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騎士学院のイノベーション  作者: ハッタカ
第三章 神樹の真実
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決戦 3

 講堂に集まる学院の全生徒を前に、俺は少しだけ頬を緩めていた。


というのも第一騎士団団長兼、臨時軍務大臣としての権限を委譲されていると学院長から紹介を受けて壇上へ登壇すると、ほぼ全ての生徒が大口を開け、目を丸くして唖然としていたからだ。


「第一騎士団団長、アルバート・フィグラムだ。今日は君達学院の生徒達に王国からの協力要請を伝えに来た」


俺が話し始めると、生徒達は我に返るようにハッとし、近くの同級生達と小声で話し出した。漏れ聞こえてくるのは、「あれって一年の平民じゃなかったか?」とか、「何がどうなってるんだ?」といった、俺との関係性が薄い2年生以上の生徒の声は、どこか他人事のような感じだ。


対して、「これは何かの間違えだ」「ありえない、ありえない、ありえない」「嘘だろ・・・」など、比較的関係性の濃い1年生達は、絶望的な反応を見せていた。


(まぁ、一年の中には直接悪態をついてきた奴らもいるからな。その反応も分からなくはないが)


入学式早々のいざこざをどこか懐かしく思いながらも、一応混乱を収めるために俺の事情を説明しつつ、伝えるべきことを伝えていく。




〜〜〜 レンドール・フログレンス 視点 〜〜〜


 学院長からなされた神樹の安全域が消失したという信じがたい話の翌日、第一騎士団の団長より学院生に対する協力要請があるとのことで、再び全生徒が講堂に集められた。


壇上にゆっくりとした歩みで登壇する、王国最強の称号を刻む純白のベロアコートに身を包むパラディン序列一位の姿は、想像していたよりも背が低く、噂からは連想できない銀髪をしていた。


『戦場の赤い悪魔』


第一騎士団団長を表現する際に使われる二つ名だ。その二つ名から、僕は大柄の筋骨隆々の厳つい男性で、当然赤髪なのだろうと想像していた。


しかし壇上に現れたのは、身長150センチ程度の小柄で、銀髪をした少年のような人物なのだ。それだけでも驚きなのに、驚愕を超えて絶句したのは、壇上からこちらを見下(みおろ)すその顔が、間違いなく憎きアル・ストラウスだったからだ。


(嘘だっ!!あいつが本当は王国最強の騎士!?任務で学院へ生徒として潜入していた!?嘘だっ!!絶対嘘だっ!!!)


信じられない話に、僕の身体は小刻みに震えだした。それは同級生たちも同様のようで、少し周りを見渡すと、ブツブツと小声で奴の言葉を否定する声が聞こえる。


ただ、その声からは悲壮感や絶望感が感じられることから、信じたくなくて必死に否定しているように感じられた。


今の僕のように・・・


「(なぁレンドール。あいつが、あのアル・ストラウスが実はアルバート様だったってホントか?)」


今の状況に衝撃を受けて呆然としていた時、隣に並ぶ友人から青い顔をしながら小声で話しかけられた。コイツは僕と一緒になって奴に突っ掛かっていた男爵の子供だ。


「(そんなわけないだろう!あいつが、あの平民が王国最強の騎士だったなんて、そんなこと、あってはならんだろう!)」


「(いや、そんなこと言っても、学院長からも紹介されてるんだぜ?この状況でそんな嘘なんてつけないだろう。レンドールは第一騎士団団長を目標にしていたじゃないか?その顔だって知ってたんじゃないのかよ?)」


「(・・・・・・)」


友人からの詰問に、過去に自分が発した言葉が思い起こされる。『アルバート様こそ全ての騎士が目指すべき頂点だ!』と、俺は同級生だけでなく、壇上に立っているアル・ストラウスにも直接言い放っていた。相手が実はその張本人だったと知らず、あろうことか侮蔑を込めて。


