表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/184

114.タマ・ミナの徘徊*


「なにこれ、豪華(ごうか)すぎるでしょ」

「まさに個室」

 トイレに入って二人はびっくりする。一人で使うには似つかわしくない〝個室〟が目の前に広がっている。


「これだけ広いと居心地悪いでしょ」

「会議できる勢い」

「あ~、本当。もしかしたら余所(よそ)でしてた話合いをトイレで継続できるように大きくしたのかも」


「むう~。むかし王様の用足しの介助(かいじょ)する役目があった」

「へ、へえ~。(くさ)くて大変だったろうね」

「うん。その役目が側近で一番(えら)かった」

「くさい仲だね。それが?」

「単なる豆知識。我慢(ガマン)の限界だから出てって」


「え~、居ちゃだめ?」

「だめ」

「でも、もうショーツ下ろしてるじゃん」

「だからもう限界」

「早くして? 私も限界に近づいてきた」

「となりへ行け」

 そして交代して用を足した二人。


「くさい仲になっちゃったね?」

「くさいのは水無(ミナ)ちゃん。私は、くさくない」

「ひどい。でも広いトイレいいな~。一緒にできて」

「私は願い下げ。でもこのトイレで一人は(さび)しい」

 トイレを終えた二人は屋敷探検に脱線する……。



 ◇


「みんな部屋に戻ってて」

 二階に上がるとタンポポちゃんたちに告げる。


「きっと夕食に来てよね?」

「うん、来る」

「待ってる」

「分かったよ。また、あとで」

 案外、聞き分けよく幼女たちは解放してくれる。


義兄上(あにうえ)、子供たちのところに行ってはなりませぬ」

「えっ、どうして?」

 二階から五階に向かうエレベーター内でレニ様が言う。


「子供の言うことなど聞く必要はありません」

「それは答えになってませんよ」

「と、()に角、子供のそばに行くと道を()み外します」

「外しません。一緒に遊んで(なぐさ)めてあげてるんです」

 なんせ遊んでると生き生きしてるもん。



「私は、サキちゃん──マサキ様に報告してきます。お部屋でお待ちください」

()も参りますぞ」

 五階に上がり部屋の前で、報告に向かうって言うとレニ様まで付いてくるって言う。


「いえ、些末(さまつ)ごとは私一人で充分です」

「報告のちは、すぐ部屋に戻られますか?」

「はい、もちろん」

「分かりました。待っております」

 やっとレニ様が放してくれる。



「サキちゃん、ただいま戻りました」

 最奥(さいおう)のドアをノックして部屋に入る。


「無事、回収できたようじゃな?」

 サキちゃんが奥から応接室に現れる。


「回収って……まあ、そうだけど。車とかいろいろ、ありがとうございました」

「うむ、いつもそう殊勝(しゅしょう)であれ」

「ええ~? いつもボク、殊勝だと思うけど」

「まあよい。それで彼奴(あやつ)らはいつまで()め置くのじゃ?」

 あ~、それもあるか……。


「週末だし、日曜までかな? 日曜の朝くらいに帰れば月曜に間に合うし」

 ボクもマキナと一緒に帰りたいところだけど……。


「して、レイニ様はいかがであった?」

「いかが、とは?」

 ソファーに座り直して紅茶をいただきながら話の続きをする。


「その、ご機嫌(きげん)、じゃ」

「まあまあじゃない?」

「まあまあではいかん。決して機嫌を(そこ)ねるでないぞ」

「そんなこと言っても我儘(わがまま)なんだもん。四六時中まとわりつく勢いだし」

 タンポポちゃんたちのことも指図するし。


「反論されず生きて来られたから仕方なかろう──」

 と、突然、遠くからピーピーとアラームが鳴る。奥のリビングからかな?


「──しばし待て」

 うんとうなずく。サキちゃんがリビングへ消える。


「キョウよ、友とやらが一階のシアターで悪戯(いたずら)しておる。止めて()よ」

「えっ、そうなの? 分かった、行ってくる」

 応接室に戻ってきたサキちゃんが告げる。ボクはサキちゃんの部屋を出ると、急ぎ一階に降りてシアターを(のぞ)いてみる。


「みんな、何やってんの?」

「──ビクッ」

「キョ、キョウちゃん。どうして?」

 サキちゃんに言われた通り、シアターでタマちゃん水無(ミナ)ちゃんが下手(しもて)の装置をいじってる。


「どうして、じゃないよ。ここには(こわ)~い人がいるから、うろちょろしない。で、何してんのよ?」

「キョ、キョウちゃん、(さが)してた」

「うんうん」


「ウソばっかり。この一階には部屋はないから」

「そ、そうみたいだね」

「へ、部屋が無いのを確認してた」

「なにそれ? もう、付いてきて」

 二人を連れて五階に上がる。


「ちょっと、ここで待ってて」

 自室に()てられた部屋の前で二人に待っててもらう。


「ただいま帰りました。レニ様?」

 となりのリビングに顔を出してレニ様を確認する。


「おお、義兄上(あにうえ)、待っておりましたぞ」

 それほど、ご機嫌を(そこ)ねた感じはない、な。


「お待たせして申し訳ありません。友達を連れて来ましたので私はとなりの応接室におります」

「そんな……。()も応接室におります」

「は、はあ~? では、マサキ様に知らせてきますので、またしばしお待ちを」

「またですか~?」


「ちょっと、あれで紅茶でも頼んで待ってて。それからレニ様が来られるから相手してて。じゃ」

 応接室に二人を(まね)き入れ、メイドコールを示して、あとを(まか)せる。


「うえ~?」

「に、逃げないでよ」

「逃げるとは何じゃ」

「「ひえええ~」」


 応接室にレニ様が現れたところで脱兎(だっと)のごとく、サキちゃんの部屋へ走る。いや、走ってない。小走りしたよ。


「はあはあはあ~、サキちゃん、二人回収して部屋に連れてきた……」

「そうか……悪さをせぬよう言い(ふく)めておれ」

「それだけ?」

「それだけじゃ。ほかに何がある?」

「はあ~、分かった」

「くれぐれもレイニ様のご機嫌を──」

「損ねません。努力はしますけど」

「これ、必ず、じゃぞ?」


 返事しないでサキちゃんの部屋をあとにする。三方も四方(しほう)も相手してられないよ……実際。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