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騎士学院のイノベーション  作者: ハッタカ
第三章 神樹の真実
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神樹 11

(おいおい・・・政治闘争の次は、学院の邪魔者排除って訳か?)


 武術大会開始の準備のため、直径200mの円形状の舞台に出場生徒達が教師の誘導の元、ある程度距離が離れるようにして開始位置へと着いていく。


当然、魔術師と剣士があまりにも近距離にならないように配慮はなされているようだが、俺についてはその対象外のようだ。


何故なら・・・


(一見ランダムに生徒達を配置したように見えて、俺を舞台の中央に立たせ、周囲は剣士で囲み、その奥には魔術師が居るな・・・しかも、その生徒達の視線は俺に向いているってことは、既に懐柔済みで、何らかの裏取引でもしていそうだな)


俺を取り囲んでいる剣士の中にはセルシュ少年、魔術師の中にはレンドール少年の姿が見える。学年を問わず俺の周囲に配置されている様子を見るに、実力云々は置いておき、数を集めて押し潰す気なのかもしれない。


ただ、学院生達の雰囲気から感じ取れる力量を考えるに、例え100人でも1000人でも相手にならないだろう。


(とはいえ、あまり怪我をさせないようにこの大会を終わらせなければならないのは面倒だが、これも大人の勤めだ。仕方ない・・・)


周囲の生徒からは敵意を感じるものの、殺気は感じられない。単純に殺気を練れるような実力がないのだろう。レンドール少年とセルシュ少年からも殺気ではなく、敵意というか憎しみの籠ったような視線を感じる程度だ。



「お待たせしました!生徒達の準備が整いましたので、これよりヴェストニア学院武術大会を開催いたします!!」


 生徒達の配置が終わると、教師から武術大会開始の案内がなされた。


「ルールは事前に周知しております通り、制限時間1時間の実戦を想定した、魔術・剣術何でもありのバトルロワイアルとなっております!舞台の周囲には教師達が審査の為に配置されており、その時々にどのような行動をとったかで採点いたします!最後まで残っているかではなく、状況下における行動を採点していくと言うわけです!」


ルールは事前に聞いていた通りだ。生き残ることが主ではなく、あらゆる状況に置いて最善の行動を選択できるか、というわけだ。


言っていることは尤もらしい言葉を並べているが、裏を返せば教師の考え一つで生徒の評価を決めることが出来るとも言える。


(まぁ、どうせ俺については何やかんや難癖つけて評価を下げそうだな。と言っても、希望する騎士団への優先推薦状なんて必要ないが)


案内を聞きながらそんな事を考えていると、俺の周りの生徒達が武器を構えだした。どうやらそろそろ始まるらしい。


殆どの生徒が手に持っている武器は剣だが、中には槍や双剣を持っている者もいる。さすがに学院の大会ということで、木製のものだが。


ただ、魔術師の生徒の腕には高級そうな魔導媒体も見えるので、事故が起こるとしたら魔術が原因となりそうだ。


「では出場生徒の諸君、準備はよろしいか?!・・・試合開始っ!!」


「「「魔方陣展開・・・魔力供給・・・照準・・・」」」


教師の開始の合図と同時、周囲からは魔術の発動に伴う詠唱がそこかしこから聞こえてくる。周囲に展開され出した魔方陣を見るに、どうやら全員火魔術に統一して発動しようとしているようだ。これなら攻撃のタイミングを合わせることにより、他の魔術師の火魔術を吸収し、より強大な魔術として攻撃を放つことができる『合体魔術』となるだろう。


剣士達は魔術師の攻撃準備が整うまで、こちらを伺っているだけで動いていない。やはり思った通り、俺の周囲にいる生徒達は、学院側から指示を受けて動いているようだ。


(数人の真面目に出場した生徒は戦っているようだが、俺とはかなり距離を空けた配置になっている・・・無関係な生徒が巻き添えにならないようにという、最低限の配慮はあるらしいな)


周囲の状況を観察しながら、ぼんやりとそんなことを考えて魔術の発動を待っていた。


火の下級魔術を放とうとしているが、合体魔術の欠点とでも言うべき、全体とタイミングを合わせるのに手間取っている様子が見てとれる。


そして、おおよそ3分近くの時間を要したところでようやく・・・


「「「発動っ!!!」」」


やっと準備が整ったようで、声を揃えて魔術が発動された。そして、予想通り彼らの火魔術は俺の頭上で合体し、大きな炎の塊となって俺に向かって落ちてきた。



小さな一軒家程の炎の塊が殺到してくるが、俺はため息を吐き出しながらその魔術を迎え撃つ。


「魔方陣展開・魔力供給・照準・発動!」


右の人差し指を頭上に差し向け、数秒で構築した下級魔術を炎の中心点に向けて放った。俺の火魔術は小指の先程の大きさで、彼らとは比較にならないほどの小ささと言えるだろう。


