107.ダイブから帰還*
タマちゃん水無ちゃんのアドレス登録と二人のQ2アカウントに送金……っと。
「見つかったよ~……って、何してんの?」
ダイブから戻って顔をあげると羽衣さんと斎木さんがボクの体に顔を近づけてた。
「えっ? も、もちろん、キョウ様をお護りしていたのです」
「そ、そうです。キョウ様に誰も近づけないようにしてました」
顔を上げた二人が挙動って言い訳する。
もしかして匂い嗅いでたの? ボク、臭ってないよね?
「ありがとう、気更来さん」
黒メガネを気更来さんに返す。
「いえ。……このことは内密に」
「もちろん。んじゃ、タンポポちゃんたちのとこへ、行こうかな?──っとっと?」
「あ、危ない」
ソファーから立ち上がると立ちくらみした。それを気更来さんが支えてくれる。
「あ、ありがと……。おかしいな~?」
「そりゃそうです。二時間近く身じろぎせずに居られたのですから」
「え? そんなに?」
確かに、携帯で時間を確認すると、かなり時間が経ってる。集中するため感覚カットしてたから実感しなかったけど。
「もう少しお休みになってからに為さっては?」
「そ、そうです。となりにベッドもありますよ?」
ぐへへって薄ら笑いして羽衣さんが勧める。
「でも……あんまり遅いとタンポポちゃん、怒るからな~」
「もうすぐお昼なんですから、それまでお休みになられては?」
斎木さんまで誘ってくる。
「でもな~、お昼はミヤビ様レイニ様が気になるから戻らないと。それまでにタンポポちゃんたちに顔を見せないと」
「キョウ様は幼女と我々とどっちが大事なんですか!」
羽衣さんがいきなり激昂する。
「そんなの、もちろん──」
「もちろん?」
言うまでもない。
「──タンポポちゃんたちに決まってる」
「ええ~? 熟れた女体よりおしっこ臭い娘が良いんですか?」
「そんなの──」
「そんなの?」
言わねばなるまい。
「──いっぱい愛情を返してくれるタンポポちゃんたちに決まってる。あんたたち、何かボクに返してくれるもの、ある?」
熟れたって……それはフルーツだけで充分です~。それから、タンポポちゃんたちは、おしっこ臭くなんかないよ。
「返すもの……」って聞き羽衣さんがうなだれる。
「ああ~、タンポポちゃんたちに抱きつかれると生きてるのを実感する。おしっこチビっちゃうくらいに」
思わず自身の体を抱いて夢想する。
「変態だ……変態がいる。キョウ様、それは早く矯正しないと取り返しのつかない間違いを起こしますよ?」
失礼な……。ボクは子供のお世話がしたいだけ。早く子供が欲しいだけだよ。マキナ、早く赤ちゃん産まないかな~。
「それじゃ、タンポポちゃんたちのところへ行くから……あれ?」
「危ない」
「あ、ありがとう」
また、よろけて……今度は笹さんに支えてもらう。
「わたくしがお送りします」
「え? 大丈夫だよ」
「いえ。まだメガネを使った疲れが取れていないご様子。しばらくは休まれるのがよろしいと思われますが、どうしてもと申されるならお送りします」
「おい、笹。キョウ様に触れるな。ズルいぞ?」
羽衣さんが斜め上の抗議をする。
「あのね、ズルいとかズルくないとか関係ないからね? じゃあ、笹さんお願い」
「よろこんで」
笹さんに支えられ、打木さんと一緒にタンポポちゃんの部屋へ……。
ほとんど歩いてないのにつらい。やっぱり、疲れてる。
「田端先生、おはようございます。タンポポちゃんたち、どうですか?」
「おはようございます。ちょっと注意力散漫ですが順調ですよ」
「そうですか」
「キョウ、遅い。浮気してたでしょ?」
「そうよ、ウワキでしょ?」
「うわき、いけない」
タンポポちゃんたちから予想どおりの反応が……。
「してないって。ちょっとミヤビ様たちの相手してただけ」
「うそね?」
「うん、うそ」
「うそは、おしおき」
な、なぜバレる……。おしおきは勘弁して?
「そ、そんなことより勉強に集中して」
「ごまかしたわね?」
「うん、そんなこと、じゃない」
「……ごまさしてる」
参ったね……。
それから、タンポポちゃんの分数の計算とか、マナ・アリサの文字の書き取りを見ながら二時間ほどを過ごす。
「やっと終わった~」
「おわった……」
「つかれた~」
「はい、よくできました。ボクは戻るね?」
「ダメよ。お昼は一緒に食べるんだから」
「うん、食べる……」
「遅刻したんだから、これから遊ぶ」
「でもね~、ミヤビ様たちを放っておくと怖いから……」
「それは、ちょっとこわい、かも……」
「う~~」
「しかた、ない……」
「何も予定ないなら、また来るから」
「絶対よ?」
「ぜったい」
「待ってるから……」
「それじゃ、あとでね?」
そう言って一旦、タンポポちゃんたちと分かれる。ミヤビ様たち、おとなしくしてるかな~?