128.三人よれば文殊の知恵?
「義兄上、タマ殿はどこに逗まっておられる?」
食事後、レニはタマキに知恵を借りようと居場所をキョウに聴いてみる。
「タマちゃんですか? 迎賓館におります」
「すまぬが案内してたもれ」
「はい。構いませんが? 差し支えなければどんな御用か教えていただけますか?」
「うっ。それは……言えません」
「そう、ですか?」
キョウの物悲しげな笑みを見てレニは少し心が痛む。しかし、キョウには話せない理由なので仕方ない。
キョウは黙ってエレベーターで一階に下り本館、使用人館を通り抜け迎賓館に案内する。
「こちらです」
迎賓館の中央すぎたところの部屋に着く。
「タマちゃん水無ちゃん、いる?」
ドアをノックするも返事を待たずキョウは中に入っていく。
「キョウちゃん、おっはよ~。どうしたの?」
「おはよ」
「おはよう。レニ様がタマちゃんに御用があるって言うから連れてきた」
二人は朝食後で寛いでいる。
「朝から邪魔をする。いささか相談──話がしとうて参った」
「話?」
「む?」
「義兄上、子らところへ行かれて構いませぬ」
「は、はあ。それじゃ、ごゆっくり?」
また悲しい顔で部屋を出ていくキョウにチクリと胸が痛む。レニは今は小事と心を奮いたたせる。
「何?」
ソファーでお茶で口を潤し待てども話し始めぬレニにタマキがしびれを切らす。
「タマちゃん、短絡すぎ。レニ様、話とは? 相談らしいけど」
「う、うむ──」
レニが重い口を開く。
「──義兄上は、昨夜……襲われた、ようじゃ」
「むふ~!」
「ちょ、タマちゃん?」
タマキは携帯を取り出すと忙しく操作し始める。
「タマ殿、なぜ鼻息を荒くする?」
「あ、気にしないで。それで、襲われたって穏やかじゃないですね? どうしてそう思われました?」
「う、うむ。義兄上の歩様を見たな。足を引きずっておらなんだか?」
「あ~、ちょっとびっこ引いてる感じはしたかな~?」
「むぅ、そう言われれば」
水無タマ二人は空に視線をさまよわせ思い起こす。
「今朝、着替えるのを眺めておると──」
「どんな下着? 何色?」
「──う、うむ。うす水色のキャミソールにボクサーパンツ、であったか……」
「キョウちゃんは色気がない。もっと攻めないと……」
「タマちゃん、何言ってんの? そ、それで?」
「そ、それを着ける際、見てしまったのじゃ」
「見た? 何を?」
「ゴクリ……」とタマが生つばを飲みこむ。
「打ち身の赤みが体じゅうにあったのじゃ」
「なるほど……それが争った時のケガと思われると」
「──パンツには右足から? それとも左足から?」
「う、うむ……右足で、あったかの~」
「タマちゃん、(話の)腰を折らないで」
「むぅ……確かに。あの柳のようでいてぽっこりお腹、女に負けないぷりっとお尻。腰を折るなんて勿体ない」
「タマちゃん、何言ってんの?」
「確かに。義兄上には男の夢が詰まっておる……」
「レニ様まで? タマちゃん、ビミョーにキョウちゃんをディスってるよ? それでキョウちゃんが襲われたと?」
「う、うむ──」
間を空けるようレニはお茶を飲む。
「──余は聴いてみた。そのケガはどうしたのかと」
「ふむふむ……」
「義兄上はどこかにぶつけたのだろうと誤魔化したのじゃ」
「まあ、そうだろうね~。ウソか真かは置いといて」
「そこで、そなたらにも知恵を借りたいのじゃ。義兄上を暴行したものを見つけ出し鉄槌を下すのじゃ」
「う~ん……鉄槌はともかく、暴行されたかは確かめないとね?」
「むふ~~。ま、まずはそ、そのケガを確認」
「う~ん、見せてって言っても見せてくれないだろうね~」
「む~ん……朝風呂に誘う」
「理由もなく風呂に入るであろうか?」
「着替えを勧める。ボクサーパンツはいただけない」
「なんでボクサー穿いてるって知ってるのか不審がられないかな?」
「レニ様に聞いたって言う」
「聞いたからって、なぜ穿き替える必要があるのか聴かれたら?」
「む~……キョウちゃんはエロい下着を穿く義務がある」
「どんな義務よ? 聞いたことないわ」
タマキの意味不明な理由に水無が突っ込む。
「キョウちゃんがエロいと捗る」
「捗るのはタマちゃんだけだからね?」
「た、確かに……義兄上の艶っぽい姿は、こう、ぐっと来るものがある……」
「レニ様?……」
あきれて水無がレニを見る。
「同志……」
「タマ殿……」
「だめだ、こりゃ……」
なかなか、良い方策に辿り着くどころか脱線しまくる三人だった。