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100.レイニ様の指導*


 レイニ様の御髪(おぐし)が盛ったものでは無くなっている。今はボクと同じショートボブくらい。(ヅラ)だったんだw……


「あの……レイニ様はどうしてそのようなお姿に?」

「そなたに(むつ)みごとの指南(しなん)をするために決まっておろう」


 ベッドそばに小さな丸テーブルとイスが()えられている。そこにお二人が並んで座っている。


 レイニ様が()いた席にボクを(うなが)す。



「ボク──わたくしも人の妻。一通り……その、経験しておりますが?」

「甘い。婚姻(こんいん)してこのかた五年。(はら)みやすい体位を──」

「レイニ様! となりには、その、子供もおりますのでお声を小さく。お言葉も選んでお願いいたします」


「そ、そうか? いずれ知ることであろう。……まあ、よい」

「それで指南(しなん)──指導(しどう)されると言うワケですね?」

「その通りじゃ──」


 まったく、余計なお世話だよ。


「──なんじゃ、不満そうじゃのう?」

「いいえ?」

「ふむ……。五年で(きわ)めた性技(せいぎ)(すい)伝授(でんじゅ)してやろうと()うておるのじゃ」


 ますます、余計なお世話。サザレさんに意見を(あお)ぎたいけど……衝立(ついたて)の向こう側で疏通(そつう)できない。


床入(とこい)りでそこまで必要でしょうか? ()しべの(たまご)()しべの精子をぴゅ~っとかけて、あとは(こう)だか朱鷺(トキ)だかの(つばさ)の向かうままに(まか)せるしかないと考えますが?」

「まあ、そなたの言う通りじゃ。じゃが、それでは単なる作業ではないか? 愉悦(ゆえつ)(もっ)(こと)に当たらねば進歩は望めぬ」


「申し訳ありません。(おっしゃ)る意味を図りかねます。わたくしも主人と毎夜、(いとな)みましたが、気持ち()くしています。それ以上は何を望むのか分かりません」


 ミヤビ様を(うかが)ったら苦笑いしてるよ? 視界の(すみ)に何か(うつ)ったと思ったらサキちゃんが「早くやれ」ってキューを送ってきてる。


 こっちだって、さっさと終わらせたいよ。


「甘い、甘いぞ。毎夜毎夜、変わり()えせぬ作業では()きが来るであろう? 人は変化を求めるものじゃ」

「ええっと、主人とは日々の行違(ゆきちが)いを()めるために必要かと思いましたが? ブフォ」


 (かわ)いた(のど)(うるお)そうとテーブルのグラスを(あお)ると()いた。お酒じゃん。しかも(にが)い。


「──何をする。もったいない。それはハノリ様のエキスがたっぷり入ったスペシャル・カクテルじゃぞ?」

「も、申し訳ありません」


 なんてもの飲ませるんだよ。やっぱ、知らないものを飲むとダメだな。


「ささ、ぐいっと飲むが好い。ガツンと来るぞ?」

「は、はあ……。わたくし、お酒を飲む年齢(ねんれい)(たっ)しておりません。できれば、酒精(アルコール)の入っていないものでお願いします」

「なんじゃ、つまらんヤツじゃの~。若いと早く飲みたいとか、思わぬのか?」

「若くして飲み始めるとパーになると教えられましたので」

律儀(りちぎ)なヤツじゃ。仕方ない」


 ()は酒でも無いとやっておれぬわ、なんて(つぶや)いている。


 レイニ様が手で合図すると水注(みずさ)しとグラスが運びこまれる。


「ふ~──」


 ()がれた一杯を飲んで一息つく。なんか冷蔵庫にあった(にが)麦茶(ヤツ)だね。


 今は背に腹で飲んだけど。ボクってば、これ飲むとダメだって言われたんだけど。


「──それで、なんでしたっけ?」

「そうじゃった。祖先の(れい)(なぐさ)めるために派手(ハデ)にブチかまそうぞ?」

英霊(えいれい)(しの)ぶには、いささか相応(ふさわ)しくないお考えかと」


 なんだか儀式(ぎしき)にかまけて、やりたい放題(ほうだい)したいだけに思えてきた。


「何を()うておる。固めの(さかずき)(もち)を食うのも崇祖(すうそ)(ねん)があればこそぞ? かの高祖(こうそ)がこの地に御座(おわ)し時、(ひと)りは(さび)しいと祖神(そしん)(ねが)い──」


 ま~長くなるので要約(ようやく)すると「祖先♀が(ひと)りは淋しいと神に願うと男が生まれた」だから「男は女に(つか)え、(よろこ)ばせてなんぼ」って話。


 なんだけど、その神話、って言うか種族の起源(きげん)捏造(ねつぞう)です。


 二百年か三百年前くらいは男も居たんだから。


 まあ、その話の根幹(こんかん)におられる方は否定しづらいだろうけど。


「──はぁはぁはぁ……。分かったか? 子作りは神聖であり悦楽(えつらく)極致(きょくち)であり、(きわ)めることで神の境地(きょうち)──極致(きょくち)(いた)るのじゃ!」


 って息を切らし熱弁し終わると衝立を指さす。


 なんだろう、って目を()らすと模様(もよう)だと思ってたものが女男(にょなん)(から)み合う姿を()いてると分かった。


 むか~しは、婦夫(ふうふ)(まくら)元に置いてた(まくら)屏風(びょうぶ)みたいなものか?


 旧家(きゅうか)は物持ちが良くて困るよ。(なが)めてるうちに耽溺(たんでき)しちゃった、とか?


「はあ~~。なんでもいいので始めましょうか?」

「なんでもとは何じゃ!」

「あ~、はいはい」

「はいは一回!」

「はい」


 やっべ。つい、いろいろ口から本音が出ちゃってたよ。


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