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112.喜多村本家に帰着*


「はい、到着」

「やっと着いた~」

「長い旅路だった」

(だれ)のせい?」

「う、ごめんなさい」


 正門の通過儀礼(ぎれい)も問題なく、迎賓(げいひん)(かん)前の車寄(くるまよ)せに停まると、みんなと車を降りる。


「古めかしくて年代を感じる屋敷(やしき)だね~」

「うん、(おもむき)ある」

「二人は同じ部屋でいいよね」


「私は一緒でいいよ」

「うん、私もそれで」


 迎賓館のエントランスから家令(かれい)陽笠(ひかさ)さんとメイド長のサザレさんが現れる。


「陽笠さん、サザレさん、二人を案内してあげて。部屋は一緒でいいから」

(うけたまわ)りました」

「──(かしこ)まりました」


「我らは部屋に戻っております」

「私たちも」

 警護たちが断わりを入れ、車は(やかた)前のロータリーから横道へ進んでいく。



 使用人ツートップの先導(せんどう)に付いて行き部屋に着く。ボクが入ってた部屋だね?


「す、すごいね」

「うん」

「夕食をお持ちするまでお(くつろ)ぎください。それでは」

「ありがとう」

「──ありがとうございます」

「──ありがと」


 お礼を言うと、陽笠さんとサザレさんは使用人館の方に帰っていく。


「ええっと、用事がある時はコレでメイドさんを呼べばいいから」

「すごいね」

「うんうん」

 メイドコールなど、一通り部屋の説明をする。


「向かいの部屋が護衛の部屋だから。あれ? 羽鳥来(はっとり)さんがいない」

「警護の車に乗っていったんじゃ?」

「うん、そう」

 ──大丈夫かな~?


「では、我々は部屋におりますので」

「うん」

 タマちゃんの護衛たちが部屋に向かう。


「ねえ、あの子たちは?」

 ドアの(かげ)からタンポポちゃんたちが(のぞ)いてる。


「ああ、喜多村の子たち。おいで」

「キョ~、(おそ)い」

「待ってた~」

「おそ~い」

 ──ぐほっ! タンポポちゃんたちを呼ぶとみんながタックルしてくる。


「ケホッケホッ……、この子がタンポポちゃん。で、マナちゃんにアリサちゃん」

「喜多村タンポポ。キョウの未来の夫よ」

「きたむらマナミ。みらいのおっと」

「やまぶきアリサ。キョウのおっと」

 あちゃ~、言っちゃったよ。言いそうって思っていながら、つい油断してしまったよ。


 それに「未来の」にしてくれたんだ。でも、アリサちゃん?


「ちょちょちょ、ど~言うことよ?」

「やはり、キョウちゃん。幼女に拉致(らち)られて調教……」

 水無(みな)ちゃんが(おどろ)き、タマちゃんがまた妄想(もうそう)を展開する。


「ど──」

 ──ど? なんですレニ様?

「──ど~言うことです、義兄上(あにうえ)!」

 レニ様、大声でびっくりするよ。タンポポちゃんたち、ビクッてしたよ。


 タンポポちゃんたち、レニ様とは反対の右手や右脇に食らいついてる。三人にぶら下がられると重い~。


「あ、いや、これにはいろいろありまして、ですね?」

「幼な夫と新愛人の修羅(しゅら)()……。しゅら、しゅら、しゅらしゅしゅしゅ~」

「キョ、キョウちゃんが~、キョウちゃんが~。いけない道に……」

義兄上(あにうえ)、子供こどもと言いつのるので、ど~も怪しいと思っておりましたが、そ~言うことでしたか」

 いや、ど~言うことよ。ちゃんと言って。


「ですから、将来約束してお世話してるだけでして、ね?」

「キョウちゃん、こっちに帰ってきて?」

「お世話……むふぅ~むふぅ~……」

義兄上(あにうえ)、正気に戻ってくだされ」

 こっちってどっちよ。それにタマちゃん、お世話に興奮こうふんすることある?

 レニ様、ボクはいたって正気です。


「キョウ、部屋に行って遊ぼ」

「うん、あそぶ」

「おままごと?」


 レニ様、水無(ミナ)ちゃん、つかんで()らさないで。タンポポちゃんたち、引っ張らないで、()うから、酔っぱらうから……。


「むふ~……。どろどろ、ねちょねちょ……」


 それからタマちゃん、傍観(ぼうかん)してないで助けてよ?


 あとで説明するって、ひとまず収める。まだ(やかた)の説明終わってないから。



 そのあと、おトイレとお風呂に案内する。レニ様と子供たちに(まと)わりつかれて歩きにくいったらありゃしない。


「お風呂は混浴なんだね~」

「いや、違うと思う。たぶん時間を決めて替わってるんだろうけど」

「ここでキョウちゃんが……はあはあはあ……」


「タマちゃん、何もないからね?」

「でも、ぬるぬるされた」

「いや……うん。まあ、そうだけど」

「むふぅ~」

「まあ……お風呂のことは訊いてみるよ」


 気にしなかったけど時間を決めて男だけで入るか、本館の家族風呂に入りにくるかだね。あとで訊いとこう。


「ぬるぬるとはなんです?」

 ああ、レニ様が耳聡(みみざと)く、ぬるぬるに食いついちゃったよ。


「キョウとぬる──」

 タンポポちゃん、(だま)ろうか? とっさに子供たちを抱き()めて(こと)なきを得る。


 相変わらず、レニ様と子供たちにまとわりつかれてて鬱陶(うっとお)しい。


「ああ、それはボディーソープで洗った、ってことです」

「口ぶりからは、そう思えませんでしたが?」

「き、気のせいです……」

「そうですかぁ?……」

 疑わしげにレニ様が目を細める。なにげに洞察(どうさつ)(りょく)が上がってきてる。



「ボクも部屋に(もど)るから、みんなも休んでて」

 みんなに一通り説明したのでサキちゃんに帰着の報告(ほうこく)してこないと。


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