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123.バレバレでした……*



「こちらです」

 気更来(きさらぎ)さんに導かれて行った先は三階、サザレさんに連れて来られたあの部屋。


「なるほど、ね~。って羽衣さん?」

 部屋に入ると(しば)りあげられた羽衣(はごろも)さんがベッドに横たわる。(かたわ)らに(ささ)打木(うちき)コンビ、護衛の歩鳥(ほとり)斎木(さいき)コンビまでいる。


「みんなどうして、ここに?」

「我らもご相伴(しょうばん)(あずか)ることに」

「ご馳走(ちそう)さまです」

「意味、分かんないけど……」

 なに言ってんの、いったい? みんなが羽衣さんを起こしてベッドから退()ける。


「まあまあ、特製(とくせい)のお茶を飲んでください──」

 そのあと裸で横になりゴーグルを着けてください、と気更来さんに手順を説明される。


「これって何が始まるの?」

 コップを受け取り気更来(きさらぎ)さんに聴く。


「──喜多村謹製(きんせい)(たの)しく子作りゲーム』、だそうです」

「なにその……なにその……身も(フタ)もない名前」

「そう言わないでください。サキ様が寝食(しんしょく)を忘れ(つく)りあげた傑作(けっさく)自画(じが)自讃(じさん))、だそうですので」

 二回も〝なにその〟と言わなくても分かります、って(あき)れられる。


「ええっ、サキちゃんが創ったの?」

「まあ、サキ様とアシスタントAI、ですけどね?」

「はあ、なるほど……」


 また、みんなの前で裸か~。肌着は着けてていいよな?


「こちらをお飲みください」

「うっ、またあの苦い麦茶?」

 飲んでみるとかすかに苦味(にがみ)を感じる。苦い麦茶の(うす)めたバージョンだね。


「精力を持続させる薬だそうです」

「は~、なるほど……。そりゃあガブガブ飲んだら眠れなくなるわ~」

「は?」

「──いや、こっちの話」


 精力茶を飲んだあと、襦袢(じゅばん)()ぎ横たわると頭回りで保持するゴーグルを着ける。


「では、メニューから『ゲーム』を選んで」

「──選んだよ。〝子作りゲーム〟ってあるね」

 てか、それしかないから他を選べない。


「では、それを起動させると──」

『起動させた』

 起動させた直後、声が退(しりぞ)く感覚? と言うのか、微妙(びみょう)な音のタイムラグを感じる。


『──(ちょう)覚と(しゅう)覚が遮断(しゃだん)され、その他の感覚がゲーム・プログラムに乗っ取られるそうです』


『それって大丈夫なの?』

『サキ様によると大丈夫らしいです』

『らしいってなに。すっごく不安』

『仕方ありません。初・人体実験──実地(じっち)試験(しけん)ですので』


『オ~イ! また、人をおもちゃにして~。やめる。あれ? あれれ?』

 手を頭にやり、ゴーグルを脱ごうとしても脱げない。


無駄(ムダ)な行為です。五感に運動感覚、そのフィードバックを乗っ取っていますから実体を動かすことはできません』

『だまされた~! 今、ボクを好き勝手できる状態じゃない? お風呂の時みたいに』

『まあ、そうなりますね~』って気更来さんが楽しそうに言う。


『他人事だと思って!』

『他人事ですから』

『お前たち、コロコロする。(コロ)がしてやる~』

 感覚が回復したらヤる、絶対!


『お、落ち着いてください。ゲーム・クリアすればいいだけです』

『ああ、そうか!』

『そうですそうです』

 なんか、否応(いやおう)なく「子作り」させられるんだ。


『では、チュートリアルのミニ・ゲームです──』

 ゾンビが攻めてくるので、それをハンドガンその他で倒していくゲームらしい。


『──では、前に進みながら照準(しょうじゅん)してショット。五感にラグがあれば左下のコンテキスト・メニューで各感覚のラグを最小に調整してください』

『うん……うわっ、来た。きんも~。エイ! エイ!──』

 瓦礫(がれき)(かげ)から、のそりのそりとゾンビが現れ、ボクを見つけると歩みよってくる。


 それに照準してトリガーを引く。ブローバックの軽い反動を感じ弾丸(だんがん)発射(はっしゃ)。ゾンビに(あた)ると軽くノックバックして一瞬(いっしゅん)ゾンビが静止する。


『そうそう。その調子』

『──こいつ全然、倒れない』

『はい。歩きはそれでいいです。ちょっと走って止まり、走って止まりしてラグ調整してください』

『いきなり、さっきのゾンビが消えた』

『チュートリアル──』

『だったね』

 十分ほどいろいろな動作や反応の調整を()り返す。


『キョウ様、素晴らしいです。レスポンスは標準以上ですね~』

『そ、そう?』

『では、本番。ウイ・ゾンビが現れますので(たた)きのめしてください』

『ウイ・ゾンビ?……りょ、了解』


 それから廃墟(はいきょ)だか古城だかのフィールドを彷徨(さまよ)って羽衣さん似のゾンビを()ち倒していく。


『これってさ~──』

『なんです?』

『──撃つたびに気持ちいいのは、なんとかならない? そのたびに照準が狂って()りにくい』

『ゲーム・コンセプトを()るがすこと言いますね~。ゲームして気持ちよくなり子作りの忌避(きひ)感をなくそうってコンセプトなので無理だと思います』


『なんか(だま)し打ちみたいでイヤなゲームだな~。ゾンビが出るのもボク好きじゃない』

 そもそも、単なるシューティングであって子作りの「こ」の字もない。


『それは、これからの課題(かだい)ですね。もうウイがダウン寸前です。とどめのランチャーに()えて仕留めてください』

『ランチャー……ああ、これね』

 右下に長細い筒を表したアイコンがある。それを押すとハンドガンからランチャーに持ち換わる。


『外さないように。くれぐれも二発まででお願いします』

『ん? 分かった。エイ!──あ、ああ~、なにこれ? あ~~!──』

『ヤりました! ウイ・ステージ、クリアです』

『──はあはあはぁ~~。……すごく気持ちいいけど疲れる~』

 ──ん? ウイ・ステージ? どゆこと?



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