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129.土曜はおさらい*


「おはようございます、田端先生。いかがですか?」

「おはようございます、キョウ様。まだ始めたばかりですので分かりません」

「そうですか」


 みんなと挨拶(あいさつ)を交わしたあと、田端先生に進み具合を()いてみる。そのあと少し離れて見守る。見ていると学習内容が(さかのぼ)ってるような……。


 土曜なので一週間のお復習(さらい)かな?



「はい。皆さん、よくできました」

「みんな、お疲れ~」

「私にかかれば楽勝よ」

「うん、らくしょ~」

「お茶の子さらさら(﹅﹅﹅﹅)よ」

 ボクは田端先生と顔を見合せ苦笑い。お茶の子さいさい、ね?


「キョウと何して遊ぶ?」

「う~ん?」

「…………」

 二時間かからずお復習(さらい)をすませて、みんなはボクと何して遊ぶか相談してる。


「な、何? マナちゃん?」

 それに引き替えマナちゃんがボクによって来るとワンピースの(すそ)をめくってくる。


「ケガ?」

怪我(ケガ)なんかしてないよ?」

 裾を押さえつけながら弁明する。


「足を引きずってた」

 言葉を()いでマナちゃんは、めくる手を(ゆる)めない。田端先生は片付けの手を止め、こちらを(うかが)ってる。


「何なに?」

「どうしたの?」

 目ざとくタンポポ・アリサちゃんたちが気がついてよってくる。


「キョウがケガしてる」

「いや、怪我なんかしてないって」

「これは……治療(ちりょう)しないと」

「うん、カイボ──ちりょう」

「おちゅうしゃ」

 いいこと思いついたって顔でタンポポちゃんが治療を提案するけど、そんなの要らない。お注射はもっと要らない。三人がよって(たか)って裾をめくってくる。


「分かった。分かったから、引っ張らないで」

 買ったばかりのワンピースがシワシワになっちゃう。


「アリサ、イスを一つ、持ってきて。キョウはこっちよ」

「うん」

「いったい何を……」

 タンポポちゃんに連れて行かれたのはベッド前。タンポポちゃんのベッドだ。


「え~っと、確か……」

 何を(さが)してるんだろうって見てると、タンポポちゃんがサイドボードの引出しから聴診(ちょうしん)器を取り出してくる。と言ってもおもちゃの聴診器だけど。


「キョウはベッドに座って」

「う、うん」

 取りあえずベッドの縁に座る。


「持ってきた」

 アリサちゃんとマナちゃんがイスを運んでくる。


「ありがと。だれがドクターやる?」

「タンポポでいい」

「ん、タンポポで」

「分かったわ。みんなは看護(かんご)師ね?」

「分かった」

「わかった……」

 こそこそ相談してるみんなが薄ら笑いしてボクを見てくる。


「何をするの、かな?」

 まあ、分かってるけど聴いておこうか……。


「キョウの解剖(かいぼう)──診察(しんさつ)よ!」

「今、解剖って言った」

「言ってない。診察と治療よ」

「…………」

 ボクは疑念の眼差しを向ける。


「じゃ、じゃあ、服を脱いでくださ~い?」

「は~」

 ため息ついてワンピースを脱ぐ。もう抵抗しても無意味なのは分かってる。大人は(いさぎよ)いのだ。


「脱いだよ?」

「うむ……」

 脱いでるうちに、どこから出したのか、タンポポちゃんが白衣をまとってイスに座ってる。


「はい、息を吸って~」

 おもちゃの聴診器でボクの胸の音を聴いてくる。


()いて~……。少し雑音がしますね~」

「タンポポ、脚」

「分かってるって。これからやるから──」

 また、何こそこそ相談してるんだ?


「──では、横になって……」

「はい……」

 素直にボクはベッドで横になる。


「脚はどこが痛いですか~?」

「痛くないです」

「ウソはいけません。おヘソを取られますよ?」

「ウソじゃないです」

 おヘソを取るのは(かみなり)様でお医者さんじゃないよ。


「……ここは?……ここは?……ここは痛いですか?」

「……いいえ。……いいえ。……痛くありません」

 タンポポちゃんが脚のあちこちを触診(しょくしん)──つんつんしてくる。


「これは……重症ですね~?──」

 タンポポ先生が神妙に診断する。なんでそうなるの?


「痛くないんですけど?」

 本当は少し痛い、太もものあちこちが。でも、おくびにも出さない。


「──患者(かんじゃ)の肌着をめくって?」

 看護師マナ・アリサたちに指示する医師タンポポちゃん。


「ちょっと~、お腹はいいから」

「はいはい、病人は指示に従う」

 はいは一回、でしょうに? お腹や胸はヤバいんだって~。そこには……。


「むふ~」

「ふんふん」

「ちょっと。やめて……ダメだって~」

 忠実な看護師アリサちゃんがキャミソールをめくりにかかる。看護師マナちゃんはボクサーパンツに手をかける。


「…………」

 田端先生、片付けるふりで遠目から見てるなら助けてちょうだいよ。


「キョウちゃ~ん、いる~?──何これ!」

「ふぉ~! むふぅ~」

「あ、義兄上(あにうえ)? いったい、これは??」

 なんか分かんないけどレニ様はじめ、タマ・水無(ミナ)の二人が現れる。


「ちょうど良かった。助けてよ?」

「それよりも、現状確認したいわ」

「ふ~、ふ~……」

「なんなのじゃ……なんなのじゃ?」

 水無(ミナ)ちゃんは冷静すぎる。タマちゃんは相変わらず。レニ様はパニクってるし。



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