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121.羽衣ヒート


「いかがでした?」

「う、うむ……なかなか……刺激(しげき)的……であった……」

「そ、そうですか」

 息を切らせたミヤビ様とお湯に()かる。思ってた反応と違う。


義兄上(あにうえ)()もお願いします」

「レニ様はまたにいたしましょう」

「そんな~。では()義兄上(あにうえ)(あら)いまする」

「いえ、もう洗っていただきましたので」

「はあ~、そう言わず、もう一度」

「──(あぶ)ない!」

 勢いよく立ち上がったレニ様がよろけ、それを支える。


「ほら、まだ回復していらっしゃいませんよ。またにいたしましょう」

「そ、そのようです。また、いつでも出来(でき)ますもの……」

「そ、そうです、よ?」

 ありゃ。これって、長居(ながい)するフラグなのかな?


 ()()ってレニ様とお湯に()かる。


 また、射貫(いぬ)かれる視線を感じる。タンポポちゃんたちだな~って横目で見たら目が()り上がってるよ。


「ちょっと、子供たちを見てきます」

「あっ!」


 まとわりつくレニ様を放してタンポポちゃんの方に移動する。


「キョウ様~。アレ、アレを私にも」

 移ってる途中で羽衣(はごろも)さんにインターセプトされる。


「まだ、()りてないんですか? わがまま過ぎると解任(チェンジ)ですよ」

「そんな~。その前にぜひ、子作りしましょう」

 声を落として言ってくる。


「羽衣さんはそれでいいの。仕事、失くすかもしれないよ」

「仕事なんてど~でもいいんです。男に近づけると思って頑張(がんば)ってきたのに──」

「おい! ウイ、なにしてる」

 気更来(きさらぎ)さんがボクたちに()めよってくる。


「──もう我慢(ガマン)の限界なんです」

「ウイ、やめろ!」

「気更来さん、ちょっと待って」

 気更来さんを止めて、少し距離(きょり)を取る。


「今夜、日付が変わるころトイレで……」

 いっそう声をひそめ羽衣さんに言う。


「本当に? 本当ですね?」

「うん」とうなずく。途端(とたん)に必死さが(やわ)らいだ。


 ふやけた顔で羽衣さんは気更来さんへ向かう。気更来さんは(いぶか)しげ。


 あれだね。ヒートってヤツ。女の欲望に取りつかれてる。誰彼(だれかれ)となく(おそ)いかかっちゃう。


 って言っても、(おそ)われそうなの、ボクかタマ・水無(ミナ)の三人だよな~。


 (しず)めてあげないと身の破滅(はめつ)だよ。まあ、マキナに許可(きょか)もらおう。


「タンポポちゃん、顔がこわいよ?」

「うるさい。なに話してたの?」

 タンポポちゃんたちのところに行くと、鬼の形相(ぎょうそう)でにらんでくる。


「別に、なにも」

「ウソ。よからぬ相談でしょ?」

 タンポポちゃんの近くに座ると距離(きょり)()けられる。くすぐらないって。


「ホントだよ? 興奮(こうふん)してるから(なぐさ)めてあげただけ」

「ウソね」

「うん、ウソ」

「ウソつきは、おしおき」

「お、お仕置(しお)きは、やめて」

 なんでバレるんだ。女性にウソは通じないって本当(ホント)だね。こんな年頃(としごろ)にその片鱗(へんりん)(のぞ)かせるとは。


 マキナには、正直にしてよう。



「みんな、忘れ物ない?」

「そんなヘマはしない」

「しない……」

「わすれない……」

 少し()けたお月様が、やっと稜線(りょうせん)から姿を覗かせて来るころ、露天風呂から撤収(てっしゅう)する。


()は、露天風呂を気に入りましたぞ」

「うむ。なかなか()いものであった」

「そうでしょう」

 レニ様ミヤビ様も満足されたようで何より。


「混浴じゃなかったら、気に入ったかも」

「いいお(しり)──いい月が()れた」

「そ、そう。今度は、男だけで入りに来ようよ」

 水無(ミナ)ちゃんは、おおむね好評(こうひょう)。タマちゃんは、なに言ってるのかな? お尻、ってなに?


「えへ……ふへへ……むふふ……」

「…………」

 (ゆる)み切った顔の羽衣さんに気更来さんが怪訝(けげん)な表情をしてる。バレバレですよ、羽衣さん。せめてその時までは表情を引き()めてないと……。


 かくて、多くの問題をはらみつつ車を(つら)ねて屋敷(やしき)に戻る。



「それじゃ、お休み」

「お休み~」

「うん。お休み」

 本館のエントランスでタマちゃん水無(ミナ)ちゃんと別れる。


「これ、そなたはどこへ行く?」

 二階でエレベーターを降りるとミヤビ様に呼び止められる。


「あ~、タンポポちゃんたちを寝かしつけてきます」

「そうか……。そなたには夜の(つと)めがあるのじゃから早く戻ってくるのだぞ」

「そうです。()と夜のコンビネーションを確認いたしませんと」

「あ~……分かりました」

 ミヤビ様たちと分かれると子供たちとトイレに急ぐ。もう、みんな舟をこぎ始めてる。


「みんな、寝る前におしっこして来てね?」

「もう、眠い」

「ねむい……」

「もうねる……」

「ボク、様子見にこれないから夜中に行きたくなっても知らないよ?」

「分かった……」

「しかたない……」

「キョウ……」

 みんながおとなしく個室に向かうのにマナちゃんがぐずる。暗くないから(こわ)くないでしょ。


「マナちゃんも一人でできるようにならないと……」

「うう~……」

「分かった。もう、今夜だけだよ?」

「ん~」

 ちょっと、ボク(ばな)れさせないとダメかも知れない。



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