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13.なぜか結婚発覚して……*


 まあ、すぐに家に向かえなくてマキナの会社内を探索たんさくした話がしたかっただけなんだけど仕方ない。


「……へい囲いの大きな家で──」


「「へえ~」」


「普通の家が三つくらい建てられる敷地に──」


「そこはパス」


「先に行って」


「ええっと、そこにはお手伝いさんが──」


「はいはい、早送りで」


「同じく」


「ボクの部屋は──」


「「ふむふむ」」


「大きな机があって、ソファーセットがえられていて、とびらでテラスにも出られるんだよ。スイートルームみたいで──」


「スイートって言うと」


「アレだよね?」


「……すっごく大きなベッドがあって」


「「フンフン、それで」」


 部屋の話に移って俄然がぜん、食い付いてくる二人。


 と、その時、前のドアから担任の先生が教室に入ってきて、ホームルームの時間が来てしまったと二人は泣く泣く席に戻った。


「あとで続きを」と言いながら。


 ショートHRの連絡が始まったと思いきや、教室のドアが勢いよく開けられた。


 そちらを先生やボクらが注目する中、入ってきたのはとなりのクラスの留学生、アンナ・クライネさんだった。


 彼女はボクをにらみつけ、肩にかかるブラウンブロンドをらしツカツカと歩み寄ってくる。


蒼屋あおやキョウ、あなた様はだれの許可を受けて結婚したでございますか!」


「えっ?……特に許可とかは受けてない、です」


 彼女の迫力に押されて両手でガードした。結婚って当事者が同意すればできるんじゃないの?


「な、なんですの、これ!」


 彼女は、ガードにげた左手を取って薬指にまった指環ゆびわを指さす。せっかくかくしてたのに見つかってしまった。


「あなた様の結婚はワタクシの許可が必要でございます! なんですか、こんなもの!」


「や、やめて! アンナさん」


 アンナさんが指環をつかんで外そうとする。それに許可って何? 意味が分かんない。


 アンナさんが言った言葉で「指環?」「指環してる?」って周りから聞こえる。


 てか、み合うたび、同年代より大きいお胸が揺れる。あちこちに当たってくる。


 ボクは慣れてるけど、男子を胸で威圧いあつするのはイヤがられるよ。


 アンナさんのお胸が大きいのは三つくらい年上だからかも知れないけど、その年で留学してくるのが不明な人だ。


「ちょっと、アンナさん?」


 ほうけていた担任、五条先生が再起動してアンナさんに注意しにってくる。


「もう授業が始まるので、自分の教室に戻ってください」


「授業なんか、どうでもよいのでございます。今はキョウ様の結婚の──」


 ダメだと判断した五条先生はアンナさんを羽交はがめして教室から追い出そうと引きっていく。


「おとなしくして!」


「お放しなさいですわ! ワタクシはキョウ様と大事なお話が……」


 アンナ劇場げきじょう呆気あっけに取られていた皆が「やっぱり結婚は本当に?」とか「なんで彼女が知ってる」とか話してる。


 ボクはアンナさんが言う許可とかの意味が分からなくて頭に疑問()を浮かべていると、タマちゃんが顔を寄せてきて「アンナさん、キョウちゃんをねらってた」って教えてくれた。


 いや、彼女にはウザがらみして来ることしか記憶がないんだけど? それが彼女なりのラブコールだとでも言うのだろうか?


 返ってきた五条先生が短時間でまとめてショートHRが終わり一時限が五条先生の数学で始まった。


 一限が終わり、素直に二時限に行くと思いきや休憩きゅうけい時間に男子が寄ってきて話を聞かせろ、指環を見せてとせがんでくる。


 ボクの話を聞こうとしてか、動きが止まり音が退しりぞく教室で、あとでと男子に伝える。授業の合間でなんか話せないでしょう?


 教室の入口を見たらドアのすき間からアンナさんがのぞいていた。しかもハンカチをくわえてうらめしそうにしている。


 前から思ってたけど、彼女この国・不双フソウのサブカルチャーにどくされてるんじゃないか?

