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110.出迎え準備*


 リビングを通り抜け寝室に飛び込む。


「ミヤビ様、ボクの荷物知らない──じゃなかった。ご存じですか?」

「その入口近くのクローゼットに仕舞(しま)ってある、はずじゃ。レイニが──」

「ありがと」


 ミヤビ様へお礼の言葉もそこそこ、入口の方に目を向ける。ミヤビ様たち、ごろごろしてないで早く服着て?


「はあ、なるほど」


 また、分かりづらく(かべ)に溶け込むようにクローゼットが(しつら)えられてる。


 ドアを開けて中を見るときれいにハンガーで()るされてる。


「何をされておるのです?」

「え~、友達が蒼湖(おうみ)に来たので迎えに行こうかと……」

 レイニ様が体を起こして訊いてくる。


()も一緒に──」

「お(ひか)えください。ぴゅっと行って帰ってくるだけです」

「──義兄上(あにうえ)だけズルいですぞ? 友とか言い訳して街で〝あばんちゅーる〟を(たの)しむ目算(つもり)でしょう?」

 ひどい言いがかりですよ。


「いや、(ちが)います。迎えるのは男ですし、乗れる人が限られますので」

「人ひとりくらいならば付いて行っても大丈夫では?」

「そ、それは……」

「決まり、です。()も着替えねば……」


 一番やっかいな人が付いてくることに……。着替えながらミヤビ様を(うかが)うと……にやけてる? ご自分は行かなくてもいいみたい。なら、助かる。少しだけど。


義兄上(あにうえ)、これ、これはどうですか?」

 レイニ様が空色のワンピースを体に当てて訊いてくる。


「よろしいじゃないですか?」


 なんか見覚えあるな~って思ったら以前買ったヤツかな?


「では、これにします」

「ボクはこれかな~?」


 お腹のところにひまわりが咲いてるワンピース。肌着を脱いで替えワンピースを着付ける。


 レイニ様を(うかが)ったら全裸(ぜんら)になってワンピースを着ようとしてる。


「レイニ様、肌着を着けないと」

「そうですか。あれは()め付けるので、あまり好きではないのですが」

「洋装では着けないといけません」

「そうなのですね……」

「これとかどうですか?」

 普通のキャミソールとショーツを渡す。穿()いてないと風にまくられて全て見えてしまいますよ?


「分かりました」

 受け取ったレイニ様が穿()いて着る。


 吊るされた服をなんとなく(なが)めると知らないものもある。レイニ様のものかな?


 そこから(みちび)きだされる推論(すいろん)を頭を振ってかき消す。


 ワンピースに(そで)を通したレイニ様の後ろリボンをくくってあげる。


「ありがとうございます」

「いえ。……あの……レイニ様は──いえ、なんでもないです」

 浮かんだ予想を聴こうとしてやめる。


「なんですか、義兄上(あにうえ)。それからレニとお呼びくだされ」

「はあ~分かりました、レニ様」

「〝様〟も要りません」

「それは……ご寛恕(かんじょ)ください」


「キョウ、どこ行くの?」

 寝起きのタンポポちゃんが聞く。


「ん~、友達が来たらしいから迎えに行くの」

「私も行く」

「すぐ帰ってくるから待ってて」

 タンポポちゃんを連れていって、マナ・アリサの二人を連れてかないワケに行かない。ここは我慢(ガマン)してもらおう。


「……分かった」

「すぐ戻るから……」

 なんとか思い(とど)まってくれた。


「では、義兄上(あにうえ)参りましょうぞ」

「え? はい」

 レイニ様──レニ様がボクの(うで)を取り引っ張っていく。


「行ってくるね」

 そう告げるけど、タンポポちゃんが歯噛(はが)みしてる気がする……。



「お待たせしました」

 一階に降りて玄関を出るとサキちゃん他、警護と護衛がそろってる。


「警護たちが付いて行くと言うておるぞ」

「我々をお連れください」

「いえ、私たちです」

「いや、私たちを……」


「それじゃ、みんなお願い。(ささ)さんと打木(うちき)さんは同乗して他は分乗して」

「「「ありがとうございます」」」

 念のため、みんなに付いてきてもらおう。リムジン二台とワゴンに分かれる。


「では、頼んだぞ」

 サキちゃんに見守られ車に乗り込む。


 ボクのとなりにレニ様、正面に笹・打木コンビが座り出発する。



 蒼湖(おうみ)中央駅は(みずうみ)の南側。近くのショッピングモールに行くのとは違い、かなり遠い。


「ビワ湖を迂回(うかい)しなきゃいけないから時間かかるよね?」

「いいえ、湖を突っ切るのでそれほどは掛からないはず」


「そうです。ビワ湖空港島を経由して南に渡りますね」

 インターホンで運転手と会話して打木さんが確認する。


「そうなんだ……。早いに越した(こと)ないけど。どれくらいだろ?」

「さあ、おそらく小一時間ほどでしょう」

「ふ~ん。モール行くのと変わらないね」

 心配なのは、通行料のお金かかるだろうな~ってことだけど。


 取りあえずタマちゃんたちに連絡しとくか。


〔キョウ:今、出発したよ。小一時間くらい()かりそう〕

水無(ミナ):うん、待ってる〕

〔タマ:キョウちゃん、早く早く犯される~〕


〔キョウ:タマちゃん、大げさ。水無(ミナ)ちゃんは泰然(たいぜん)としてるよ?〕


義兄上(あにうえ)()は初めてです」

 いきなり、となりから声がかかる。


「へえ~、そうなのですね。私はこちらに来る時、空港から渡って来ました。南は初体験です」


〔タマ:水無(ミナ)は不感症。熟女(ピューマ)が舌なめずりして見てきてるのにへらへらしてる〕


()も南は初めてじゃと思いますよ。一緒です」

「はあ~、そ、そうですね」


 なんか密着(みっちゃく)度が高いです。(うで)(から)めてくるし、ど~なってんの?

 タマミナと連絡しづらいよ。


水無(ミナ):舌なめずりは言いすぎ。男が珍しいだけだよ〕

〔タマ:あれは(すき)(うかが)ってる。いつ飛びつくかタイミングを図ってる〕


 なんのかんの言ってるけど、二人は大丈夫そうだね……。



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