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139.サキちゃんの苦情


「そなたは、自由じゃな~」

「そ、そうかな~」

 給仕のすきを()ってサキちゃんが嫌みだか文句だか、言いにくる。


「キョウちゃん、そちらの方は?」

「喜多村家のえらい人」

「へえ~。なんで上座(かみざ)にちび──若い()が居るのかな~って思ってたのよ」

「そうだよね~。喜多村家の不思議だよ」

「む~……喜多村の当主は喜多村トウリ、ってなってる──」

 忙しく携帯をいじってたタマちゃんが後ろのテーブルを流し見たあと青くなって顔を戻す。


「──す、すぐ後ろに居る……」

「義祖父ショウ様のとなりが義祖母のトウリ様ね。ボクも今日はじめて会った。それでサキちゃん、マキナ──さんが来ないんだけど?」

「ふむ、マキナは少し遅れるとは聞いた。もうすぐ来るじゃろう。それにしても当世の男子(をのこ)()くも奔放(ほんぽう)なのじゃのう。おとなしくしておるのじゃぞ?」

 タマちゃんたちを見回してそう言い、席に戻っていく。


「面白い女性(ひと)だね」

「言葉が時代がかりすぎ」

「確かに……。でも、親身になってくれる良い人だよ」

 サキちゃんを見送りながら答えたら、視線の先でレニ様がこちらをすごくにらんでた。


 パタパタと早足の音が下手(しもて)の方に遠ざかるとドアが開き人が入ってくる。マキナだと思って注視していると違う女性(ひと)たちだった。


 入ってきた人はきょろきょろと誰かを(さが)している。その陰に隠れた人は見紛(みまご)うことなくマキナの姿と、その陰にももう一人。


 すこし憔悴(しょうすい)しているようだけど、上座(かみざ)に向けて一礼したあと、こちらに歩んでくる。


「マキナが来た……」

「ん?」

「来たの?」

 席を立つとボクは急いで迎えにいく。


「マキナ、遅い……」

 無防備なその胸に飛びこむ。


「すまない……」

「こちらがマキナちゃんの?」

 一人目の人が聴いてくる。マキナより少し高くグレーのスーツを着てる茶髪の人。


「ええ、キョウです。それより、ハノリ殿下にご挨拶(あいさつ)しないと……」

「わ、私はいい。それよりアリサを捜さないと……」

「アリサ? アリサちゃんなら上座にいますよ?」

 その人はアリサ関連の人らしい。母親とか?


「あら、本当。でも、どうして上座に?……」

「さ、さあ?……」

 まあ、マキナの姉妹に加えて割り込んで来たって言ってもワケ分からないだろう。


 マキナが連れたもう一人の女の子に視線を向けると(ほう)けてボクを見てる。軽く会釈(えしゃく)する。


「そちらの(ひと)は?」

「ああ、妹だ。あとで紹介する」

 まだ、妹さんがいたんだ。どうりでミニ・マキナって容貌(ようぼう)で、誠臨(せいりん)学園中等部の制服を着てる。

 マキナに付いてミヤビ様の前に行き(ひざまず)く。


「マキナ、わらわにはよいと言っておろう」

 テーブルを回ってミヤビ様がこちらに来られると、マキナの手を取って立たせる。


「しかし……」

「よいよい、わらわとの仲ではないか。久しいのう。息災(そくさい)か?」

「はい、(すこ)やかに過ごしております」

「言葉のほどはそう見えぬ。少しやつれておらぬか?──」


「殿下、()にも紹介してくだされ」

 ミヤビ様を(さえぎ)ってレニ様が割りこむ。


「──すまぬ、レイニ。こなたが愛友(マブだち)のマキナじゃ」

「お初にお目にかかります。喜多村マキナと申します、山級(やましな)レイニ様」

「そなたがキョウ義兄(あに)──キョウ殿の。レイニじゃ、良しなに」


「して、そなたの後ろに隠れておるのは……」

「お久しゅうございます……殿下」

「ややっ、タバサ? タバサではないか? 久しいのう」

「は、はい。ご無沙汰しております」

「それで、もう一人は?」

「はい、末妹のツバキです」

「は、はじめまして。喜多村ツバキです」

 名前はツバキちゃんか。誠臨の生徒ならマキナも教えてくれたらいいのに……。


「ママ!」

 一通り、挨拶し終えサキちゃんに挨拶する段になるとアリサちゃんがタバサさんに飛びついてくる。


「もう、そなたらは下がれ。マキナ、よく無事に来た」

 サキちゃんに下がれと言われたタバサ親子はアリサちゃんに手を引かれ上座の席に向かう。


「申し訳ありません。ツバキが駄々(だだ)をこねましたので……」

「だって……家族そろってって面倒くさいし……」

「まあよい。席に着け。主賓(しゅひん)が居らねば格好がつかぬ」

「はい」

 マキナの腰に手を回して席に移動する。むむむ? なんか抱き心地が違うような……。


「さあ、座って座って」

「あ、ああ……」

「まだ、何も食べてないよね?」

「ああ、食べる暇がなかった……」

 壁のメイドさんたちを見ると給仕を始めてる。そちらに指示はしなくていいか。マキナに並んで座る。


「あの~、うちはどこに座れば?」

 黙って付いてきたツバキちゃんが聴いてくる。


「そのテーブルの空いた席に座ればいいよ?」

「あんた、来ないって言ってたのに……」

「だって、面倒じゃん。でも来てよかった……」

 アヤメさんカエデさんがツバキちゃんに塩対応してる。この年頃って反抗期で家族の集いとか嫌がりそうだしね。マキナが苦労して連れてきたワケだ。


 そのままイスを運ばせて近くに座る。嫌がる割りに目立つ上座でいいんだろうか。


 タバサさんは、上座のイスに居座りアリサちゃんを抱えて食事してる。


 ボクの回りだけカオスになってるんだけど、いいのかな~?



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