表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/184

106.奥の手*


「くっ……そればっかりはご勘弁(かんべん)くだされ──」

 あ~、なんか本当につらそう……。


「──意に沿()えず面目(めんぼく)次第(しだい)もございません。()めはこの腹かっサバいて──」

「それはやめて!」


 だから、重いんだって~。あと、なびきそうな人は……いない、な。待機部屋を見回し、ため息をつく。


「仕方ない、か……」

「いったい、何をなさるのです?」

 気更来(きさらぎ)さんがメガネケースを差し出してくる。


「えっ、いいの?」

「良くはありませんが、目的次第(しだい)では」

「うん。友達がこちらに来るのに(まよ)って四国にいるらしいんだけど……」

 警護たちに、ことのあらましを説明する。


「だから、メガネで(さが)連絡(れんらく)をつけて、新しい携帯で連絡できるようにする」

「そうなのですね……。しかし、四国に行ってしまうとは……これからも監視(かんし)していないと、どこへ行ってしまわれるか分からない方ですね」


「そうなんだよね~。タマちゃんも水無(みな)ちゃんも(しっか)りしてそうなのに……」



「これを」

 ソファーを借りて寝そべると、気更来さんがクッションをくれる。


「うん。ありがとう」

 クッションを枕代わりに頭を乗せる。


「なあ、ベッドを貸した方が良かったんじゃ」

「いや、さすがにそれは……」

「キョウ様を(にお)いでマーキングする絶好(ぜっこう)のチャンスなのに」

「お前な~……。しかし、それはそそられる、かも……。いや、ダメだ」

「お前たち、言い付けを破って、分かっておろうな?」

黙認(もくにん)したあんたらも同罪(どうざい)

「いや、それは……」


 も~外野がうるさい。よし、やるぞ……。



 まずは……【ステータス】

外接(エクスターナル)】で【周辺探索(たんさく)】をオン。


 わ、わ、わ、いっぱい出た。館内には監視(かんし)カメラ、いっぱいあるな~。


 ま~こいつら()らない。館の周囲もいっぱいあるな~。


 浮遊してるヤツ、固定されてるヤツ──これは砲塔(ほうとう)かな? すべてカット……。


 良いラインは……通信アンテナか? いや、通信ケーブルから外に行こう。そこから通信インフラにお邪魔(じゃま)して……。



 ブロード・トラフィックを経由して……やっと四国、到着。やっぱ、シラミ(つぶ)しにやらないとダメかな~?


 九州から向かったなら四国横断道かな? 四国RW(レールウェイ)かな? まあいいや。両方検索(けんさく)しよう。


 ……いない。一時下車して食事してる可能性もあるか。


 ……サービスエリアも駅周辺もいない。どこ行ったんだよ~?


 まさか、迂回(うかい)というか寄り道してないだろうな~? 何か……二人に共通した何か……。


 取りあえず、西からシラミ潰しで……。


 効率(こうりつ)悪い……。四割がた(さが)して足取りが(つか)めない。


 新都から通信会社のログを探ってみるか……。いや、新都で契約(けいやく)した携帯なら……。


 ──いた! なんで本州に戻ってんのよ~? ローミングしてる携帯を探ったら見つかった。


 ──近くの中継サーバーにパーティーラインを構築……っと。


(キョウ)水無(ミナ)ちゃん、無事? (タマ)ちゃんも大丈夫?〕

〔ミナ:え? キョウちゃん? キョウちゃんなの?〕

〔タマ:やっと連絡きた。待ってた、キョウちゃん〕


〔キョウ:そうだよ、キョウだよ。待ってた、じゃないよ。ちゃんとアドレス書いといてよ。捜したんだから〕

〔ミナ:……え? 書いたような、書いてなかったっけ?〕

〔タマ:そう言えば盛り上がってて書いてなかった、かも?〕


〔キョウ:盛り上がらないでよ。ど~して古都に来るなんて。それに四国を渡って(もど)って来るんじゃなかったの?〕

〔ミナ:そ、それは……でも、よくアドレス分かったね?〕

〔タマ:案外、遠回りと気づいた。それで路線変更〕


〔キョウ:なら、始めっから四国じゃなく(さかのぼ)って帰ってきなよ。なぜ分かったかは秘密(ひみつ)(つて)で〕

〔ミナ:面目(めんぼく)ない……〕

〔タマ:ミナちゃんは悪くない。睡眠不足で判断(はんだん)(あやま)った私が悪い。リニアで戻るお金が無くて……。それで秘密って何? キョウちゃん、なんかヤラしい〕


〔ミナ:ひどいんだよ、タマちゃん。任せろ任せろって、ずんずん行くけど(まよ)うし、リニアで寝過ごして九州行っちゃうし、近道しようって四国を通ったのに、やっぱりダメって本州に戻るし……〕

〔タマ:は、初めて来たんだから仕方ない。それよりキョウちゃん、お金貸して。()まるのは、なんとかしたけど、もう移動のお金も食事のお金も──〕


〔キョウ:分かった。十万くらいでいい?〕

 送るのは、ボクのお金じゃないけどね。


〔タマ:もうひと声〕

〔ミナ:私と分散して。タマちゃん、金遣(かねづか)(あら)いんだよ。任せてると、いつの間にか無くなってて〕


〔キョウ:分かった。十万ずつ送る。このアドレスにQ2(キューツー)ペイのアカウント送って?〕

 まあ、黒メガネを使って一方的に送っちゃうと、いくら何でも不審(ふしん)すぎるからね~。


〔ミナ:助かった~〕

〔タマ:(おん)に着る〕

〔キョウ:それで……護衛はいいとして、どうして羽鳥来(はっとり)さんが居るのさ?〕

羽鳥来(はっとり):僕? 二人が良からぬ(こと)やろうとしてたから無理やり付いて行ったんだよ?〕


 ほぅ~? これは、もしかして……。


〔キョウ:分かった。護衛の人と一緒に二人をお願い。()ながら(﹅﹅﹅)護って(﹅﹅﹅)、あげてね?〕

〔ハットリ:もちろん、です〕


〔キョウ:じゃあ、みんな気をつけてね? 連絡(れんらく)入れるけど、そっちもちょうだいよ?〕

〔ミナ:分かってる〕

〔タマ:任せて〕

〔ハットリ:もちろん〕


 これで直接助けてあげられないけど、みんなと連絡できるし、羽鳥来(はっとり)さんと護衛たちもいるから大丈夫だろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