「(おいレンドール!聞いてるのか?本当にアルがアルバート様だったとしたら、俺達相当やばくないか?平民だってバカにしてだいぶ暴言も吐いたし、しかも決闘で傷が付いた魔溜石を使って不正もしたんだぞ?もしかして、俺達騎士になれないなんてことも・・・)」


「(・・・・・・)」


友人の言葉に、僕は何も言えなかった。もし本当に、万が一にでもアルが第一騎士団団長のアルバート様だったとしたら、自分の未来が暗く閉ざされてしまうと感じたからだ。


(ダメだ!それはダメだ!そんな事はあってはならない!僕は栄光あるフログレンス伯爵家の次期当主だ!美しい妻を娶り、僕の実力で家を盛りたて・・・輝かしい将来が約束されていたんだ!それをこんなところで躓いてたまるか!!)


奴がアルバート様であることを否定したいが、どうすればいいかは検討もつかない。ここで声高に「嘘だ!」と叫んだところで、何も解決しないどころか怒られてしまうかもしれない。


(そうだ!いっそ今回の騒動で奴が死んでくれれば・・・そうだよ!それが良い!!魔物から国を守って死ねるんだ。それこそ騎士に相応しい最後だ!あぁ、でも生き残られたらどうしよう・・・何とかして隙を見つけて、僕が止めを刺さないと・・・)


無意識の内に爪を齧りながら、如何に事態を丸く収められるかを思い描いていく。それがどんなに荒唐無稽で、人として道を踏み外したような考えだったとしても、今の僕にはそれが、いや、それこそが誰にとっても最良の結末になると信じて疑わなかった。




〜〜〜 ロベリア・カルタス 視点 〜〜〜


(えっ!?アル君が第一騎士団の団長さん!?)


 壇上に現れた人物の顔を見た瞬間に衝撃が走った。今まで親しくしていた友人が、実はこの国で最も強い騎士様だったなんて思いもしなかったから。


(どうしよう?私怒られないかな?)


今思い返せば結構馴れ馴れしく話しかけていたような気がするし、色々と迷惑を掛けてしまった自覚もある。なにより、王国の重要人物と言ってもいい人に想いを寄せてしまい、それなりにアピールもしてしまっていた。


(あぁ~、どうしよう・・・)


頭を抱えていると、隣から肩を軽く叩かれた。


「(ロベリアさん。アルさんが、アルさんが・・・)」


驚きの表情のまま小声で話しかけてきたのは、私同様平民だからということで最後尾に並んでいたライト君だ。


「(うん。アル君がアルバート様で、騎士団の団長さんで、王国最強の騎士さんで、私とは吊り合いがとれない凄い人でーーー)」


「(あの、落ち着いてください。話が段々脱線していってますから)」


矢継ぎ早に話す私に、ライト君は冷静な表情になって落ち着くよう諭してくる。私があまりにも興奮してきたからか、ライト君は逆に冷静さを取り戻したのかもしれない。


「(あっ、ごめん。でも、私達大丈夫かな?色々と迷惑掛けてた覚えあるし、何か言われないかな?)」


「(アルさん・・・えっと、アルバート様はそんなこと気にするような人ではないと思います。短い付き合いですけど、他の貴族方とは雰囲気が全く違いましたから。ただその、周りの人達がどう思うかですよね?特に同じクラスに居た人達とか・・・)」


私の問いかけに、ライト君は周囲を気にしながら更に小声になって話してきた。確かに今まで接してきたアル君が、普段も同じような性格と考え方なら大丈夫だと思う。そうなるとライト君が指摘するように、同じクラスでアル君を敵視していた人達が、私達に何か言ってくるかもしれないという不安の方が大きく感じる。


(仲を取り持てとか、紹介しろくらいならまだ良いんだけど。いや、嫌ではあるんだけど、私達のせいでアル君と敵対してしまったなんて言われたらどうしよう・・・)


入学当初、アル君は平民だった私やライト君が同級生から責められている姿を見て庇ってくれた。その結果、私達を罵っていた多くの同級生達とは仲違いをしている。それを私達のせいだと責められることになったら・・・


そんな私の不安は、すぐに現実のものとなるのだった。

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