普通なら飲み込まれ、無意味な魔術と言える。


しかしーーー


『パァァン!!』


「「「なっ!!??」」」


俺の小さな火魔術が、生徒達の合体した魔術に接触した瞬間、巨大な炎はシャボン玉が割れるようにして中心から弾け、小さな無数の炎となって周辺の生徒達に降り注ごうとしていた。


これは魔術の強度の違いから起こる現象で、彼らの合体した魔術よりも、俺個人の魔術の方が密度と強度が高いため、強制的に合体を解除したのだ。


その状況に、魔術を放った生徒達は信じられないという表情を浮かべながら絶句して動けないでいる。


「ボケッとすんなっ!動けっ!!」


俺を取り囲む剣士の一人が叫ぶ。彼は3年生のようで身体付きが大きく、よく鍛えられている。突発的な状況の変化にも対応している様子を見るに、中々見所がありそうだ。


そんな彼の声に、俺を囲んでいた剣士達がこちらに向かって動き出す。上空から降り注ぐ炎の雨を避けながら駆けてくるが、中には避けきれずに直撃を受けてしまっている生徒もいる。


ただ、小さく分裂した炎は威力も低いので、身体強化している剣士であれば、多少の火傷をする程度だろう。


ただ、今の彼らの行動は・・・


(そんな指示出してたら、生徒達が結託しているってバレるけどな。さっきの崇高な大会主旨はどこにいったんだか・・・)


隠すつもりがないのか、露見しても何とでもなると思っているのか、彼らの動きはあまりにも統率がとれ過ぎている。これでは最初から「出来レースです」と言っているようなものだ。


そして、取り囲んでいた彼らは同時ではなく、相手が避けられない様に、それでいて反撃の隙を与えないように僅かな時間差を作って渦の様に攻めてきている。


並みの騎士程度の実力者なら、数の暴力で押しきられてしまうだろう。


「甘いな・・・魔方陣展開・魔力継続供給・発動!」


俺は下級風魔術を発動し、身体に纏わせた。自分の身体に纏わせるだけなので照準の必要もなく、高速発動が可能だ。

 

そしてその効果は・・・


「喰らえ!・・はえっ?」


最初に斬りかかってきた見知らぬ生徒は、大上段に構えた木剣を俺に向かって振り抜いてきたが、纏っている風の勢いに負け、剣の軌道が俺の身体に触れることなく明後日の方向へ逸れ、呆けた声を漏らしていた。


「おいおい、驚くにしても時と場合を考えろ、よっ!」


「ぐえっ!」


俺は体制が崩れて隙だらけとなっている彼の脇腹に、容赦なく回し蹴りをお見舞いした。蛙が潰れたような声を出しながら、彼の後方に居た生徒達を巻き込んで吹き飛んでいった。


(風の勢いで吹き飛ばしただけだから、大した怪我は無いだろう。さて、次はどうしてくるかな?)


俺の反撃に、攻め込んでこようとしていた生徒達は動揺の表情を浮かべながら足を止めている。今の攻防を見れば、直接攻撃が効かないと判断したからだろう。


更に混乱と動揺で、次に誰が動くのか探りあっているようだ。


(実戦形式だって言ってるのに・・・)


動かない彼らに落胆しながら、仕方なく今度はこちらから動く。纏っている風を足元に収束し、爆発的な速度で剣士達に襲いかかる。


「ぎゃっ!」


「ぐわぁっ!」


「く、来るな!がっ!」


「はははっ!立ち止まっているだけの案山子(かかし)相手は楽で良い!」


俺がやっているのは、ただの体当たりだ。とはいえ、纏っている風魔術の影響で、ぶつかった生徒達は面白いように吹き飛んでいく。


その状況に、生徒達は極度の混乱状態に陥っている様で、先程までの敵意の視線はどこえやら、化物を見るかのような顔をしている。



 数人を吹き飛ばし、俺から逃げようとしている生徒達を追いかけようとしたところで、多数の魔術が放たれてきた。


「おいおい、無差別攻撃かよ・・・」


それは見境のない魔術の雨だった。俺の動きが速過ぎて標準が定まらないからか、広範囲に渡って様々な魔術が撃ち込まれてきた。


さっきの統率のとれた合体魔術とは一変し、無秩序な魔術達は互いに威力を相殺し合って着弾するので、魔力の無駄遣いも甚だしい。


それでも量が量だけに、避けきれずに魔術の餌食にされた剣士達は、地面を這いつくばる結果となっている。ちなみに標的になっているはずの俺は、風魔術のお陰で全くの無傷だ。


「所詮付け焼き刃の共闘か・・・想定外の事態に直面すれば、統率も何も無いな」


落胆して呟いていると、俺に向かって一直線に迫る気配を感じた。


「シッ!」


「おっと。中々鋭い踏み込みだ」


木槍による鋭い突きに、直感的に纏っている風魔術では防ぎきれないと判断し、正確に心臓を狙った攻撃を、上体を仰け反らせて躱した。


「お前、生徒じゃないな?それにその槍・・・穂先は木製だが、柄の部分は鉄製か」


「・・・チッ!」


俺の言葉に舌打ちする彼は、見所があると評価した人物だった。

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