134.衣装替え
『……キョ……キョウ様?』
「ふぇ? ヤバ。ぐっすり眠ってた! サザレさん、ちょっと待って?」
遠くからボクを呼ぶ声で目覚める。急いで起きてワンピースを着ると応接室へ向かう。
「申し訳ありません。お休みでしたか?」
「ああ、いいのいいの。ちょっと、深く眠ってしまってて」
「それでは、お茶を飲んでから着付けましょうか?」
「うん、それでお願い」
お茶でのどを潤し休んでから着付けてもらうことに。レニ様も起きてこられて一緒にお茶してから着付けてもらう。
「預かっておりましたものにされますか? それとも他のものにされますか?」
「それじゃ預けてたもので」
リネンに預けていた着物をサザレさんはわざわざ持ってきてくれていたので、そちらを選ぶ。
「それは……こちらに来てこられたものですね?」
「よくご存じで」
「ニュースで見ましたぞ。雑草の中に咲く一輪の花のようでした~」
「雑草って……」それってモールにいた女性たちのことだよね?
「Tバックにいたしますか?」
「え、ええ。ダメですか?」
素っ裸でTバックを穿いたらサザレさんに聴かれる。
「いえ、構いません」
「義兄上は穿くのですね? 余も穿いていいですか?」
「ええ、穿いてください?」そんなの好きにしていいですよ。
って、ボクのものの中から選ぶのね。
「着付けるならレニ様を先に」
「そう、ですか?」
「余は義兄上のあとで構いませんぞ?」
「いえ、レニ様を先にどうぞ」
レニ様を下着姿で待たせる訳にいかない。
「で、では、レイニ様を先に」
サザレさんはレニ様を着付けていく。ベッドに腰かけながら、それを眺める。
ミヤビ様は……同じく着付けを眺めながら寛いでいる。大丈夫そう。
肌襦袢の上にうす緑の襦袢でグラデーションさせ若草を表現してる。艶やかに花が咲き乱れてる墨染めの上衣をまとう。
帯締めはどうするのかな~って見てたらワンタッチに留めるものだった。すこしがっかり。
でも思ったより早くて楽そう。あとは、かつらだけどクローゼットから三〇センチ四方の箱を持ち出して、中からかんざしの挿さってないかつらを取り出す。
そこへ箱の下の引き出しから、かんざしを取り出し適当にぶっ挿していく。そんなのでいいのか?
「これでいかがですか?」
「うむ、なかなかじゃ」
「ではお召しください」
それで、よかったみたいだ。かつらをかぶると完成する。今は高下駄は履かないみたい。
「では、キョウ様ですね?」
「はい、お願いします」
ボクはあっさり、肌襦袢に襦袢を重ねて肉襦袢パッドを付けて上衣をまとうと帯を締める。これでもかなり重い。
レニ様は十キロくらい背負ってるんじゃなかろうか?
「それでは時間になりましたらホールにご案内いたします。それまでお休みください」
「うむ。大儀」
「ありがとうございました」
サザレさんが戻っていく。ええっと、ミヤビ様はどうするのかな?
そう思って聴くと「わらわは自分で適当にやる」らしい。シャツやズボンを着替えてるので大丈夫なのだろうけど。
今は臥せっているので、あとにして横になってる方がいい。
レニ様と二人でリビングに戻る。
「レニ様、裾を引きずってますけど」
レニ様は高下駄を履いておらず裾を引きずってる。
「室内なら構わぬであろう」
と言いつつレニ様は裾をつかんで持ち上げる。多少はましだけど後ろは相変わらず引きずってる。
まるで花魁そのもの。
リビングに戻っては、ボクのテレビデビューからのことを喋るしゃべる。
ボクは別にテレビに映りたくはなかったんだけど。
挙げ句、(下着)一人ファッションショーなど見せるものではないと説教を受ける。レニ様、それはもう聞きました……。
「失礼します……」
そうして、日が傾くころ一人の訪問を受ける。
「はじめまして、蒼屋キョウくん」
「はじめまして──」
リビングから応接室へ向かうとスーツ姿の四十代の女性がいる。
「──じゃないですね。マキナ──マキナさんの会社お会いしました、お義母様」
「ほぉう、覚えてくれてましたか。ミズキです、喜多村ミズキ」
「はい……ミズキ様」
「様はよしてください」
「じゃ、じゃあ、ミズキさん」