃんが同意する。マキナまで言葉を添える。いつの間に知ったんだ。


 それはともかく、迎賓館を横切り、使用人館を通りすぎ本館にまで行列は続いた。


「タマちゃんたち、送ってくれてありがとう。もう部屋に戻っていいよ」

「何言ってるの。部屋に付いていくに決まってる」

「……はあ?」

 エレベーター前でお礼を行ったら、斜め上の答えを返される。




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