 

 まあ、比較的(おだ)やかに休憩は過ぎ二時限の時間になって授業を受けた。


 三時限前の休憩時間にはアンナさんも来なくなったけど、代わりに五月さつきヶ原くんが教室、と言うよりボクを見るようにのぞいていた。なんだろう?



 午前の授業を終えて昼食。お弁当は家政婦さんが持たせてくれた。


 朝食を食べている内に準備してくれたのでお手伝いはできなかった。


 明日からは頼らないようにしよう。できるかな?


 机を集めて男子三人で静かに食べ始める。周りが静かで不気味だ。


 いつもは適度に猥雑わいざつな話が聞こえるのに静まり返っている。


 女子の話声が聞こえず耳をそばだてているのだろう。そんなに聞きたいのか、言葉を選んでしゃべらなきゃ


 そんな沈黙ちんもくしびれを切らして、話をせがんでくる男子。忘れてくれればいいのにね。


 仕方なく声をひそめて話し始めた。でも静寂せいじゃくの中で結構せっこうれているな。


 新居で割り当てられた部屋のことを話し始めると、周りからブーブー不満の声が上がった。


 そんな女子たちに男子二人が不満をあらわに見回す。


「相手はどんな人~?」っと、誰かが言う。


 ミナちゃんとタマちゃんが顔を見合せてうなずき合うと「どんな人?」と訊いてきた。


 相手のことを知りたいのは女子たちと協調したようだ。


「普通の人だよ。課長待遇の会社員。背丈は百七十くらい……」


 親族系列の会社勤めとか、名前が喜多村とかは言わない方がいいよね。名前が分かると理事長先生と親族どころか義叔母だって分かってしまう。


「課長くらいか……結構、頑張った感じ?」


「そ、そうだね」


 並みの課長では、男をめとることはできないからね。


「顔合わせから日にちがないから性格とか趣味とか分からないよね?」


「じゃあ、ベッドの話を。特に使い心地とかを白状せよ!」


 周りが一斉いっせいに頷く。ミナちゃん、言っておいて顔を真っ赤にしないでよ。


「ベッド、ね? そうね、すごく大きい──」


「「フムフム」」


「エンプレスサイズ? って言うの?──」


「「「おおっ!」」」


 ミナちやんタマちやん含め教室から歓声が上がってビクっと身体が強ばった。


 落ち着くために一旦、お茶で口を湿らせる。男子の視線がボクを凝視ぎょうしして早くとうったえている。


「ふう。三人が一緒に眠れるくらい大きいの。それに天蓋てんがいが付いていて……」


 ざわざわと教室中がざわめいて猥雑わいざつまる。


「それって多人数でも……ってこと、だよね?」


「単に寝相が悪い人なのでは?」


「キョウちゃん用だよ。キョウちゃんって寝相悪い?」


 男子の憶測おくそくが交わされている。周りも同様な話題で占められているようだ。


「ボクはそんなに寝相が悪いと思わないけど。右に左に寝返りが打てると助かるかな」


「天蓋って侍女とかが起こしにくるまで暗くしているためだったよね? 回りが起きてもらっても良くなるまで主人を起こさないために」


「そうなんだ」


「お貴族様だね。課長くらいで侍女じじょとかやとえるのかな?」


「それはどうだろう。家には侍女はいないよ。通いのお手伝いさんだけ。よく知らない」


 知らないふりしたけど、そうです。系列会社がいっぱいの教育法人や総合病院を運営できる財閥ざいばつを組むようなお家の人です。


「それで、使い心地は?」


 ああ、やっぱり、そこへ行き着くのね。


「あ、うん。い、と思う」


「そうじゃなくて、同居して二日もあったんだから、その……結婚前に間違い、とか有ったでしょ!」


「そうだね。キョウちゃんと婚約して同じ屋根の下にいて間違いが起きないハズがない……」


「で?! おそわれた? 犯された?」


 また、教室が静まり返る。言うべきか逡巡しゅんじゅんしているうちに男子二人の鼻から血が……。


 ガタガタ椅子イスが鳴るのを見回せば、女子たちも鼻血を流したり、教室の外へけ出していた。


 鼻血ふくまで興奮こうふんするなら訊かなきゃいいのに。


「ご想像に、お任せします……」


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