102.みんなでおしっこ
「マナちゃん……おしっこ、大丈夫?」
「ん~……行く」
マナちゃんの耳許で小さく訊くと、やっぱりか~。
「アリサちゃん、おしっこ、大丈夫?」
「ん~……行きたいかも?」
「タンポポちゃん──」
「待ってた」
いや、待たなくていいから。すぐマナちゃんアリサちゃん、連れてトイレ行ってよ。
「じゃあ、一緒に行こ?」
「うん」
三人連れ立ってトイレに急ぐ。マナちゃんたちは抱えてほしかったみたいだけど、白い人が一緒で遠慮してるみたい。
「マナちゃん? アリサちゃん?」
みんなが分かれていくのにマナちゃんがボクを個室に引きずりこもうとする。それをアリサちゃんが引き戻す。
「キョウはこっち」
「いや、マナちゃんが一人じゃ怖いらしくて……」
「ズルい」ってアリサちゃんが襦袢をつかんで引っ張る。
「ちょっと、何やってんの?」
個室前で揉み合ってるとタンポポちゃんが気がつき詰めよってくる。
「夜のトイレは怖いから、ね?」
「それじゃ、私もキョウと一緒」
「私も」
「ええ~、みんな、もれちゃわない?」
「そ、それもそうね~?──」
で、結局みんなで入りました……一つの個室に。白い人まで入ってくるとは思わなかったけど……。
本当に大きいトイレで良かったよ。
「終わった?」
水音が途絶えたマナちゃんに訊く。
「うん。拭いて?」
「マナちゃん、自分で拭いて」
「キョウがいい」
「な、な──」
──な? なに?
「──なんですって~!」
びっくりするよ、タンポポちゃん! ま、まあ怒るよね、自分で拭けないなんて……。
「ズルい、私も拭いて」
「そうよ。マナと怪しいと思ってたら、そんな爛れた関係だったなんて」
別に爛れてないでしょ? 怒るのそっち?
「キョウがやるとすっきりする……」
「マナちゃん?」なに言ってんのよ。
「妻に下の世話されるのは女の夢ね?」
そんな夢はぶち壊れろ!
「ふつ~に拭いてるだけだよ?」
「きっと指技がすごいのね?」
そんな技は持ってません。てか、なんでこうも要らない知識はあるんだよ、タンポポちゃん。
「じゃ次は私。早くマナを拭いて。もれそう」
「あ、うん……」
結論は先に送って、マナちゃんを拭く。ほら、なんともない。はずなのに「むふ~」って満足そう……あれ?
「次、次!」
「はいはい」
「はいは──」
「はい」
マナちゃんを便座から降ろし、アリサちゃんを乗せる。
「アリサ、早く早く!」
「わかってるって」
「タンポポちゃん、となりでして来なよ。もれるよ」
「もれるなんて言わないの」
ホントにもれたらどうするの、って言ってくる。それはボクの関知するところじゃないね。
「はい、次、タンポポちゃん」
アリサちゃんを終わらせて便座から降ろす。
「私も座らせてよ」
「大人は自分で座る」
「マナもアリサも座らせたじゃない」なんてタンポポちゃんがわがままを言う。
「それは……便座が高いから……早くしないともれるよ?」
「うっ……」
もう我慢の限界とタンポポちゃんは自分で座ってくれる。
「じゃあ、戻って寝ようか?」
タンポポちゃんもすませたし部屋に戻ろう。
「キョウのおしっこは?」
「ボク? もう上でしてきたよ?」
「「ズルい!」」
「ズルい……」
何がズルいんだか分からないよ。
「人のおしっこ見ておいて。キョウも見せなさい」
「そうそう」
「うん」
「いや、見てないよ。ちゃんと他所向いてたじゃん」
言いがかりにもほどがある。どんなクレイマーだよ。
「拭く時、見てた」
「見てた」
「見てた……」
「いや、それは……」
見なきゃどこ拭くか分からないじゃん。
「では、代わりに私が……」
沈黙してた白い人がのたまう。
「「「…………」」」
しれっと白い人が便座に座るので、ボクたちは唖然とする。
「じゃ、じゃあ帰ろう、か?」
「「うん」」
「かえる」
「ちょっと~」
白い人の意味不明な行動をスルーして、みんなでタンポポちゃんの部屋に戻る。
「キョウも一緒に寝て?」
「うん、寝て」
「でもね~、上でえらい人が待ってるかも知れないし」
「どうして、先に行くんですか?」
白い人が遅れて部屋に来る。けど、やはりスルーする。
「ほら、あの白い人がずっと監視してるから、ね?」
「なんのお話です?」
「あなたがずっと見てるから、ここでは眠れないと」
「ああ……私は見ているだけですので、お気になさらず」
「……まあ、それなら一緒に寝ようか」
「うん」
「ねる」
「でも三人は狭いよね~」
「そうだった~」とタンポポちゃんが嘆く。
「お隣はダメなのですか?」って白い人が割り込んでくる。
「となりはママの部屋だから……」
「え~レンカ様なら居ないと思われますが?」
なぜ、あなたがそこまで知っている?
「キョウ様の儀式を観て催したとか……ヒロ様と睦まじく出ていかれましたよ」
「はぁ~……なるほど?」
それって、なんか複雑。
となりの部屋を、そろ~っと覗いて見ると、確かに誰もいない。
「じゃあ、お借りしてそっちで寝ようか?」
「うん」
「いい」
「寝ましょ?」
ベッドに並んで横になると白い人までベッドに上がってくる。