130.お医者さんごっこ*
「やっぱりキョウちゃんは、幼女に凌辱。……微妙に脚韻踏んだ」
「そうそう。どう見ても凌辱だね?」
「あ、あ、義兄上?」
ちぇっ、タマちゃんを喜ばせてしまったよ。レニ様はうろたえすぎ。
レニ様が現れて田端先生は慌てて部屋を出ていっちゃった。
「これは違うから。え~っと……そう、お医者さんごっこ?」
「あ~~」って水無ちゃんが呆れて納得してる。
「ふぅ~、これからカイボ──手術とか? ポチっとな」
目にも留まらぬ早さでタマちゃんが携帯を構える。
タマちゃんは斜め上の言い分──でもないか。解剖ってアリサちゃんが口すべらせそうなの聞いたし。でも手術まではいかないでしょ?
「キョウがケガしてるのに隠してるのよ。お兄さんたち、手伝って」
突如現れたレニ様たちに呆けてたタンポポちゃんが再起動して余計なこと言い出す。
「そ、そうじゃ。余もそれが気になってな?」
「え?」
「私は怪我は勘違いだと思うけど、念のため確認……」
「ええっ?」
「お、お医者さんごっこじゃ仕方ない。付き合ってあげないと……むふっ」
「えええっ! ちょっとちょっと、これはやり過ぎでしょ? 正気になって?」
みんなに比べてタマちゃんは平常運転だね。
「まあまあ、別状ないなら、すぐ終わらせるから……」
「無理やりなのは、いただけないが義兄上のためです。辛抱してくだされ」
「キョウちゃんの晴れ姿はバッチリ記録するから」
「みんな、何言ってんの? 怪我なんてしてないから~。タマちゃんは記録しないで?」
水無ちゃんに手を押さえられキャミソールは無慈悲にまくり上げられる。ボクサーパンツは、さすがにレニ様が止めてくれる。
「う~ん、確かに身体じゅうに赤褐色の斑点がいっぱい」
「打身の所見もある」
「義兄上、誰にヤられたのです?」
レニ様、ストレートすぎ。ついに見られちゃったよ。いい言い訳なんて考えてないのに……。
「キョウは、ヤられたの?」
「やられた?……」
「ん~?」
ほら、幼女ーズがいらないこと覚えちゃうから。
「いや、これは、その、ちょっとぶつけて、ね?」
「それは無理がある」
「そうそう」
「義兄上、正直になってくだされ」
これはもうダメかも知れない。
「あ~~、分かった、分かったから、話すから」
「じゃあ話して」
「聞かせてもらいましょう」
「ちぇっ」
ちょっと、タマちゃん舌打ちしたね? みんなの拘束が解かれ起き上がると、ベッドに腰かける。
「あれは夕べ、お花詰みで起きた時──」
「あの時ですな?」
「──そう、その時、タンポポちゃんたちが気になって」
「「えっ?」」
「キョウ、夜に来たの?」
タンポポちゃんたちが驚いて聴いてくる。
「──いや、行ってない。警護が面白いゲームがあるよ~って」
「「ふむふむ」」
「ゲーム……夜中に、ですか?」
レニ様、すんごく懐疑的。そう聞いたらボクも信じないからね。
「──それでつい、ふらふらと付いていってVRゲームして、その時、傷が付いたんだよ、たぶん。お話はこれでおしまい」
「ゲームで傷が付くっておかしくない?」
「「うんうん」」
くっそ~、誤魔化されないか~。
「格闘系のゲームだったから、ね?」
「怪しい……その痕はどう見てもキスマーク」
「そ、それはたまたま、そう見えるだけじゃないかな~?」
「キスマーク!」
「キスマーク?」
「ま~く?……」
ほらほら、また幼女ーズがいらないこと覚えるから~。
「う~ん、対戦相手にも事情聴取しないとなんとも……」
水無ちゃんが、もっともなことを言う。
「そうね。どんなゲームか気になるし」
タンポポちゃんが興味を示す。ゲーム好きそうだもんね~?
「も、もう返しちゃったと思う、ベータ版だとかで。だから無いと思うよ?」
「「「…………」」」
「なんか、疑念が増した……」
「義兄上……姑息な言い訳ですぞ?」
くっ、理由としてはやっぱり苦しいか。
「その警護に聞きに行くしかないね?」
「ダ、ダメじゃないかな~。警護も忙しいし~」
「それはない。あいつら、用事がないとだらだらしてるだけだよ」
「うっ……」
まあ、そのとおりだけど……。
警護たちから事情聴取する羽目に。ボクがワンピースを着ると、護衛たちの待機部屋へ、みんながぐいぐい押して進む。
まずいね……機転を利かせて変な受け答えをしないでくれるといいけど。
✳️姑息:一時しのぎ