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111/184

111.蒼湖中央駅*


 湖畔(こはん)に着くと湖岸(こがん)沿()ってしばらく走る。


 目の前に現れた桟橋(さんばし)に乗って湖を突っ切る。途中の空港へのインターチェンジをスルー、そのまま南を目指す。


 あっと言う間に南湖岸の街並みが(せま)ってくる。そのまま市街地に入りメインストリートを進む。


 駅前通りから駅前ロータリーに車が進入する。警護の(ささ)さんと打木(うちき)さんにドアを開けてもらい外に出る。


〔キョウ:駅前に着いたよ。黒い車二台とワゴン車。見える?〕

 駅前を見回すけどそれらしい人影が見当たらない。


水無(ミナ):あ~、見えるけど人垣(ひとがき)邪魔(じゃま)でなかなか近づけない〕

〔タマ:殲滅(せんめつ)せん滅せん滅〕


 殲滅(せんめつ)ってタマちゃん、護衛もそこまでしない。人垣かき分けてくる程度でいいでしょう。


〔キョウ:分かった。こちらからも行く〕


「笹さん打木さん、付いてきて?」

「「御意(ぎょい)!」」


 駅前にはそこそこ人がいるけど、一際(ひときわ)人の集まるところがある。そこだろう。


「あ、義兄上(あにうえ)、危険ですぞ」

「レニ様は車で待っててください」

「そんな……。よ、()も行きます」

 車から飛び出しレニ様も付いてくる。そして、(うで)(から)めてくる。なして?


「我々も付いて行きます」

「私たちも」

「そう? じゃあ、お願い」


 他の車から気更来きさらぎ羽衣はごろもコンビ、歩鳥ほとり斎木さいきコンビが合流してくる。陣容(じんよう)がすごくなっちゃったな~。


「あれ? 少年K、蒼湖(おうみ)中央に(あらわ)るなう」

「少年K、激写(げきしゃ)、激写、激写!」

「となりの子も若いキャワイイ!」

 ボクを見つけた周りの観衆(かんしゅう)(かまびす)しい。写真は()らないで。


 警護たちが人の流れを断ち切って進んでいく。


「キョウちゃん! こっちこっち……って(だれ)?」

「キョウちゃん……やはり……」

 護衛とともに()けてくるタマちゃん水無(みな)ちゃんが唖然(あぜん)として足が止まる。羽鳥来(はっとり)さんまで怪訝(けげん)な表情をする。


「みんな大丈夫だった?」

「全然、大丈夫じゃない……」

「キョ、キョウちゃん、そっちの人は?」


「ああ、あとで説明する。まず車に乗って」

 って言いながらレニ様の腕を(ほど)こうとするけど(あらが)われる。


 ボクたちの移動に合わせ、群衆(ぐんしゅう)と化した通行人が間を()けて(せま)ってくる。


なま少年K、なまK、なまK」

「少年Kのみならず少年が集まってる。少年密度(たっけ)~」

「す~はぁ~す~はぁ~す~はぁ~、これが少年のにほひぃ~」

爆写(ばくしゃ)! 漠写(ばくしゃ)! 曝写(ばくしゃ)!」

 曝写──写真の拡散はやめて?


「さあ、早く乗って?」

 みんなに乗車を勧める。


「何これ? またリムジン?」

「むぅ……」

「僕、違うのに乗るから」

「我々も」

 羽鳥来(はっとり)さんとタマミナの護衛は別の車へ行ってくれる。警護たちも分かれていく。


「我らも別の車に乗ります」

「はい、ありがとうございます」

 タマ・ミナが乗り込むと、笹・打木コンビは外からドアを閉める。その(さい)、別の車に乗ると申告(しんこく)してくる。


『発進します……』

 インターホン越しに運転手さんが言う。


「お願いします」

 するすると車は動きだす。駅前に集まってる人たちから名残(なごり)()しそうな視線が集まってる。



「それで……そちらの(かた)は?」

「キョウちゃん、道を()み外した……」

 踏み外すってなにさ?


 車両前方、来る時に笹・打木コンビの座っていた進行方向に背を向けた座席にボクとレニ様。対面、進行方向に向いた座席には、真城(しんじょう)(タマキ)・通称タマちゃんと、水無月(みなつき)ユウナ・通称水無(ミナ)ちゃんが座る。


「ああ、こちらは──」

「キョウ義兄上(あにうえ)とは義兄弟となったレイニじゃ。見知りおけ」

「「……は?」」

 そんな上から言われると(ほう)けちゃうでしょ。レニ様の腕を()こうとするけどガンとして(ゆず)らず(から)め続ける。


「──いや、これは、諸般(しょはん)の事情で今、喜多村にお迎えしてる、やんごとなき御方(おかた)で」

「義兄弟はいいとして、どうしてベタベタしてるの?」

「うんうん……」

 ごもっともな疑問を()いてくる二人。


「さあ? ボクも分かんない」

「何を言われる。三人の熱い夜をお忘れか?」

「熱い……夜? 三人?」

「やはり。キョウちゃんはアッチに行った……」

 だからタマちゃん、意味分かんないって。


「レニ様、シーシー。あのことは内密(ないみつ)に」

「どうしてです?」

 どうしてって言っても、ど~してもです。


「怪しい……」

「うん、怪しい。でも、それはそれで筆がはかどる」


 市街地を走り抜け南湖岸(こがん)から湖上道路へ車は走る。


「あのでっかいのは空港?」

 水無(ミナ)ちゃんが空港島を見て感想を言う。


「そうだよ」

「飛行機で来ればよかった」

「うっ。リニアに乗ってみたかったの」


「そうだね~。ボクもリニアで新都に帰ろうかな~」

「いけません。義兄上(あにうえ)は古都から出られませぬ。保傅(ほふ)のお役目がありますゆえ」

「そ、そうだった~」


 で、でもすぐにお子が産まれるわけじゃないから帰る機会はあるよね。


保父(ほふ)? なにそれ?」

「いや、それは、ね?」

(かし)こくも煌太女(こうたいじょ)殿下(でんか)の──モガッ」

 レニ様のおしゃべりなお口は(フタ)をします。


「こうたいじょ……って何?」

「この国を()べる(こう)()継嫡(けいちゃく)放蕩(ほうとう)娘、羽徳(ハノリ)殿下(でんか)

 タマちゃん、余計な知識はするする出てくるのね。


「それで何でその煌太女(こうたいじょ)様が話に出てくるの?」

「さあ?」って言ってタマちゃんも首をかしげる。


「ハノリ殿下のお子を義兄上(あにうえ)が育てることになったのじゃ、()とともに」

 あちゃ~。レニ様、腕力強い。ボクの拘束(こうそく)を外して曝露(ばくろ)しちゃったよ。


 やっぱり、人には腕があと四本くらい必要。


「ど~言うこと、キョウちゃん」

「むむむっ?」


「それは追いおい。ほら北岸が見えてきた」

 とっさにみんなの興味を()らす。ボクがあとでみんなに話すと言い、レニ様には(だま)っててもらう。


 北湖岸(こがん)に着いてからは湖岸沿いを走って来た道を戻っていく。


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