表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/184

102.みんなでおしっこ


「マナちゃん……おしっこ、大丈夫?」

「ん~……行く」


 マナちゃんの耳許(みみもと)で小さく()くと、やっぱりか~。


「アリサちゃん、おしっこ、大丈夫?」

「ん~……行きたいかも?」

「タンポポちゃん──」

「待ってた」


 いや、待たなくていいから。すぐマナちゃんアリサちゃん、連れてトイレ行ってよ。


「じゃあ、一緒に行こ?」

「うん」


 三人連れ立ってトイレに急ぐ。マナちゃんたちは抱えてほしかったみたいだけど、白い人が一緒で遠慮(えんりょ)してるみたい。


「マナちゃん? アリサちゃん?」


 みんなが分かれていくのにマナちゃんがボクを個室に引きずりこもうとする。それをアリサちゃんが引き(もど)す。


「キョウはこっち」

「いや、マナちゃんが一人じゃ(こわ)いらしくて……」

「ズルい」ってアリサちゃんが襦袢(じゅばん)をつかんで引っ張る。


「ちょっと、何やってんの?」


 個室前で()み合ってるとタンポポちゃんが気がつき()めよってくる。


「夜のトイレは怖いから、ね?」

「それじゃ、私もキョウと一緒」

「私も」

「ええ~、みんな、もれちゃわない?」

「そ、それもそうね~?──」


 で、結局みんなで入りました……一つの個室に。白い人まで入ってくるとは思わなかったけど……。


 本当(ほんと)に大きいトイレで良かったよ。


「終わった?」


 水音が途絶(とだ)えたマナちゃんに訊く。


「うん。拭いて?」

「マナちゃん、自分で拭いて」

「キョウがいい」

「な、な──」


 ──な? なに?


「──なんですって~!」


 びっくりするよ、タンポポちゃん! ま、まあ(おこ)るよね、自分で拭けないなんて……。


「ズルい、私も拭いて」

「そうよ。マナと(あや)しいと思ってたら、そんな(ただ)れた関係だったなんて」


 別に爛れてないでしょ? 怒るのそっち?


「キョウがやるとすっきりする……」

「マナちゃん?」なに言ってんのよ。

「妻に(しも)の世話されるのは女の(ゆめ)ね?」


 そんな夢はぶち壊れろ! 


「ふつ~に拭いてるだけだよ?」

「きっと指技(しぎ)がすごいのね?」


 そんな技は持ってません。てか、なんでこうも要らない知識()あるんだよ、タンポポちゃん。


「じゃ次は私。早くマナを拭いて。もれそう」

「あ、うん……」


 結論は先に送って、マナちゃんを拭く。ほら、なんともない。はずなのに「むふ~」って満足そう……あれ?


「次、次!」

「はいはい」

「はいは──」

「はい」


 マナちゃんを便座から降ろし、アリサちゃんを乗せる。


「アリサ、早く早く!」

「わかってるって」

「タンポポちゃん、となりでして来なよ。もれるよ」

「もれるなんて言わないの」


 ホントにもれたらどうするの、って言ってくる。それはボクの関知するところじゃないね。


「はい、次、タンポポちゃん」


 アリサちゃんを終わらせて便座から降ろす。


「私も座らせてよ」

「大人は自分で座る」

「マナもアリサも座らせたじゃない」なんてタンポポちゃんがわがままを言う。

「それは……便座が高いから……早くしないともれるよ?」

「うっ……」


 もう我慢(がまん)限界(げんかい)とタンポポちゃんは自分で座ってくれる。


「じゃあ、戻って寝ようか?」


 タンポポちゃんもすませたし部屋に戻ろう。


「キョウのおしっこは?」

「ボク? もう上でしてきたよ?」

「「ズルい!」」

「ズルい……」


 何がズルいんだか分からないよ。


「人のおしっこ見ておいて。キョウも見せなさい」

「そうそう」

「うん」

「いや、見てないよ。ちゃんと他所(よそ)向いてたじゃん」


 言いがかりにもほどがある。どんなクレイマーだよ。


「拭く時、見てた」

「見てた」

「見てた……」

「いや、それは……」


 見なきゃどこ拭くか分からないじゃん。


「では、代わりに私が……」


 沈黙(ちんもく)してた白い人がのたまう。


「「「…………」」」


 しれっと白い人が便座に座るので、ボクたちは唖然(あぜん)とする。


「じゃ、じゃあ帰ろう、か?」

「「うん」」

「かえる」

「ちょっと~」


 白い人の意味不明な行動をスルーして、みんなでタンポポちゃんの部屋に戻る。



「キョウも一緒に寝て?」

「うん、寝て」

「でもね~、上でえらい人が待ってるかも知れないし」

「どうして、先に行くんですか?」


 白い人が(おく)れて部屋に来る。けど、やはりスルーする。


「ほら、あの白い人がずっと監視(かんし)してるから、ね?」

「なんのお話です?」

「あなたがずっと見てるから、ここでは眠れないと」

「ああ……私は見ているだけですので、お気になさらず」


「……まあ、それなら一緒に寝ようか」

「うん」

「ねる」

「でも三人は(せま)いよね~」

「そうだった~」とタンポポちゃんが(なげ)く。


「お(となり)はダメなのですか?」って白い人が割り込んでくる。


「となりはママの部屋だから……」

「え~レンカ様なら()ないと思われますが?」


 なぜ、あなたがそこまで知っている?


「キョウ様の儀式(ぎしき)()(もよお)したとか……ヒロ様と(むつ)まじく出ていかれましたよ」

「はぁ~……なるほど?」


 それって、なんか複雑。


 となりの部屋を、そろ~っと(のぞ)いて見ると、確かに(だれ)もいない。


「じゃあ、お借りしてそっちで寝ようか?」

「うん」

「いい」

「寝ましょ?」


 ベッドに並んで横になると白い人までベッドに上がってくる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